10時間煮込んだ豚骨スープがとろり。『豚骨味噌ラーメン じゃぐら高円寺』
『豚骨味噌ラーメン じゃぐら高円寺』は高円寺駅から南に徒歩8分ほど。高円寺に数あるラーメン店の中でも指折りの人気店と言っていいだろう。
スープは豚のゲンコツ、カシラ、そして鶏のモミジを、骨を叩き割るようにしながら、ほぼつきっきりで10時間煮込む。だから濃度が高く、どろっとした食感のスープが出来上がる。コラーゲンもたっぷり溶け出している。
麺はスープが絡みやすいように特注している中太麺。国産小麦を使っていて、香りもよくもちもちした食感だ。チャーシューは、豚バラを煮込んで、醤油ダレに漬け込んだもの。提供前に片面だけ炙って香ばしく仕上げている。「スープの味が濃い分、チャーシューはあっさりしています。スープにディップして食べていただく感じです」と店主の千代田英司さんは話す。
『豚骨味噌ラーメン じゃぐら高円寺』店舗詳細
全国のラーメンを食べ歩いたマニア店主の店『麺屋 賢太郎』
店主の森江賢太郎さんは「幼き頃よりらーめんマニアだった当方は二十有余年に渡り、邪念を排すべく、一人で幾度も全国を食べ廻った」と店内に達筆な字で書き記すラーメンマニア。ラーメン店での修行経験はない代わり、各地でラーメンを食べ歩いては、1人研究を重ね、納得のいくラーメンを作り上げた。
「豚骨と鶏ガラ、それから煮干し。スープは3種類全部別々に炊いて、最後に合わせているんですよ」と森江さん。3つのスープ全てを合わせて作るから三刀流という、三刀流かさね味わい麺がいちばん人気だ。麺は後半もおいしく食べられるようにと中太の縮れ麺を採用。その日の湿度を考慮しながら、少し硬めに茹で上げる。丼にはサバやウルメの魚粉を多めに入れ、そこに熱々のスープを加える。魚粉が醸し出す香りのよさと存在感を味わえる一杯に仕上げるためだ。
『麺屋 賢太郎』店舗詳細
高円寺・大一市場で煮干し出汁!『DRIED SARDIN BROTHERS』
ディープな空気が流れる大一市場の中に2021年7月にオープンしたのが『DRIED SARDIN BROTHERS』だ。“DRIED SARDIN” =干したイワシ、つまり煮干しをガッツリ使ったスープが売り。
いちばん人気は淡麗煮干そば。チャーシューは豚肩ロースとバラ肉のうち、豚肩ロースがのる。メンマとカイワレと海苔のほか、あらみじんの玉ねぎがたっぷりのっているのもポイントだ。
ほんのりグレーがかった色味のスープは程よく煮干し感。えぐみはない淡麗スープに仕上げている。全粒粉入りで香ばしさもある中細麺とみずみずしい粗みじんの玉ねぎがスープによく合う。煮干しラーメンの付け合わせとしてはポピュラーな玉ねぎだが、食感と味に変化を生みだしていて、最後の一片をレンゲで探しつつ、スープが進んでしまう。
『DRIED SARDIN BROTHERS』店舗詳細
『中華ノ麺 Xing fu シンフウ』で体にやさしく美しい担々麵を
漢字なら「幸福」と書く『シンフウ』がオープンしたのは2018年3月。オーナーの菊地透さんは店を開く前、ある飲食店企業の取締役・総料理長として経営陣に名を連ねていた。独立して個人店の店主となったのは「体が動くうちに、目が届く範囲で妥協しない店をやってみたい」と考えたのが大きな理由だとのこと。
その言葉の通り、清湯スープは丸鶏を煮込んで取る。担々麺用のごまだれは、えぐみが出ないように生のむきごまを店で焙煎。ラー油も手作りで焦がし麻辣油と辣油の2種類を作っているし、決め手のひとつ花山椒は店で実を粉にしてブレンドしているという。もちろん化学調味料は使用しない。
スープはブレンダーで泡立てて、カプチーノ仕立てにしている。このひと手間で一段とクリーミーに仕上がる。まずは泡立ったスープをと、レンゲですくうと、ラー油やたっぷりのひき肉、干しエビ、ザーサイ炒めが一緒になって、一層複雑な味に。スープの絡んだモチモチ麺とパリパリした揚げ麺が絡まって両方の食感が口の中に存在するおもしろさもクセになる。
『中華ノ麺 Xing fu シンフウ』店舗詳細
高円寺駅から1分!『自家製麺 火の鳥73』のクセになる辛口味噌
『自家製麺 火の鳥73』は初代が1973年に屋台でラーメンを売り始めたことに記念して、店名に73と付けている。現店主は初代の娘婿にあたる浅羽範彦さんだ。
看板メニューは、初代が石神井公園に店を構えた頃から火の鳥辛口味噌。味噌に合わせるのは、初代が考案した焦がし唐辛子だ。唐辛子はミキサーで細かく砕いたあと、少ない油で徐々に温めて、最終的に赤黒くなるまで色づける。この香ばしさにハマる人が多いのだとか。スープは辛口というが、辛さが苦手な人でも食べられる程よいレベルだ。もう少し辛さが欲しいなら卓上の焦がし唐辛子を少量加えてみてほしい。全体にシャープさが加わる。
スープは無化調・無添加の味を追求。豚のゲンコツと鶏ガラは、かつては1つの寸胴でガンガンと煮込んでいたが、今はそれぞれに適した炊き方に分けている。昆布と鰹やサバ、イワシから一番出汁を贅沢にとるようになった。
『自家製麺 火の鳥73』店舗詳細
“くさうまスープ”の虜になる『ラーメン 健太』
豚骨というとこってり濃厚なイメージもあるが、『ラーメン健太』のスープはさらりとしている。泡が浮いているが白濁しているわけでもない。寸胴鍋の中でゲンコツを炊き、火を入れては冷まし、熟成させるうちに泡が出て、その状態は営業中にも変化する。店主の健太さん曰く「豚骨ががんばっている」と泡がたくさん出てスープの状態がいい。ただし100%コントロールできるものでもないそうだ。
店内には「作業中でも遠慮なく、声をかけてください」という張り紙。細麺で食べやすい『ラーメン 健太』では8割近い客が替え玉を頼むが、1人で店を回す店主に声をかけづらい人も多いよう。「スープの温度も下がるけん、替え玉は早く出してあげたい。だって、俺はラーメン食う時はそうやもんね」。最初から最後の一杯まで同じ気持ちと丁寧さで作っていると大真面目な顔で話す。
『ラーメン 健太』店舗詳細
人気店『麺屋はやしまる』。つけ麺で味わう太麺の滑らかさ
『麺屋はやしまる』といえば、高円寺のラーメン好きが行列する人気店として知られる。ラーメンの系譜的に言えば、目黒の『支那ソバ かづ屋』や浜田山の『たんたん亭』の流れを汲む。そのことからワンタン麺を目当てに訪れる人も多い。しかし、「意外とラーメンとつけ麺のスープを同じだと思っている人も多いから、ぜひつけ麺を食べてみて欲しいんです」。美大卒という経歴を持つ店主の林信(はやしまこと)さんはつけ麺推しだ。
ミックスわんたんつけめん塩1060円は自慢のワンタンが肉と海老、両方楽しめる1杯だ。茹で上げて手早く水で締め、平皿に守られた麺はツヤツヤ。太麺ながら、ツルツルでモチモチの食感に箸が止まらない。
皮は薄さと滑らかさ、強くて破れないという、相反する特徴を持たせているわんたん。トゥルっとした舌触りに満足感がある。具は食感を残した甘い海老。そしてもう一方は、豚肉のむちっとした食感と旨味。
深夜に働く人に野菜たっぷり。身体も気遣う『らーめん一蔵』
『らーめん一蔵』のオープンは2001年。「オープン当初は中太と言っていましたが、最近太麺が流行ってきたので、今では中細と言われるようになりました」という、店主の冗談とも本気ともつかないコメントが、20年という時間を感じさせる。
『らーめん一蔵』では、ごま油で炒めたもやしが入るメニューが多いが、名前に野菜とつくラーメンには、キャベツやピーマン、ニンジン、玉ねぎ、そして豚ひき肉が加わって、まさに野菜たっぷりだ。豚バラ肉で作るチャーシューは3時間煮たあと、一晩寝かせて、翌日別のタレで表面をしっかり焼き上げるというなかなか手の込んだもの。分厚めに切られていて食べ応えのある1枚だ。
味噌野菜ラーメンは970円。味噌は3種類を合わせて、さらに擦りゴマを加えている。まろやかなスープは一味唐辛子がアクセントで、塩分がそれほど高くないのも好感触。
『らーめん一蔵』店舗詳細
取材・文・撮影=野崎さおり