小沢仁志

1962年6月19日、新宿区生まれ。1983年『太陽にほえろ!』で俳優デビュー。「顔面凶器」の異名で知られ、男らしさと優しさを兼ね備えた人間性で人望を集める。YouTube『笑う小沢と怒れる仁志』も人気。

『どん底』がたまり場

—— お生まれが百人町で。

小沢 そう、大久保。東京女子医大で生まれてから小学校3年ぐらいまではいた。

—— その頃、歌舞伎町に遊びに行かれた思い出ってございますか?

小沢 行ったのかな? 小学校3年生ぐらいで、歌舞伎町ぷらぷら絶対できないじゃん。だから中学ぐらいからかな。通学途中で降りて映画館で朝から最後まで『網走番外地』5本セットとか『仁義なき戦い』とか、松田優作特集とか映画を見て。

—— 野球やってらっしゃったので、バッティングセンターは?

小沢 行かなかったね。やっぱり映画見たり、飲み行っちゃったり。

—— 飲みに?

小沢 中学生だから友達と(※時効ということで)。高校行ってないやつが働いてるお店とかあったから、入り浸っちゃう。

—— 映画の世界を目指しだすのは?

小沢 18ぐらい。その頃、今でいうワークショップみたいな感じの学校が「新宿厚生年金会館」の近くにあったの。

—— 学校が新宿にあったから、帰りに歌舞伎町で遊ぶと。

小沢 やっぱり飲みに行く。ワークショップ行ってる先輩たちに「飲み行こうぜ」って言われて。今でも新宿3丁目に『どん底』ってあるじゃない? あれ、たまり場。

—— ああ、やっぱり。歌舞伎町にはそういうお店は?

小沢 歌舞伎町は……ないね。当時だと、ディスコが大ブームだから。歌舞伎町一番街にキャパ500ぐらい入るディスコがあって。踊れなくても行けるんだよ。でもディスコはあんまり好きじゃなかった。ナンパとかできなかったし、つきあいで行っただけ。

—— 覚えてるディスコありますか?

小沢 「トゥモロー」だったかな?(※店名確認取れず)。そこはよく行ってた。

—— どんな雰囲気なんですか?

小沢 バーっとでかいフロアで、奥に席があって。みんな大体グラス持って、プラプラ歩いて。俺なんかでもダンス覚えたもん。はやってる曲が決まってたからね。『サタデー・ナイト』(ベイシティローラーズ)とか、ドナ・サマーの『ホット・スタッフ』とかね。

—— 以降ずっと歌舞伎町で遊ぶ感じですか?

小沢 でもないね。21ぐらいで学芸大学の方に引っ越して、歌舞伎町に飲みにまた来るようになったのは30代前半かな。
ちょっと稼げるようになって、歌舞伎町のキャバクラを毎日。

—— 長時間飲まれるんですか?

小沢 何軒か行く。若い頃はそういうのが必要だと思ってたから。最近だとさくら通りで飲むことが少なくて、風林会館とかバッティングセンターの方に行くことが多い。こっち側はちょっとめんどくさいんで。歩くとみんなが「ご苦労さんです!」って。分かってて言ってんだろうけど、それを知らない人が見たら俺が地回りみてえでよ。

—— なるほど(笑)。

小沢 だから、今だと大体ここから始まり『ひげガール』行って友達のバー行って、みたいなコースだね。

Vシネマの撮影秘話から大衆酒場での楽しみ方

—— 最近もキャバクラは行かれます?

小沢 行きたいとあんまり思わない。

—— 昔と最近で、違うと思うことありますか?

小沢 昔のキャバクラは黒服が仕事できた。仲のいい店長がやってた店、女の子、ブスしかいない。でもあいつが表でキャッチやってると「お前またやってんのか〜」ってお客さんは来る。今は女の子がかわいきゃ入ると思ってて。実際客は入るんだけど、男が弱くなってきちゃってるんだよ。

—— Vシネマの撮影もよく歌舞伎町で。

小沢 縦横無尽にやらせてもらってます、ゲリラで。許可が出ないからね。区役所通りで〇〇〇(自粛)の俺が、タクシーの運転手に向かって〇〇〇して……とかね。

—— ちょっと書けないかもですね。

小沢 そもそも撮影許可が下りない。昔だって、天下の東映でさえ下りない。だからAっていう撮影隊作って、そこがトラブってる間に……(自粛)。

—— 知恵がすごい。これも東映さんにご迷惑おかけしそうで書けないので、お店の話でも。『萬太郎Jr.』さんは、どういうきっかけで?

小沢 友達が来てて。大人数の場合とかに便利。歌舞伎町って意外に20〜30人で移動すると、入れるとこがない。

—— 撮影関係の方とですか。

小沢 それは関係ない。歌舞伎町の友達。俺の友達、濃いぃよ。AV嬢、風俗嬢、ホモとニューハーフだもん。あと店関係。めっちゃおもろいよな。

—— どうやってつながっていくんですか?

小沢 俺の友達がスカウトやってるから。ゲイは2丁目で結構飲んでるから。

—— お友達と来た時、どういう飲み方をされるんですか?

小沢 普通。普通だよね、俺?

店員 そうですね。

—— 遠慮してますけど。

小沢 いや普通だって。

—— お好きなメニューございます?

小沢 ここはやっぱり、赤ウインナー。ぜひ食べてほしい。昭和の匂いがする。こないだ来た時はマカロニサラダとか。俺、おつまみが好きなのよ。赤ちょうちんが大好きなの。

—— 歌舞伎町でご飯を食べるっていうことはあるんですか?

小沢 昼に来ない。昼に来るならゴジラ(TOHOシネマズ新宿)で映画観て、ポップコーン食ってる。

—— かわいい。牧歌的な。

小沢 撮影の仕事だと弁当だし、夜の付き合いもあるし。何もない時は、自分の食べたいものは自分で作るから。

—— お酒は毎日ですか?

小沢 撮影が続くとあんま飲まない。自分で運転するから酒が残るとやばいでしょ。

—— 偉いですね……。

小沢 偉いのか? いや、お前60超えたら普通だろ。60になっても「いや〜俺、明日撮影関係ねえわ」ってずっと飲んでるようだったら、やばくね?

—— 小沢さんにはそうあってほしかったです。

小沢 いやいや、飲んだまんま車乗ったら捕まるって。お前、全然かっこいいもクソもねえじゃねえか。

歌舞伎町を「日本一安全」と断言できる理由

—— すみません……話題変えます。今の歌舞伎町はどういう印象ですか?

小沢 みんなイメージで「歌舞伎町ちょっと怖い」ってあるじゃん。断言するけど、日本で一番安全な場所だぞ。こんだけ監視カメラがある中で、事件が起こったら3分で警察来る。俺らゲリラで撮影やって、3分しかないんだよ。

—— 実体験があるわけですね。

小沢 本当安全なんだって。これまでで危ないって感じたのは、防犯条例とかでヤクザを排除した石原都知事の時。チャイナマフィアが出てきて、職質したら警官が青龍刀で切られた事件とかもあったけど。あの頃、何回も見てるわ。でも、チャイナマフィアに警官がボコボコにされてるのを助けてんの、〇クザなんだよ。現場レベルでそうなのに、上ばっかりがヤク〇と付き合うなって、ふざけんじゃねえぞ。やってるのが政治と一緒。延々解決しない。

—— ずーっと続いちゃってる。

小沢 うん。だから歌舞伎町って、時代のうねりと共にいろいろ様変わりして。そういう事件が出てきて、ようやく抑えにかかろうって。今一番、安全なんじゃないっていうのはそういうこと。

—— よく新宿で遊ぶ私ですら、いまだ危ないイメージでした。

小沢 まあ、俺らにも責任があるのかもしれないけど。アクション映画撮るのに、ダーティーな街っていうのがないと。でも、実際は一番安全な場所ですよ。

—— そう言われると、なるほどです。

小沢 だから安全じゃないのは、キャッチに捕まってぼったくられるとか。それはおのれが悪いんだろうって。

—— 分かってんだから引っかかんなよっていう。30年前はぼったくりとか多かったんですか?

小沢 ないよ、だってその頃は儲かってるんだから。儲かってるのに、わざわざ営業停止することやる?

—— 経済が潤ってないから今みたいになっちゃってる。

小沢 歌舞伎町は、日本人が作った街じゃないわけじゃない? その中でのうまいバランスが、警察の法律によって崩れた。街金がブイブイ言い出したころ、すっげえ迷惑で。で、それをヤク〇が注意する大騒ぎで警察来るじゃん。引っ張ってかれるの、ヤ〇ザだから。世の中おかしいんだ。もちろん、〇クザを美化してるわけじゃない。悪い奴は悪い。

—— 普段『散歩の達人』でやらない、裏社会の話が聞けて楽しいですね。

小沢 歌舞伎町といえば俺って呼んでおきながら、俺があそこのランチはおいしいよねとか、スイーツがいいよね、ってまともじゃねえ。ねえから出るわけない。

(ここでウインナーケチャップが到着)。

小沢 なんてことのないソーセージのケチャップ炒めなんだけど、いいんだよ。なんてことないって言うけど食ってみ。うまいから。

—— いただきます。確かに、おいしいです。

小沢 だろ。でもね、簡単にケチャップで炒めたらこの味が出るだろうと思ったら、意外に出ないんだよ。その奥深さがいい。

—— 最後は平和に終わってよかったです。

小沢 ちょっとこれを読んだ人、歌舞伎町来てみようって思うの?

—— そこは私がなんとか。

小沢 あ、あの話忘れてた。風林会館で〇〇が××された話。

—— 書けないです!

『萬太郎Jr.』店舗詳細

歌舞伎町の中心地にありながら、喧騒感はなくしっぽり楽しめる。焼き鳥・焼きとんのほか、一品料理も充実。ウインナーケチャップ638円、マカロニサラダ330円、串焼き187円~(2本より)、鏡月ボトル(700ml)2090円。

住所:東京都新宿区歌舞伎町1-10-5 えびす会館2F/営業時間:17:00~23:00/定休日:日/アクセス:JR・私鉄・地下鉄新宿駅東口から徒歩5分
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取材・文=久保拓英(『散歩の達人』編集部) 撮影=オカダタカオ
スタイリスト=寳田マリ 衣装協力=ロスガポス For Stylist
『散歩の達人』2025年4月号より