23区内唯一の国宝仏の美に触れる
『大倉集古館』は、大倉財閥を築いた実業家、大倉喜八郎(1837〜1928)が収集・保護した美術品を中心とする、現存日本最古の私立美術館だ。2代目の喜七郎(1882〜1963)が作ったホテルオークラ(現・オークラ東京)は、国賓御用達のホテルとしてもよく知られている。
明治時代の廃仏毀釈を受けて、仏像や仏画などが海外に流出するなどして散逸することを憂えた大倉喜八郎が文化財保護活動の一環として収集した像のひとつに、東京23区内唯一の国宝仏として知られる「普賢菩薩騎象像」がある。同館では約4年ぶりの公開となる今回は、側面や背面も含め、360度拝観できる形で展示。柔らかく透明感のある表情や、細く切った金箔を筆を用いて貼り合わせる加飾法「截金(きりかね)」が施された衣の美、普賢菩薩が登場する「観普賢経(かんふげんきょう)」の記載とほぼ一致する白象の鞍の文様などをさまざまな角度から堪能できる。
また、釈迦如来の脇侍として文殊菩薩と共に三尊形式で普賢菩薩を描いた「釈迦十六善神像」などの仏画のほか、普賢菩薩が登場する経典の美麗な写経の模本「平家納経 法華経 観普賢経」(田中新美 筆)なども展示。さまざまな形で仏の姿を描こうとした当時の人々に思いを馳せながら、その美を味わいたい。
名品と共にたどる日本仏教美術の歴史
本展のもう一つの魅力は、『大倉集古館』が収蔵する作品を実際に鑑賞しながら、日本の仏教美術史に触れられる点だ。6世紀に日本へ仏教が伝来し、平安時代以降に隆盛した極楽浄土や『法華経』への信仰を、重要文化財や重要美術品を通じて知ることができる構成となっている。
普賢菩薩は、『法華経』において女性の成仏を説く場面に登場しており、平安時代の貴族女性たちから篤い信仰を受けていたという。普賢菩薩騎象像をそうした歴史の中に位置づけることで、その美と意義をより深く味わえるはずだ。
開催概要
企画展「祈りと救いの美―国宝 普賢菩薩騎象像との出会い」
開催期間:2026年7月28日(火)~9月27日(日)
前期:7月28日(火)~8月30日(日)
後期:9月1日(火)~9月27日(日)
開催時間:10:00~17:00(入館は~16:30)
休館日:月(休日の場合は翌火曜)
会場:大倉集古館(東京都港区虎ノ門2-10-3)
アクセス:地下鉄南北線六本木一丁目駅から徒歩5分、地下鉄日比谷線神谷町駅から徒歩7分、地下鉄日比谷線虎ノ門ヒルズ駅から徒歩8分、地下鉄銀座線・南北線溜池山王駅から徒歩10分
入場料:一般1000円、高校・大学生800円、中学生以下無料
※障害者手帳を持参で本人と付き添い1名無料。
※着物(和装)で来館すると300円引き。
【問い合わせ先】
大倉集古館☏ 03-5575-5711(月~金、10:00~17:00)
公式HP:https://www.shukokan.org/
取材・文・撮影=増山かおり 画像提供=大倉集古館






