「街の人々のオアシスような場所に」マネージャーが店作りにかける情熱

高田馬場駅から徒歩3分ほど歩くと、おしゃれな外観が見えてくる。
高田馬場駅から徒歩3分ほど歩くと、おしゃれな外観が見えてくる。

一人でゆっくりコーヒーを飲むサラリーマンや、和気あいあいと料理をシェアする2人組のインバウンド旅行客、その向こうには小さな子どもとママが幸せそうにデザートを頬張り、テラス席を見れば犬連れのマダムが出来たてのパスタを楽しんでいる。

入店早々、『カフェ コットンクラブ』の客層の幅広さに驚かされた。200名以上が入る大箱店でありながら、ランチのピークタイムからは外れた15時過ぎという時間帯でも多くの席が埋まっており、人気の高さがうかがえる。

洗練された雰囲気の店内。にぎやかなランチタイムとは一変して、夜はシックな装いのカフェ・バーになるのだとか。
洗練された雰囲気の店内。にぎやかなランチタイムとは一変して、夜はシックな装いのカフェ・バーになるのだとか。

どこを切り取ってもおしゃれで雰囲気抜群の店内だが、中でも目を見張るのは1階の中央部分に植えられた巨大なベンジャミンの木。自然光が降り注ぐ緑豊かなこの空間に身をおくと、まるで自分が広々とした自然公園にいるような錯覚に陥る。

1階から2階の天井にかけて、青々と茂るベンジャミンの木。
1階から2階の天井にかけて、青々と茂るベンジャミンの木。

「料理にこだわることはもちろん、うちの店ではお客さんが気持ち良く食事を楽しめるよう、空間作りにかなり力を入れています。この木を植えたのも、店内を公園のような空間にしたくて」

そうやわらかな笑顔で語るのは、マネージャーの茂串一平(もぐしいっぺい)さん。

元々は現店舗の地下1階のみで営業していた『カフェ コットンクラブ』だが、2004年に大規模な改装を行い、1階2階を増築した。その当時は完全個室をウリにする飲食店が人気を集めていた時代だったが、この店はそんな流れに逆らい開放的な空間作りに注力したのだ。

2014年には3階を増築し、現在は地下階を含め全4フロアでの営業スタイル。3階は中央に配置された暖炉が印象的なフロア。
2014年には3階を増築し、現在は地下階を含め全4フロアでの営業スタイル。3階は中央に配置された暖炉が印象的なフロア。

「理由は至ってシンプルで、この店を街の人々のオアシスのような場所にしたかったんです。沢山のお客さんが気軽に足を運べる店、それはオープンな空間だろうと考え、今の店の形に落ち着きました」

多様な属性の人々が、自由にそれぞれの時間を楽しむ店内の様子を見ると、茂串さんの思いが今ではしっかりと形になっていることを実感する。この店は、確かに高田馬場の人々のオアシスと化しているのだ。

そんな素敵空間でいただける大人気ランチとは、一体どんな味わいなのだろうか?

熟練シェフが妥協抜きで作る!おなかも心も満たされるランチセット

日替わりランチプレート1500円。ご飯、スープ、デザート、ワンドリンク付き。
日替わりランチプレート1500円。ご飯、スープ、デザート、ワンドリンク付き。

『カフェ コットンクラブ』には総勢15名ほどの腕利きシェフが在籍しており、日替わりランチのメニューはその日の担当シェフが日ごとに考案しているそう。

この日のメインは豚肩ロースの柔らか煮込み。ゴージャスな肉の迫力に圧倒されつつも、まずはサイドメニューからいただくことにしよう。

サラダはしっかり量があるので、野菜好きにはありがたい限り!
サラダはしっかり量があるので、野菜好きにはありがたい限り!

色彩が美しいサラダは、フレッシュで柔らかな葉そのものが非常においしく、素材の良さがうかがえる。

なじみの青果店から仕入れた新鮮な野菜のみを使用し、珍しい野菜や旬野菜が手に入った時は、シェフの判断ですぐさま店のメニューに取り入れることも多いそうだ。

ランチのスープはミネストローネやクリームベースのチャウダーなど、日によって内容が変わるそう。この日はベーコン、きのこ、玉ねぎが入ったコンソメスープ。
ランチのスープはミネストローネやクリームベースのチャウダーなど、日によって内容が変わるそう。この日はベーコン、きのこ、玉ねぎが入ったコンソメスープ。

ベーコンの旨味が染み出たコンソメスープは、やさしい塩味が効いたどこかほっとする味わいだ。一口飲むと空腹の胃をじんわりと温めてくれて、メインの前に最適な一品。

お次はいよいよメインの豚肩ロースを実食!肉の量は一人前200gほどで、食べ応え◎。
お次はいよいよメインの豚肩ロースを実食!肉の量は一人前200gほどで、食べ応え◎。

高級イタリアン顔負けの分厚い肉にナイフを入れると、予想以上の柔らかさでほどけるように肉の繊維が切れていく。しかしいざ口に運ぶと、肉々しいしっかりした歯ごたえを楽しめるから不思議だ。ビネガーの程よい酸味が肉の脂をさっぱりと整えてくれるおかげで、重さを一切感じることなく食べ進められる。

肉と一緒にいただく甘みたっぷりの玉ねぎ。肉×玉ねぎの組み合わせは、ライスとの相性も抜群。
肉と一緒にいただく甘みたっぷりの玉ねぎ。肉×玉ねぎの組み合わせは、ライスとの相性も抜群。

肉の下に敷かれているのは、じっくり火を通されたであろう焼き玉ねぎ。飴色一歩手前の色味の玉ねぎと一緒に肉を食べると、肉のジューシーさに玉ねぎの自然な甘みがプラスされ、最高のマリアージュを楽しめる。

今回の日替わりランチの作り手であるシェフの常光理明(じょうこうまさあき)さんに話をうかがったところ、この豚肩ロースの柔らか煮込み、なんと完成までに2日近くかかるそう。

「肉は最初に5時間ほど煮込み、玉ねぎも1時間近く弱火でじっくり炒めて甘みを出しています。その他の下処理や調理時間なんかを含めると、やっぱり2日間近くかかってしまいますね(笑)」と常光さん。

「味付けはアップルビネガー、白ワインビネガー、肉の出汁と、至ってシンプルです。シェフが目利きした納得のいく肉のみを仕入れ、それを丁寧に仕込むことで、複雑な調味料を使わずとも素材の良さをとことん引き出すことができるんですよ」

滑らかな口当たりがクセになるプリン。セットのデザートも、日によって提供するものを変えてるんだとか。
滑らかな口当たりがクセになるプリン。セットのデザートも、日によって提供するものを変えてるんだとか。

ラストにいただいたプリンは、卵のコクを際立たせた自然な甘みが印象的。ランチ全体のバランスを見て作られたであろうことがよくわかる、締めに食べるには最適なボリュームだ。

こちらの食べ応え抜群のランチセットは、ライスとスープはおかわり自由、さらにドリンクも+200円で飲み放題になるというから驚き。

居心地の良い店内の雰囲気も相まって、食後の満足感はお値段以上だ。

カジュアルでも丁寧に。信念を曲げずに歩み続ける

キッチンで忙しそうにそれぞれの持ち場を担当するシェフ達。顔つきは真剣そのもの。
キッチンで忙しそうにそれぞれの持ち場を担当するシェフ達。顔つきは真剣そのもの。

「誰もが気軽に入れるカジュアルなお店だからといって、僕たちシェフが提供する料理に妥協することはありません。“1つひとつの料理を丁寧に作る”をモットーに、皆で勉強会をしたり、お互いの試作品を評価し合ったりと、この店のシェフは絶えずおいしい料理の研究を続けてるんです」そう語る常光さん。

豊富なランチメニュー。日替わりランチはクロックムッシュやドリアなど、当日まで何が食べられるかはお楽しみ。
豊富なランチメニュー。日替わりランチはクロックムッシュやドリアなど、当日まで何が食べられるかはお楽しみ。

創業当初は4種類のランチメニューで店を回していたそうだが、シェフたちの努力の甲斐あって、今やこの店のランチメニューは8種類にまで展開されている。そしてそのどれもが分け隔てなく人気メニューというのが、この店のすごいところだ。

日当たりの良い2階席。平日のランチは基本的に1階と2階のみで営業しているそう。
日当たりの良い2階席。平日のランチは基本的に1階と2階のみで営業しているそう。

続けて、マネージャーの茂串さんは言う。

「創業当初と今では、店の雰囲気がかなり変わったのは事実です。でも、今も昔も“高田馬場で愛され続ける店にしたい”という根底の部分は変わっていません。そんな思いが周囲にも伝わっているのか、最近では創業時に常連さんだったお客さんが、懐かしむようにこの店を再訪してくれる機会も増えてきました」

提供するメニューや店の内装がいくら姿形を変えたとしても、「店をより良くしたい」というスタッフ達の信念は絶対に変わらない。そんな思いを肥やしに成長し続けるのが、『カフェ コットンクラブ』なのだ。

中央に立つのが裏方から店を支え続ける茂串さん。「お客さんの懐に入り込めるような店でありたい」と語ってくれた。
中央に立つのが裏方から店を支え続ける茂串さん。「お客さんの懐に入り込めるような店でありたい」と語ってくれた。

人通りの多い早稲田通り沿いに店を構えながら、店内に一歩足を踏み入れると都会の喧騒を忘れてしまう、まるでオアシスのようなレストラン。

ハイセンスな空間で敏腕シェフが振る舞う絶品ランチに舌鼓を打てば、きっとあなたもこの店のファンになってしまうだろう。

住所:東京都新宿区高田馬場1-17-14 B1・1・2・3F/営業時間:11:30~23:00(火・水・木は~翌1:00、金・土は~翌4:30)※全日ランチタイムは11:30〜15:00/定休日:不定/アクセス:JR・私鉄・地下鉄高田馬場駅より徒歩3分

取材・文・撮影=杉井亜希