食材の旨味を引き出す薄化粧『天ぷらいちかわ』
パチパチという音とともにフレッシュな油のいい香り。「炒ってない太白ごま油なので香りは軽やかなんです」と市川憲男さん。サクサクの薄衣も、特上のかつお節で出汁をひいたさらりとした天つゆも、すべては食材の旨味を引き出すため。この日、築地市場で仕入れた極太のアスパラはじんわりと甘く、3枚重ねた大葉は香味が際立つ。レア気味に揚げた天使のエビをプリッと噛(か)めば、濃厚な旨味がジュワ~。夜のコースは1万円程度から。
『天ぷらいちかわ』店舗詳細
食材と器で描く晩秋の風景画『浅草あさの』
浅野一弘さんは、和食ひと筋40年。集大成として、お客と対面できるカウンターの店を2021年に開業。ランチでは気軽にその技を堪能できる。この日のおまかせ膳は花れんこんやイチョウの京焼の器など、秋を表現した盛り付けが美しい。刺し身でもいけるサンマの塩焼きの絶妙な塩加減、天然マイタケが薫る土鍋で炊いたきのこごはんに、シソの香りをつけて炊いたニンジン——。繊細な引き算の味付けで際立たせる食材の滋味に、うっとり。
『浅草あさの』店舗詳細
口で絶妙にほどける希少な押し寿司専門店『468(ヨーロッパ)』
京都の寿司割烹(かっぽう)で修業した岩崎康次さんが仕込む、棒寿司と箱寿司が看板。「保水作用のある砂糖を入れた酢飯を、2時間かけてじっくり冷ましてから軽めに押すので、すぐにほどけるような食感です」。豊洲仕入れのアナゴは身が生きている状態で骨取りをするため、ふんわりと開くM字の断面が美しい。白板昆布で旨味の増したサバは、日本酒を誘う。寒さ深まるこの季節は、ジャガイモをすり流した熱々の芋吸いも、注文すべし。
『468(ヨーロッパ)』店舗詳細
豚愛あふれる職人技で昼からブゥスト『グロワグロワ』
12時間火入れしたローストポークに自家製ソーセージや希少豚の炭火焼。品書きを見ただけで喉が鳴る。「牛はステーキや焼き肉など専門店があるけど、豚は少ない。でも調理法は幅広いので、その専門店を始めたんです」と栗山裕二シェフ。富士宮から仕入れる「LYB豚(ルイビトン)」のリブロースのグリルは、きめ細かい肉質で甘い脂がさらりと溶ける。豚版コンビーフのフロマージュ・ド・ジャレは、ミミガーのコリコリやすね肉のゼラチンがアクセント!
『グロワグロワ』店舗詳細
取材・文=鈴木健太 撮影=逢坂聡
『散歩の達人』2025年12月号より







