文京区本郷の人気店『麺屋 ねむ瑠』のセカンドブランドとしてオープン
店名は、すぐれた場所を意味する「まほろば」に、蓮の花の意味を持つ芭の文字を当てた。オーナーの松原昭彦(まつばらあきひこ)さんは、文京区本郷にあるイカと煮干しを使ったスープが特徴的な人気店『麺屋 ねむ瑠(めんや ねむる)』を2015年にオープン。2018年に2店舗目として蒲田にオープンしたのが、『麺屋 まほろ芭』だ。ブランド名も商品も一新したが、麺は本郷の店と共通で、蒲田の『菅野製麺所』に特注した中細ストレート麺を使っている。
看板メニューのひとつは、濃厚煮干玉子入り、通称バカニボだ。注文すると厨房の中で、店長の朴永俊(ぱくよんじゅん)さんが、小鍋にとったスープを火にかけ、麺をゆではじめた。テボ(深型のザル)に入れた麺は、菜箸を使って高速で、カンカンと音がするほど激しくかき混ぜる。
白いラーメンどんぶりに、まさしくセメント色のスープを入れ、その中に麺を加えて、トッピングを添えたバカニボ。小口切りの青ネギと白くみずみずしい玉ねぎのみじん切り、ほんのりピンク色で大きな豚肩肉のチャーシューがどんぶりを彩る。
まずレンゲでスープをすくって口にすると、見た目以上に濃度を感じる。煮干しの出汁と鶏ガラをメインに豚骨を加え、圧力鍋で煮出した鶏白湯スープにしょうゆのカエシを合わせたものだ。煮干しは一晩水につけたあと、出汁と煮干しをこし分けて、煮干しはミキサーでドロドロのペースト状に。煮干しのペースト、元の出汁、鶏白湯スープを合わせて3時間ほど煮込み、蒸発する水分も加味して仕上げている。
『菅野製麺所』に依頼した麺は、パツパツ感をしっかり感じる低加水。麺とスープは、絡むというよりも、一体となって密着している印象だ。
洗練されていて個性的。ポタージュスープのような濃度とまろやかさのあるスープ
煮干し系のスープといえば、ガツンとパンチがある味わいに魅力を感じている人も多いだろう。『麺屋 まほろ芭』のスープは、煮干しのしっかりした味わいの中にえぐみはほぼなく、濃厚なポタージュスープのようなまろやかさが両立している。洗練されていながら個性的と言っていいだろう。
しょうゆのカエシは、愛知県産の白しょうゆをメインに塩麹と加熱処理しない生揚げしょうゆをブレンド。白しょうゆがメインだから、煮干しらしい色が生かされている。
低温調理されたチャーシューは、しっかりした味わいのスープとのバランスを考えた薄味。味玉子も塩加減がほんのり。レンゲですくったスープのなかに、玉ねぎの粗いみじん切りが1つ、2つ紛れ込んでいるときのみずみずしさもいいアクセントだ。
オーナーの松原さんは、「煮干し出汁のマニアの人にも楽しんでもらえて、初心者の人も食べやすい、おいしいと言ってもらえるようにしました」と語る。
繊細さの中にある力強さもラーメンの魅力
『麺屋 まほろ芭』のオープン当初は、SNSでいわばエゴサをして、食べた人がどんな感想を持ったかを分析していた。特に気にしたのは、投稿者が食べた時間帯だった。「夏のランチタイムに食べた人は、返しの味が強い方がハマります。夜は疲れていらっしゃるから、マイルドな味になるように調整したりしますね」。半年ほどかけて訪れる人の傾向を把握して、味を調整した。
「ただ、お客さまの味の好みにあんまりよりすぎると、自分たちの軸がなくなってしまう。そのバランスが難しい」と松原さん。同時にラーメンは、繊細すぎてもよくないと話す。1号店の『麺屋 ねむ瑠』では、動物系のスープをきっちりこして、煮干しもはらわたを取り除くなどとことん丁寧にスープを作ってみたことがあった。「繊細なおいしさなんですけど、どこか物足りなかったんですよ」。
ラーメンの味を追求する店主としてのこだわり、食べる人の好みに寄り添った味わい、そして繊細さとワイルドさの両立。このバランスが『麺屋 まほろ芭』を激戦区蒲田で人気店にしているのだろう。
取材・文・撮影=野崎さおり





