意気盛んな文化人や学生たちの溜まり場『ロージナ茶房』【国立】

青い扉が目印。
青い扉が目印。

大正以降に学園都市として開発された国立駅周辺。『ロージナ茶房』創業時の1954年はまだ街の歴史が浅く、「新しいことを始めやすい土地だったはず」と初代マスター・伊藤接さんの娘、八尋さん。画家、ジャーナリストなど多彩な顔を持つ接さんはアジアやインド、中東、ヨーロッパを仕事で旅し、店を作る際にパリのカフェを参考にした。従来の喫茶店とは違うサロンの趣で、仲間の作家や芸術家、音楽家たちの行きつけとなった。地下のフロアを一橋大学のゼミに貸し、学生の論議が白熱したことも。彼らが食べた大盛りメニューは今も健在。

各国を旅した初代が国籍にこだわらず、自由なイメージで考案した魚介のパスタ。コスモポリタン(平日限定)1550円。+480円でブレンドコーヒー付き。
各国を旅した初代が国籍にこだわらず、自由なイメージで考案した魚介のパスタ。コスモポリタン(平日限定)1550円。+480円でブレンドコーヒー付き。
調度品は創業時のものが多い。
調度品は創業時のものが多い。

『ロージナ茶房』店舗詳細

心地よい音楽と店主の優しい笑顔が目当て『名曲喫茶でんえん』【国分寺】

クラシック音楽が響く店内。増築された奥の一室には熙盛さんの収集品が並ぶ。
クラシック音楽が響く店内。増築された奥の一室には熙盛さんの収集品が並ぶ。

2年後(2027年)にはいよいよ70周年。創業者の新井熙盛さん亡き後、店を営んできた妻の富美子さんは「あと1、2年で終わりたい」と言いながらも「みなさんが『続けてください』って言ってくれるから」と今もずっと店を開けている。店名は言わずもがな、ベートーヴェンの交響曲第六番「田園」から取ったが、「昔はこの辺も牧歌的な景色でした」。大正時代の米蔵を改装した店舗は石造りのおかげで音がよく広がり、柔らかく響く。注文後に作ってくれるミルクセーキはバニラの香りがふわり。卵黄のコクと甘さ控えめのサラッとした後味にホッと癒やされる。

ミルクセーキ600円。ブレンドコーヒー500円。
ミルクセーキ600円。ブレンドコーヒー500円。
90歳を超えた新井富美子さん。富美子さんに会いたくて来店する人も多い。
90歳を超えた新井富美子さん。富美子さんに会いたくて来店する人も多い。

『名曲喫茶でんえん』店舗詳細

住所:東京都国分寺市本町2-8-7/営業時間:13:00〜16:00/定休日:火・水・木(不定あり)/アクセス:JR・私鉄国分寺駅から徒歩4分

古いテーブルをなで、アップルパイを頬張る『ガルリカフェ』【西国分寺】

狭い階段を上り、扉を開くと味わい深い空間が現れる。
狭い階段を上り、扉を開くと味わい深い空間が現れる。

銀座の「ガルリカフェ」(現・銀座みゆき館)から暖簾(のれん)分けされ、1996年、地元で開業した村越良二さん。経年変化で色褪せた内装など、店全体が味のある骨董品に思える。「自分が食べたいから」と大きめサイズに作ったアップルパイは、生地から手作りし、なんと折り込むのも手作業。注文を受けてから焼くので提供まで時間はかかるが、サクッとしたパイの食感や熱と共に伝わるリンゴの味わいがたまらない。事前に「焼いておいて」と電話をする常連もいるそうだが、オーブンから漂う香りにわくわくしながら待つひとときはほかの何にも代えがたい。

ガルリブレンド500円。ネルドリップならではのまろやかさとコクがありつつ、後味が軽やか。144層の生地を使った自家製アップルパイ700円。
ガルリブレンド500円。ネルドリップならではのまろやかさとコクがありつつ、後味が軽やか。144層の生地を使った自家製アップルパイ700円。

『ガルリカフェ』店舗詳細

住所:東京都国分寺市西恋ヶ窪2-3-1 2F/営業時間:12:00〜23:00/定休日:月/アクセス:JR中央線・武蔵野線西国分寺駅から徒歩1分

コーヒーが香る空間でタイムスリップ気分『一六珈琲店』【立川】

時代を感じられるカウンターにコーヒー豆がずらり。
時代を感じられるカウンターにコーヒー豆がずらり。

2004年の創業にもかかわらず、その倍以上続く老舗のような雰囲気。「調べるのが好き」だという店主の田中誠一さんはインテリアの細部にまでこだわり、「昭和初期の喫茶店を調べて、それをイメージして店作りをしました」。自家焙煎のコーヒー豆は、少量ずつ作業できる小型の焙煎機を用いることで常時約20種類を用意。店内ではノリタケ社のポットで出してくれ、カップ一杯半ぐらい入っているので安心してゆっくりできるのがうれしい。お菓子も手作りで、たいやきのあんこも自家製。小豆らしさを生かしたつぶあんをココアを混ぜた生地で挟む。

コーヒー780円。たいやき350円。レモンケーキ400円。
コーヒー780円。たいやき350円。レモンケーキ400円。
「お気に入りを見つけてほしい」と焙煎度合いを変え、多種多様なコーヒー豆を揃える。
「お気に入りを見つけてほしい」と焙煎度合いを変え、多種多様なコーヒー豆を揃える。

『一六珈琲店』店舗詳細

住所:東京都立川市錦町1-4-19 親松ビル102/営業時間:11:00~17:30LO/定休日:月(祝の場合は翌日休)/アクセス:JR立川駅から徒歩5分

取材・文=信藤舞子 撮影=佐藤侑治 井上洋平(ガルリカフェ)