まるでここは本場タイの屋台!『トーキョーカオマンガイ食堂』
本場タイのカオマンガイを100食以上食べ歩き、現地で修業を積んだ店主・杉田藤孝さんが営むカオマンガイ専門店。しっとり柔らかい茹(ゆ)で鶏は、「国産ブランド鶏を丸ごとそのまま、低温で1時間ほど茹でてから捌(さば)いています」と、杉田さん。ライスは、新潟産インディカ米を鶏の茹で汁で炊き上げる。梅じそ味、麻辣(マーラー)風味など月替わりでユニークなカオマンガイも登場する。
11:00〜15:00・17:00〜21:00、日休。
☎070-8509-9070
山谷を花と笑顔にあふれる街に『SANT JORDI』
かつてドヤ街といわれた山谷の一角に、彩りを添える花と本のお店がオープン。店名はスペインの祝日に由来。この日には、花と本を贈る習慣があるという。「山谷を花と笑顔でいっぱいにしたい」と店主の市川勝也さん。季節の花や植物に囲まれた店内には、平和や多様性、貧困などをテーマにした本が並ぶ。店頭のアートな看板は、交流のある上堀内美術によるもの。
12:00〜18:00、火休(日不定休)。
☎090-2467-1846
暮らしの中で楽しむ伝統紋様の世界『本品堂』
伝統文様を愛してやまないデザイナーの大野耕作さん、慶応3年(1867)創業の染物屋・更銈5代目の工藤資子さん夫婦が立ち上げた布製品ブランドの店。「日本の伝統文様は、単なるグラフィックではなく願いや思いの依代(よりしろ)」と大野さん。本品堂の布小物はデザインを手で描いて、型紙を手で彫って、手で糊を置き、手差しで染める。人の手をかけることで、温もりが宿る。
工房の公開は3月と10月の直売会のみ。
☎03-5808-9770
女性も気軽に立ち寄れるネオ角打ち『KAMEYA』
2024年8月、創業100年以上の老舗『亀屋酒店』が、倉庫をリノベーションした空間で角打ちを開始。「仁井田本家さんのお酒を使ったしぜんしゅにごりレモンサワーが人気」と4代目の松山陽一朗さん。自然米のみにこだわった酒蔵・仁井田本家とは2代目からのご縁で、取り扱い数も豊富。日本酒、クラフトビール、蜂蜜を発酵させたクラフトミードなども。
11:00〜20:00(日・祝は〜18:00)、月休(火不定休あり)。
☎03-3873-4421
地元の人たちに愛される老舗パン屋さん『堀井ベーカリー』
1958年創業の老舗ベーカリーが、2024年12月にリニューアル。昔ながらのあんぱんもあれば、イマドキな黒トリュフのクロックムッシュも、子供に大人気ハリネズミのパンもあり、選ぶのが楽しいラインアップ。「誰でも1個は好きなものが見つかるように作っています」と3代目の堀井祥平さん。種類は100種類以上。次々と新しいパンが登場するから、来るたびに新しい出合いがある。
7:00〜18:00、日・月・祝休。
☎03-3873-0751
つながりを大切にする靴工房『made in me』
女性靴職人はぎもとゆうさんのアトリエショップ。店名の由来は、「『見て、見て、私が作ったの!』とお客さまに言ってもらいたくて。ご要望を聞きながら作っています」とはぎもとさん。履く人の足に合わせるのはもちろん、ライフスタイルに合わせたオーダーメイドの靴作りをしているという。なんと、革の持ち込みもOK。レザースリッパ作りワークショップも対応。
10:00〜17:00(土・日・祝は予約時のみ営業)。
☎なし
路地裏の実力派カウンターイタリアン『di Yamanda』
千束通りの脇道を入ったところにある、カウンター6席のみの隠れ家イタリアン。外には立ち飲みスペースも。常連のほとんどが注文するというラムチョップのオーブン焼き2750円は、子羊の旨味を残しつつクセがなく、苦手な人も好きになってしまうほど。ワインもすすむ! おまかせコースで4名から貸切可能なのもうれしいところ。店主・山田茂雄さんとの会話も楽しい。
12:00~13:30LO・17:00〜22:00LO、月休。
☎070-8405-9853
地域を巻き込みながら銭湯文化を盛り上げる『曙湯』
唐破風屋根に藤棚で知られる老舗・曙湯が、2025年8月に再始動。廃業の危機だったが、銭湯の企画開発を手掛ける株式会社yueが引き継いだ。築76年の壮麗な宮造りの建物はそのままに、休憩所をアートスペースにしたり、鏡広告を復活させたり新しい試みも。「奥浅草エリアへのハブになるべく、ランニングステーションサービスも計画しています」とyue共同代表の三浦耀さん。
観光地じゃない、暮らす浅草を体感
まずは腹ごしらえ! 地元で根強いファンがいる『トーキョーカオマンガイ食堂』へ。「カオマンガイは、僕のアイデンティティ」と、この道約20年の店主・杉田さん渾身(こんしん)のカオマンガイは、本場さながらだけど、どこかほっとする優しい味。価格も手頃で毎日食べたい。
旧日光街道を北へ進み、地方橋通りへ。ポツンと一軒、「花と本」という看板のお店を発見。なぜ、ここに?「ドヤ街があった山谷で、心を癒やす花と暮らしを豊かにする本を通して、平和について発信したい」と『SANT JORDI』店主・市川さん。近隣にはマンションが増え、労働者向けだった簡易宿所は、外国人観光客やバックパッカーの利用が増えているという。街の流れが変わる中、『SANT JORDI』がきっかけになってお店が増えていくといいな、なんて考えながら、隅田川方面、橋場へ向かう。
この辺は江戸から明治期にかけて、風光明媚(めいび)な別荘地だったそう。静かな住宅地を抜け、気になっていた『本品堂』へ。伝統文様が染め抜かれた守袋がかわいい。来年(2026年)の干支・馬の文様もある。「馬は時代を駆け抜ける象徴。“うまくいく”の語呂合わせから健康祈願・出世開運の意味も」と代表・大野さん。込められた願いを知れば、もっと愛おしくなる。
さて、喉が渇いたぞ。『KAMEYA』の角打ちで一杯やろう。4代目・松山さんはアパレル出身。倉庫をリノベした店舗は、さすがおしゃれ。しぜんしゅにごりレモンサワーは、とろりと濃厚なのにドライな味わい。もう一杯いきたいところをグッと我慢。散歩は続く。
お次は2024年末にリニューアルオープンした『堀井ベーカリー』。この辺はカフェがないのだが、「ひと休みしてもらえるように、外にベンチを置きました」と3代目・祥平さん。パンとコーヒーを買ってひと息ついたら、土手通りを南下。途中、矢吹丈像に「立つんだジョー!」と声をかけ、花園通りへ。裏路地の靴工房は、なんと革の持ち込みもOKだ。「浅草は革の街。すてきな革を見つけたらぜひご相談してください」と『made in me』店主・はぎもとさん。
日も暮れて、なんだかおなかが減ってきた。千束通りの路地裏にあるイタリアン『di Yamanda』へ。一人でふらっと入れるのがうれしい。一品一品手間を惜しまず、パスタサルシッチャも自家製なのだとか。ワインもすすむ。飲みすぎそう。
フィニッシュは『曙湯』。宮造りの建築を愛(め)でながら湯に浸かれば、体も心もほどけていく。うーん、リフレッシュ!もう一軒、飲みに行っちゃう!?
浅草の“奥”は、人々の暮らしが息づく場所。だから心地よく、気ままに散歩できる。今後、訪日外国人も取り込んで、ますます新しくなりそうな予感だ。
取材・文=瀬戸口ゆうこ 撮影=加藤熊三 イラストMAP=杉崎アチャ
『散歩の達人』2025年12月号より







