黄金色に広がるじゅうたん! ススキが見ごろに
秋の風物詩といえば、お月見に彼岸花、紅葉、そして秋の七草の1つであるススキ。秋の七草とは、「ハギ」「キキョウ」「クズ」「フジバカマ」「オバナ」「ナデシコ」「オミナエシ」の7つの植物で、奈良時代の歌人・山上憶良が和歌に詠んだことが由来といわれています。
あれ? ススキが入っていないのでは……? と思われた人もいるかもしれません。実は「オバナ」というのが「ススキ」の別名なのです。春の七草のように食べられるものではなく、あまり知名度が高くない印象ですが、どれも控えめながら上品な美しさがあります。
それぞれの頭文字を取って「お好きな服は?」(オミナエシ・ススキ・キキョウ・ナデシコ・フジバカマ・クズ・ハギ)という語呂合わせで覚える方法もありますよ。
近年は広大なススキの草原は減ってきているようですが、さんたつユーザーの多い首都圏でも楽しめるスポットがあります。
たとえば、神奈川県箱根町にある「仙石原すすき草原」では、黄金色のじゅうたんがあたり一帯に広がる幻想的な景色が見られます。また、東京都内でも町田市の「小山田緑地」でススキの草原が広がります。秋の涼しい風に揺られて穂が波打つと、ノスタルジックな気分になれるかもしれません。
秋は天気が変わりやすいのはなぜ?「ススキ梅雨」という言葉も
過ごしやすい秋はススキなどの草花を見ながらお散歩するには絶好の季節ですが、天気が変わりやすいことも特徴の1つです。「ススキ梅雨」という言葉もあるように、夏から秋へと移り行く頃は雨が長引くことがあります。
これは、夏の空気と秋の空気がせめぎ合うことで発生する秋雨前線が原因です。秋雨前線が日本付近に停滞すると、数日間、雨の降りやすい天気が続くことがあります。
さらに、秋は高気圧と低気圧が日本付近を2、3日ごとに交互に通り過ぎる傾向があります。夏は日本の北を流れていた偏西風と呼ばれる強い西風が次第に南下し高気圧や低気圧を本州付近で西から東へと流すため、天気が変わりやすくなります。秋の高気圧は大陸からやってくるため、乾いた空気を連れてきます。このためカラッとして気持ちの良い秋晴れの空が広がりますが、あまり長続きしないことが多いのです。
特に10月上旬から中旬の東京の天気出現率(1991年~2020年の30年間の気象台の観測資料をもとに、毎日の天気を「晴れ」・「曇り」・「雨」・「雪」の4種類に分類して計算した出現率)を見ると、日ごとの晴れの出現率は約30~50%程度の日が多く、意外に雨や曇りの日が多いことが統計的にも分かります。こまめに天気予報をチェックしながら、お散歩やお出かけの計画を立てましょう。
ススキ散歩は服装選びに注意
青空の下に広がるススキの草原はもちろん美しいですが、夕日に照らされて輝く景色も見たいですよね。ところが「秋の日はつるべ落とし」といわれるように、この時季は一気に日が暮れる時が早まります。
東京では10月下旬に入ると、午後4時台には日の入りを迎えるようになります。さらに、日が落ちるとともに、気温も急激に下がっていきます。特にススキの草原が広がるような地域は都市部に比べて冷え込みが強まるため服装選びに十分注意をしてください。昼間は薄手の服装で過ごせても、夕方以降はぐっと寒くなる可能性があります。気温が20℃を下回るようになると、カーディガンなどの羽織る物があるといいとされるため、時間ごとの気温も確認しておくのがおすすめです。
一年の中でも過ごしやすく、お散歩やお出かけにぴったりの秋。この時季ならではの絶景を見逃さないように満喫しましょう。
文・撮影=片山美紀
参考:
東京管区気象台「東京の天気の出現率」
https://www.data.jma.go.jp/tokyo/shosai/chiiki/tenki/link.html
国立天文台「東京 日の出入り」
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/2025/s1310.html








