かすみ食堂
地域の愛され食堂で飲み中華
大澤さん一家を中心に切り盛りし、2020年で53年。最初は和食メインだったが、本格中華を学んだ2代目の技が光る中華料理も看板に。例えば、海老と玉子のふわふわ炒めは片栗粉でコーティングしてありエビがふっくら。玉子の白身で作るあんのトロトロ感も絶妙だ。周りを見れば定食のおかずを肴に三冷ホッピーをあおる職人さん、ごはん前に瓶ビールをやる家族連れお父さん。スマホを睨(にら)む人はゼロ、地元の人々の心から憩う空気で店は満ちている。
『かすみ食堂』店舗詳細
囲坊主
百花繚乱の厳選食材に迷い箸
当日の品書きは美唄のアスパラ炭火焼き330円に銚子の金目刺し990円、A4ランクの和牛タタキ660円まで安くてうまそうなものが100種以上。「こだわりだすと引き下がれない性格で(笑)」と店主の木野内健一さん。北八ヶ岳の農家が育てた冷やしピーマン165円は驚くほどジューシー、焼いたキンキは身がふっくらで酒が進む。埼玉の地酒・花陽浴び(はなあび)など稀少酒も多くどれをお代わりするか悩む~。
『囲坊主』店舗詳細
やきとん なつ屋
ほがらか焼き師の、串にかけた思い
焼き場に立つのは女性店主の林田夏美さん。店はしゃれたカフェ風、いいやきとんに出合えるのか——。一抹の不安をよそにレバは絶妙火入れでトゥルトゥル、カシラはレアステーキのような肉感で抜群にうまい。夏美さんは自ら大宮の卸業者へ朝〆の豚モツを仕入れにいくそう。「急逝した父の夢を継いで開いた店なので、とことんこだわりたいんです」。主婦友達が手掛けた内装など多くの人の支えを得て、今や『なつ屋』は繁盛店に。
『やきとん なつ屋』店舗詳細
一球酒場
怒涛の麻辣(まーらー)の後のホッピーが爽快
店の方々から聞こえる「かれ~」「うめ~」の声。ホールと粉の中国産山椒2種を使った一球香辣(じゃんらー)ナス850円や10種以上の香辛料が覆う四川鳥唐揚げ770円など、鮮烈なしびれと辛さの四川料理が名物だ。店長の韓亜孝(かん・あこう)さんいちおしの三冷ホッピー 470円で、その辛さを洗い流す爽快感がたまらない。カウンターから望む中国人シェフの調理姿や東武東上線の風景が、酒をよりうまくさせるのだ。
『一球酒場』店舗詳細
さんちゃん
驚愕10円酒と煮込みでまず一杯
瓶ビールなどを除き一杯目の酒は10円、さらに通常のサワーに+385円で3杯分のメガサワーにできるので財布を気にせず酔える。つまみは看板の牛串煮込みを。赤身の部分たっぷりの牛すじや脂が甘い牛ホルモン、コリコリのアキレス腱はビールも焼酎も好相性。店主の桑田元徳さんいわく「牛串のフワは下ゆでをふくめ丸3日間煮込む。それぐらいかわいがらないとおいしくならないんです」。
『さんちゃん』店舗詳細
三宅島灰干しLABO からもの
海なし県で知る、魚介の真の旨味
三宅島でライフセーバーをしていた頃、島の人に灰干しの技法を学んだ寺西剛志さん。「サラシ越しに三宅島の火山灰で魚介を挟み、約11℃で冷蔵し熟成させる。そうすると適度に水分が残り、アミノ酸が増すんです」。灰干しのタコはぷりぷりで磯の香り濃厚、サバは天日干しよりジューシーで青魚の癖はなく旨味だけが広がる。寺西さんの熱意が通じ卸してもらえることになったやま幸(ゆき)のマグロも必食。ブツは脂がのって透き通った甘みがあり、もはや中トロ!
『三宅島灰干しLABO からもの』店舗詳細
取材・文=鈴木健太 撮影=逢坂 聡
『散歩の達人』2020年10月号より