ホテルレストラン出身シェフが、腕を振るうランチコース
お店へ入ると、シェフの平原聖也さんとオーナーの正田達哉さんが出迎えてくれた。なにやら店内では、ベビーカーで赤ちゃんと一緒にきているお客さんもちらほら……。
このお店のランチコースは大きく2つ。一つはプリフィクスプレート1500円、もう一つはシェフお任せコース3000円だ。いずれも平原シェフが腕を振るう日替わりメニューを楽しめる。今回注文したのはプリフィクスプレート。こちらはメインで肉か魚を選べるようになっており、魚料理をお願いした。
まずは前菜が登場。塩分控えめながらまろやかな旨味が詰まった紫キャベツのマリネや、こっくりした甘さが後を引くかぼちゃとレーズンのサラダなど、バランスの良い一皿でランチを始められる。
実は平原シェフ、都内有名ホテルのレストラン出身。上品かつ華やかな見映えと、“本物の味”の追求は、前菜においてもぬかりない。
次はメインのサーモンのソテー。サーモンはホロホロ柔らか……。こちらに生海苔と卵黄、バターで作られたソースを絡めると、さらに優しいコクが増していく。海苔の香りもアクセントに。
「料理は全てにおいて、“毎日食べたくなるような味”を目指しています。そのため、塩味を抑えた優しい味わいは意識していますね」と平原シェフ。
この奥深いメインの味を噛みしめながら、自家製のパンもいただく。パンの種類は、平原シェフの気まぐれと料理との相性で変わるのだとか。
ベビーカー連れのお客さんも多数!ベビーチェアも完備
取材に伺った日のランチには、ゆっくりと食事をとる二人組や、気ままに食事をとる一人客が複数見られた。中でも気になったのは、その中でもベビーカーを連れた女性が多いことだ。
「連日お越しいただいている常連さんにも、お子さん連れがいらっしゃいますね」
お店のSNSでも公表しているが、店内にはベビーチェアも完備。キッズフレンドリーなお店で、お子さん連れでゆっくりとご飯を食べたいという方々が気軽に来られる場所なのだ。
また内装は、知り合いのデザイナーに依頼したという。厨房に面するカウンターは、シルバーで統一されたスタイリッシュな造り。一方でテーブル席は木のぬくもり溢れる空間だ。いずれの席でもリラックスしながら、時を忘れておいしい料理を楽しめそうだ。
肩肘張らず、笑いながらテーブルを囲む場所に
『bistro tetete』は2022年3月にオープンし、平原シェフと正田オーナーの二人で切り盛りしている。
ホテルレストラン時代に腕を磨いた平原シェフ。その味に惚れ込んだ常連のお客さんも多いという。一方で正田オーナーは、別の都内有名ホテルでフロントやレストランのホール、営業を経験。ホスピタリティの高い接客力を培ってきた。“料理”と“接客”という、お互いのおもてなしの力がタッグを組んで、『tetete』が生まれたのだ。
実はもともと、大森の他店でのアルバイト仲間だった二人。アルバイト卒業後に別々の道を歩んでも、仲の良い飲み友達であり続けた。そしてある日、いつものお酒の席で「一緒にお店を開こう!」と決意。『tetete』というかわいらしい店名も、お酒を交わしながら決めたのだとか。
肩肘張らず、食事を楽しめる場所――。夢を語りながら笑いあう二人のテーブルが、大森で愛される今のお店の原型になったのかもしれない。
「自分ではまだまだ上を目指せると考えていますが、当店を気に入ってくださるお客さんが増えてきてうれしく感じています」と平原シェフは話す。
「今後も規模を大きくするというよりは、目の前のお客さんを大切にして、何度も来たいと思ってもらえるようなお店にできたらいいですね」と、正田オーナーはお店の目指す姿を語ってくれた。
赤ちゃん連れからシニア世代まで、老若男女がのびのびと料理を楽しめる『tetete』。予約がおすすめだが、もちろん当日の来店も大歓迎とのこと。大森に立ち寄ったら、ここで気軽に本格ランチを味わってみよう。
取材・文・撮影=aki