地元民の憩いの場からエネルギーチャージ!『SAZANAMI COFFEE』でおはよう【藤沢】~9:00~
シアトルでバリスタと焙煎(ばいせん)士の経験を積んだ沢田真洋さんが、愛する地元に2022年に開いたカフェ。コーヒーは、湘南に縁のある焙煎所から選んだ5種ほどをハンドドリップやエスプレッソで味わえる。そのお供に焼き菓子やワッフルを。「老若男女が集まれる場を作りたかった。赤ちゃん、ワンちゃん、90代の方まで訪れますよ」。海を思わせる青いタイル壁には常連キッズがくれた折り紙の花束が。朝からほのぼの、幸せ気分。
『SAZANAMI COFFEE』店舗詳細
鵠沼海岸商店街をぶらり~10:00~
鵠沼海岸駅前の南北約1㎞に延びる通りを中心とした商店街。180以上あるという店はチェーン店が少なく、老舗も新しい店も個人経営店が元気。生活に密着した食品店からミニシアターまであり、衣食住+αに困らない充実ぶりだ。
定番から個性派まで楽しいおにぎり15種類『米正』【鵠沼海岸】
「新潟のおいしいお米を食べてもらいたい」と小林正吾さんが2025年1月に開店したおにぎり販売店。明るいスタッフ陣が立つカウンターのショーケースには、熊本県天草の青海苔を使ったそばめし、しばマヨなどの個性派も含め約15種類並ぶ。からあげやコロッケなどの揚げ物も人気だ。
『米正』店舗詳細
スギのぬくもりを感じる家具をハンドメイド『85FURNITURE』【鵠沼海岸】
2020年に藤沢から移転したハンドメイド家具の工房。スギの無垢(むく)材にこだわったちゃぶ台やベンチなど生活に寄り添う品を手掛ける。「スギは軽量で香りがよく、色調豊かで木目も美しい。経年変化も楽しめます」と代表の八反田吾郎さん。2024年には製品を置いたカフェも開店。使い心地を確かめてみよう。
『85FURNITURE』店舗詳細
辻堂海岸を歩こう~11:00~
鵠沼海岸から続くのは辻堂海岸。歩きやすいサイクリングロードもあるけれど、波に近づきビーチコーミングしながら歩くのも楽しい。犬の散歩も多く、時にはこんなほほえましい光景も(上写真)。砂浜は犬も人もはしゃがせる。
歩き疲れたらこちらもおすすめ。鵠沼海浜公園や鵠沼市民センターなどにシェアサイクルあり。利用すればスイスイ回れる。
『よりみち食堂』で海鮮ランチ【茅ケ崎】~13:00~
「海の魚が好きだから」と2017年から店を営む宮下一範さん。7種類あるランチでは刺し身に天ぷら、煮物、焼き物などで旬の新鮮魚介が味わえる。この日のよりみちDX御膳には朝どれの地アジ、そしてきらめく生シラス!「シラス屋さんもありますし、地元の遊漁船からも魚を提供してもらえますし、海の近くのよさですね」。が、夜は肉料理やスイーツ、酒も充実。満腹必至の懐深き食堂なのだ。
『よりみち食堂』店舗詳細
『tuckshop』で小休止【茅ケ崎】~15:00~
ヘッドランドのあるビーチまで徒歩3分の“海近”カフェは、晴れた日には富士山を望める広々したウッドデッキのテラス席が魅力。コーヒーにトロピカルジュース、アルコール、スコーン、ブリトー、ピザなど、多彩なメニューで目移りする。「なるべく飽きないようにしたくて。店名は“売店”の意味なので全品テイクアウトできるんです」と店長の石谷さん。土・日の朝にはなんと無農薬野菜の販売もしている。
『tuckshop』店舗詳細
『GOOD IS GOOD』で湘南の土産探し【茅ケ崎】~16:30~
「茅ケ崎はビーサンが年中履かれる街なのに専門店がない」と地元の雑貨製造卸会社が2019年、事務所の一角に開店。漁師御用達のPEARL印のギョサンは湘南ネイビーなどのオリジナルカラーが10色以上あり、ビーチサンダル「SHONAN SANDALS」はソール9色、烏帽子岩などがデザインされた鼻緒11色の中から自由に組み合わせられる。ソールの1カラー“湘南ストライプ”の模様にもご注目!
『GOOD IS GOOD』店舗詳細
選び抜かれた一杯が、1日の締めにやさしく寄り添う『LA SALUMERIA(ラ サルメリア)』で乾杯!【茅ケ崎】~17:30~
長年外食産業に携わってきた西野英樹さんが妻・かおるさんと2024年に始めた生ハム専門店。オーストリア、スペイン、フランスなどの生ハムやチーズ、手作りのデリを持ち帰りでき、ゆったりした座席で選りすぐりのワインと一緒にイートインできる。手動のスライサーで注文を受けてから切り分ける生ハムの味わいにうっとり。さらに、出汁を取ったり脂身を生かしたりと、ユニークな調理方法に生ハムの奥行きを思い知る。
『LA SALUMERIA』店舗詳細
一歩ずつ進んだその先に、いろんな出会いが待っている
散歩のスタートは朝の藤沢駅。『SAZANAMI COFFEE』のハンドドリップコーヒーと甘いものでエンジンをかける。店主・沢田真洋さんは藤沢っ子だがサーフィンをしたことがないと言う。「僕は眺める海が好きです。何かあると海に行ってぼーっとしています」。そんな場が身近にあるとはうらやましい。憧憬を抱いて海を目指す。
小田急江ノ島線に揺られ2駅の鵠沼海岸駅。駅前の鵠沼海岸商店街は、地元密着の生活感ある雰囲気に心がゆるむ。ふと、サーフボードを乗せた自転車が通りすぎる。路地には干されたウエットスーツ。行き交う人の足はビーサン率が高くなる。海がぐぐっと近くなる。
住宅地を抜けて引地川にぶつかれば、その先に海! 開けた空と遠くまで広がる相模湾の海原だ。鵠沼海岸からは砂防林と砂浜の間に整備された自転車・歩行者専用の湘南海岸サイクリングロードを西へ。海を眺め歩く気持ちよさを体いっぱいに感じる。歩き疲れたら、砂浜に誰かが置いたベンチ群でひと休み。鵠沼海岸商店街の『米正』で買ったおにぎりもパクつくと……、トンビが頭上に! 恐るべしハンターだ。隠しつつ素早く食べなきゃ。
ひたすら海を歩くのは飽きると思っていたけれど、そうでもない。寄せては返す波の音は心安らぐからいくらでも聞いていたいし、砂上の歩きにくさはかえって面白くもある。波と追いかけっこもしたくなるし、漂着物も気になる。すべすべした碁石みたいな石、パンみたいな焼き色のおいしそうな石、白くて大きな貝殻……と、気づけばビーチコーミングに興じながら茅ケ崎市に入っていた。
ランチは海鮮を目当てに、海からしばし離れて『よりみち食堂』へ。きらきらした生シラスをほおばると、鮮度のよさがよく分かる。
腹ごなしに鉄砲道と一中通りを散策して、海の家みたいな開放的な雰囲気の『tuckshop』で水分補給と休憩を。居心地がよすぎて時間を忘れそうになるけれど、もう少し先を行こう。ヘッドランドビーチに出て烏帽子岩も見たい。想像より小さいと感じてもご愛嬌。
高砂通りを北上し、『GOOD IS GOOD』でビーサンを自分土産に。紺地に粋なピンストライプのソールかと思えば、よく見ると湘南の地名の羅列になっている! 黄色い鼻緒を組み合わせたら、あらすてき。
さて、約10kmのロングコース散歩もそろそろ締めくくり。雄三通りの生ハム屋『LA SALUMERIA』で生ハムをつまみにワインで喉を潤そう。「茅ケ崎はホームパーティーが多い地域なんです。おかげさまで手土産やおもてなしに重宝されています」とほほ笑む西野かおるさんの足元はビーサンだ。そういや『よりみち食堂』でもお店の人が4月からギョサンを履いていると言ってたっけ。私もビーサンで湘南を歩いてみたい。そうだ、今日買ったとっておきを履いてまた来よう。
取材・文=下里康子 撮影=千倉志野
『散歩の達人』2025年7月号より





