恋多き作家・宇野千代の交友録と作品が一堂に

「おはん(その三)」自筆原稿:「文体」第4号(1949年7月10日文体社)掲載(前期展展示)。
「おはん(その三)」自筆原稿:「文体」第4号(1949年7月10日文体社)掲載(前期展展示)。

2023年度に世田谷文学館に寄贈された宇野千代旧蔵の新資料を前期・後期に分け、年間を通して紹介する本展。宇野の岩国での少女時代から「おはん」の連載が始まる50歳ごろまでの資料を中心に展示される前期と、1947年から1996年までの後半生を紹介する後期にわけて展示する。

若き日に画家の東郷青児とともに世田谷の淡島に“コルビジェ風”のアトリエ付きの瀟洒な家を建てて暮らし、作家としての人生は、尾崎士郎、東郷青児、北原武夫らとの数々の恋や、画家や詩人、評論家など各界で活躍する人々との華麗な交友関係の中で大きく花開いていた宇野。

前半では「色ざんげ」の自筆原稿をはじめ、東郷青児が宇野に宛てた書簡、北原との中国旅行で記された日記、宇野が手掛け、日本初のファッション誌として記録的な売り上げを見せた雑誌「スタイル」のほか、宇野のデザインによる旧蔵の着物など、多彩な資料を一堂に展示。『世田谷文学館』の新たなコレクションの核となる資料が総覧される。

小説家としての出発、時代を先駆けた装いや暮らしぶりを通して、恋と創作に生きた若き日の宇野千代の姿に迫る。

雑誌「スタイル」第1期創刊号(昭和11年〈1936〉6月):日本初のファッション誌。題字は東郷青児、表紙はエコール・ド・パリの寵児と呼ばれた藤田嗣治が手掛けた(前期展展示)。
雑誌「スタイル」第1期創刊号(昭和11年〈1936〉6月):日本初のファッション誌。題字は東郷青児、表紙はエコール・ド・パリの寵児と呼ばれた藤田嗣治が手掛けた(前期展展示)。
昭和14年(1939)4月1日、帝国ホテルにて北原武夫と挙式(前期展展示)。
昭和14年(1939)4月1日、帝国ホテルにて北原武夫と挙式(前期展展示)。
宇野千代旧蔵 化粧道具(前期展展示)。
宇野千代旧蔵 化粧道具(前期展展示)。

晩年まで精力的に活動した波乱万丈の後半生

宇野千代旧蔵 切りばめの着物:宇野デザインの129枚の布を接ぎ合わせて作られた着物(前期展展示)。
宇野千代旧蔵 切りばめの着物:宇野デザインの129枚の布を接ぎ合わせて作られた着物(前期展展示)。

隆盛を極めたスタイル社の倒産や北原武夫との別れなど、後半生でも波乱の人生を歩んだ宇野。一方で代表作『おはん』の完成や『薄墨の桜』『八重山の雪』の執筆など作家としての円熟期を迎えた。1982年、84歳のときに始まった新聞連載『生きて行く私』はこれまでの人生を回想したもので、翌年刊行されるとベストセラーに。

「私何だか死なないような気がするんですよ」という前向きな宇野は、作家活動のほか、着物のデザイナーなど多方面で晩年まで精力的に活躍した。宇野の軌跡をたどりながら、その生活と人柄まで浮かび上がる構成になっている。

開催概要

世田谷文学館コレクション展「没後30年 宇野千代展」

開催期間:2026年4月18日(土)~2027年3月28日(日)
《前期》2026年4月18日(土)~9月6日(日)
《後期》2026年9月26日(土)~2027年3月28日(日)
開催時間:10:00~18:00(入館は~17:30)
休館日:月(祝の場合は開館、翌平日休)・展示替え期間・館内整備期間
会場:世田谷文学館(東京都世田谷区南烏山1-10-10)
アクセス:京王電鉄京王線芦花公園駅から徒歩5分
入場料:一般220円、大学・高校生170円、65歳以上・小・中学生300円。
※障がい者割引あり。

【問い合わせ先】
世田谷文学館☏03-5374-9111
公式HP https://www.setabun.or.jp/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=世田谷文学館