とろとろ卵に深〜いうまみのカレーソース、そして山盛り新鮮野菜が最高な名物カレーオムライス
中に入るとカフェのような雰囲気で居心地が良い。実際、オフィスが多い地域であるにもかかわらず女性の一人客も多いそう。筆者も女性なのでわかるが、女性一人で入りやすい店は意外と多くない。特にオフィス街では貴重な場所だ。
席について「おすすめはどれですか?」と聞くと、店長が女性店員さんに笑顔で「おすすめ、どれ?」と聞く。「えー?野菜カレーですかね」とおっしゃったのでそれを注文。オムライスに野菜カレーがかかっているらしい。和やかな雰囲気でこちらもなんだかニコニコしてしまう。
店員さん達の楽しそうな会話を聞いていると、その合間に卵を割る音や「私が注文したメニューを調理する音」が流れてくる。時間はゆっくり流れているが、それがどこか心地よい。
「どうぞ!」と差し出された料理に私は目を見張った。色鮮やかだ。そして野菜の量。ルーを野菜が覆い尽くしている。はみ出さんばかりの野菜たち。こちら、当初はこの1/3ほどの量だったそう。店長の奥様が「これじゃ野菜足りないよ」と言ったところからどんどん増え続け、増やせば増やすほどお客様の笑顔が見られると気づいたらこの量になってしまっていたとのこと。そんなことある?と思うが、このお茶目な店長なら十分ありうる。
筆者は不健康ジャンクフード大好き人間なので「野菜」の旨さを疑っていたのだが、これがめちゃくちゃおいしい。レンコンは甘いし、ナスはとろっとろ、カボチャはホクホクしていて、間に挟まるパプリカがちゃんと香りごとアクセントになっている。フライドポテトが野菜の顔をして鎮座しているが、ポテトすらちょっと身体に良い気がしてくる。豆とコーンはご飯みたいにカレーと合う。本当にまず「野菜」がおいしい。鮮やかなおいしさが口いっぱいに広がり、食べているうちに野菜派に寝返った筆者だった。
そして、カレーソース。48時間かけて仕込んだソースは複雑ながらもとにかく優しいマイルドな辛さが特徴だ。誰でもおいで、と優しく卵もケチャップライスも野菜も抱きとめる器量がある。オムライス単体は味を薄くしてあるため、カレーソースと喧嘩せず、「カレーオムライス」という料理として完成している。
そして卵はとろとろ。飲めてしまうくらいとろとろ。でもちゃんと火は通っている。決して生焼けではない絶妙なラインで、「カレーは飲み物だけどオムライスも飲み物だよねぇ」と言いたくなってしまう。それくらいのとろとろ加減。
正直カレーオムライスを「オムライスとカレーどっちか選べない人のための食べ物」だと思っていた私だったが、カレーオムライスは「カレーオムライス」だから良いのだ、ということを身を以て体感した。
「おいしくお腹いっぱいになってほしい」という気持ちからくるこだわり
店主の結城さん。幼少期は母親の洋食が大好きだった。元々は舞台俳優として活動していたが、29歳の時に一念発起してフランスで料理の修業を始める。俳優時代に通っていたオムライスのお店が大好きで、「いつかこんなお店を出したい」と考えていた。その思いが形になったのが2019年。『リトルヤミー』を開店した年だ。
そして、結城さんには3つのこだわりがある。1つ目は「外食だからこそ安心して食べてほしい」だ。
外食では、濃い味や脂っ気の多いものがどうしても多くなってしまうし、本当に安全な食材を使っているかもわからない。その不安を解消するべく、結城さんはなるべくオムライスを薄味にしたり、信頼できる契約業者さんからの食材を使ったりして安心・安全を目指す。また、卵は毎日「使う分だけ」仕入れることを徹底している。新鮮な卵だけで作る、というこだわりがそこにある。
だからこそ、材料がなくなってしまったらそこでお店を閉めてしまうこともある。特に夜の時間帯に訪れる場合は念のため電話で確認しておいた方が良いかもしれない。
だが、もちろんおいしさへのこだわりも忘れてはいない。結城さんはカレーソースのレシピを頻繁に変える。「まだ完璧じゃない」から。日々の試行錯誤の末のソースは、結城さんの飽くなき向上心のたまものなのだ。料理人としてのストイックな姿勢に、思わず背筋を正してしまう。
2つ目のこだわりは、「お腹いっぱいになって帰ってもらいたい」。
『リトルヤミー』では、Sサイズが「並盛り」サイズだ。Mサイズから既にご飯1.5杯分。Sサイズでも少食だと十分お腹いっぱいになってしまう。
実は『リトルヤミー』はデカ盛りでも有名なお店。多くの大食い芸能人やYouTuberがここのデカ盛りメニューに挑戦している。そして、芸能人が実際に挑戦したメニューを、みんなでシェアして食べることもできる。味のおいしさもさることながらエンタメ性も高い。
「おなかいっぱいになっておいしいって言ってもらえるのが料理人の一番の幸せだからねぇ」と結城さんは語る。そのこだわりが光るもう一品がオムレツサンドだ。
このオムレツサンドは、元々バイトの方が提案したものだそう。しかし、結城さんは「パンとオムレツだとお腹いっぱいにならない……」と悩んだ。その結果、「そうだ!卵をたくさん使おう!」という結論に。なんと普通のオムレツの倍の量の卵が入っている。
朝食に食べるのであれば、一切れでも十分な満足感になりそうだ。二切れ入っているので二人で一切れずつ分けるのもアリかもしれない。
のんびりゆったり、豊かな時間で癒やされる都会のオアシス
3つ目のこだわりは、「ゆったりとした時間を過ごしてほしい」というもの。
人気店だからこそ、ランチでは回転率が気になりそうなものだが、「うちは待ってもいいよってお客さんにだけ、来ていただこうと思っている」とのこと。その姿勢に対し、初期のうちは「もっと急いでくれよ!」と言うお客さんもいたそうだが、今ではみんな理解してくれているという。
「だって、自分が食べてる横で忙しそうに雑に片付けられたら、『あ、自分の前もきっとこんな風に片付けられてたんだな。自分のお皿も乱暴に持っていかれるんだろうな』ってつい想像しちゃうでしょ?やっぱり今いるお客さんに気持ちよく食べてもらいたいから」と結城さんは語る。
接客の姿勢にも「目の前にいるお客さんを全力で幸せにしたい」という思いが見える。
「だから、早く帰ってほしいとか思わないし、閉店間際までずっとお喋りしてるグループとかいると、『あー、うち居心地良いんだな』って思ってうれしいよ」と結城さん。ついつい店員さんの視線を気にして、さっさと店を立ち去ろうとしてしまう筆者にとっては涙が出るほどありがたい言葉だった。
そして、その気持ちが現れたメニューがデザートメニューだ。こちらは結城さんが食べて一目惚れし、ぜひうちで出したい!と頼み込んで、滋賀県のパティシエから仕入れているもの。ここで少しでも良い時間を過ごしてほしいから、と採算度外視でかなりお安い値段で提供されている。
いつもは忙しく牛丼を食べているサラリーマンも、「デカ盛りでみた!」といってやってくる若者グループも、「ここおいしそうだね」と入ってくるカップルも、みんなみんなおいしく楽しく豊かな時間を過ごしてほしい。『リトルヤミー』は、都会のオアシスを目指していると言って良いだろう。
ぜひお腹をめいっぱい、うんと空かせて、一人ででも、二人ででも、豊かな時間を過ごしに『リトルヤミー』へと足を運んでみてはいかがだろうか。とろとろのオムライスと、こだわりのソースがあなたを幸せの国へと誘ってくれるだろう。
取材・文・撮影=HOKU