東口の激戦区で長く愛される純喫茶
入口の石像に出迎えられて重い扉を開くと、真っ赤なベロア調の椅子が配され、シャンデリアが目を引く豪華な内装に驚く。通りに面した窓際の席は、格子窓から陽光が降り注ぎ、本を読んだりするにもいい明るさだ。
店長の清水雅隆(しみずまさたか)さんは、「私は1990年代にアルバイトから入りました。喫茶店が好きでしたから、この界隈にあった純喫茶にはよく行ったものです」と懐かしむ。
商業ビルが次々と建ち、チェーン店やコンセプトカフェなどが多く出店し、昭和から続くような喫茶店はどんどん閉店する中で、この店は貴重な存在といえる。
調度品にもセンスが光る内装に注目!
店内を見渡してみると、壁面に鏡や間接照明を配し、天井にはステンドグラス調の照明カバー、磁器の置物など、欧風のホテルのラウンジのようなゴージャスさがある。一見華美なようにも思えるのだが、不思議と落ち着けるのは、統一された色調やゆったりと間隔をあけて座席を配置しているからだろう。
清水店長は「椅子の生地はけっこう張り替えるんですよ。以前はヒョウ柄だったので、常連客の方も現在の赤張りになって驚かれていました」
創業当時からの雰囲気を壊さないよう、定期的なメンテナンスを怠らない。こうした細かな配慮が激戦区で長く続く理由なのかもしれない。
食事も本格的な味でメニュー多数
コーヒーはもちろんだが、パンやごはんメニューが充実しているのもこの店の魅力だ。「伯爵特製 昭和レトロの味~フェア~」として、東京ビーフカレーや喫茶店のナポリタン、シチューなどがあり評判を呼んでいる。
なかでもおすすめは、東京ビーフカレー(ドリンク、サラダ付き)970円。昭和41年(1966)に開店した霞町レストランルームの味を再現したもので、角切りの牛肉がゴロッと入った本格的なビーフカレーだ。玉ネギの甘みだろうか、ルーはやや甘口だがコクもしっかりと感じられる。口に含むとちょっとスパイスも感じられ、全体的にまろやかで優しい味となっている。
東京ビーフカレーに続いて人気なのが、定番メニューのピザトースト(ドリンク付き)850円。少し甘さのあるピザソースを使い、トッピングは玉ネギ、ピーマン、マッシュルーム、サラミ、チーズとシンプル。しっとりと厚みのあるトーストと、シャキシャキ食感の残る各具材とのバランスがよく、腹持ちもよくて満足感も高い。
喫茶店の軽食メニューというサブ的な位置づけではなく、本格的に食事も楽しめるよう素材選びも徹底し、こうしたこだわりも特別感が感じられる。
豆の種類によって淹れ方が異なるコーヒー
コーヒーはブレンドコーヒーをはじめ、ブルーマウンテンやブラジルなどの各種ストレートコーヒーがある。炭焼珈琲750円や各ストレートコーヒー750円~は、注文を受けてからサイフォンで淹れている。
挽きたての豆の香りがフンワリと鼻をかすめ、1杯ずつ丁寧に沸騰させないよう火加減を調整しながら混ぜていく。こうすることで、豆本来の旨さが引き立つのだ。
今回頼んだブレンドコーヒーはネルドリップで淹れており、やや酸味があるが軽く飲みやすい。各料理のおいしさを消さず、またコーヒー本来のコクを感じられるバランスがちょうどよい。
まだまだ試してみたいメニューもたくさんあるので、次回足を運ぶのも楽しみだ。
取材・文・撮影=千葉香苗、構成=アド・グリーン