【コースガイド】

湧水探訪は自分に合ったペースで

市街地の主だった湧水ポイントは徒歩2時間ほどでひと巡りできる。散策途中での休憩時間も考えながら、無理のないスケジュールを組もう。

市街地から箱根西麓エリアへは路線バスが便利

箱根西麓エリアへは三島駅南口から元箱根港方面行きの東海バスを利用できる。三島スカイウォーク経由で山中城跡までの所要時間は30分。

アクセス

電車:JR・地下鉄東京駅から東海道新幹線で約55分の三島駅下車。

車:東名高速道路東京ICから東名高速道路・新東名高速道路・伊豆縦貫自動車道を利用し、三島塚原ICまで約110㎞。三島塚原ICから三島市中心部まで約3㎞。

湧水に出合う散策路

じっくり歩いて感じたい三島の魅力

源兵衛川沿いの三石神社境内に立つ時の鐘。
源兵衛川沿いの三石神社境内に立つ時の鐘。

三島駅南側には湧水ポイントが連なり、行く先々で水に恵まれた三島らしい光景に出合える。三島駅起点の場合、まず楽寿園へ向かい、南出口から源兵衛川へ。川に寄り添いながら南下し、時の鐘を経て、水の苑(その)緑地や三島梅花藻(ばいかも)の里などに立ち寄ろう。三嶋大社へ足を延ばし、桜川沿いの水辺の文学碑を眺めながら白滝公園・菰(こも)池公園経由で一周すれば、約5㎞の湧水探訪を満喫できる。

●市内各所

水辺に集まる野鳥を待つバードウォッチャーの姿も多い水の苑緑地。
水辺に集まる野鳥を待つバードウォッチャーの姿も多い水の苑緑地。
三島梅花藻の里では、地元NPO法人の地道な保護活動により開花したミシマバイカモを通年見られる。
三島梅花藻の里では、地元NPO法人の地道な保護活動により開花したミシマバイカモを通年見られる。
かつての生活用水の名残をとどめる雷井戸。マナーを守って訪れたい。
かつての生活用水の名残をとどめる雷井戸。マナーを守って訪れたい。
溶岩が露出した白滝公園の脇を桜川がゆるやかに流れ下る。
溶岩が露出した白滝公園の脇を桜川がゆるやかに流れ下る。
桜川沿いには三島ゆかりの文学者らの文学碑が点在。
桜川沿いには三島ゆかりの文学者らの文学碑が点在。

楽寿園

三島駅の目の前にある市立公園

楽寿館内は1日6回のガイド付きツアー参加者のみ見学できる。
楽寿館内は1日6回のガイド付きツアー参加者のみ見学できる。

明治23年(1890)に造営された小松宮彰仁親王別邸跡を公園として開放。富士山の伏流水が湧き出し、時季により水位が大きく変化する小浜池、荒々しい三島溶岩流の痕跡、京間風高床式数寄屋造りの楽寿館、郷土資料館など見どころも多い。

溶岩の様子があらわな渇水期の小浜池 (立ち入り不可)。
溶岩の様子があらわな渇水期の小浜池 (立ち入り不可)。
住所:静岡県三島市一番町19-3/営業時間:9:00〜16:30最終入園(11月〜3月は16:00最終入園)/定休日:月(祝の場合は翌火)

源兵衛川

よみがえった清流は三島のシンボル

400年以上前に築造された全長1.5㎞の農業用水路。水源である小浜(こはま)池の湧水量激減を受けて環境が悪化したが、関係者らの尽力により清流が見事に復活。川の中を歩ける歩道が整備され、例年5月上旬からゲンジボタルが舞うなど、三島を代表する親水エリアとなっている。

●散策自由。静岡県三島市泉町ほか

♯dilettante cafe(ディレッタント カフェ)

湧水散策がてらくつろぐ豊かな時間

前菜や自家製ローストポークが食欲をそそる好事家コースの一例。
前菜や自家製ローストポークが食欲をそそる好事家コースの一例。

三島野菜など地元食材にこだわる欧風料理レストラン。ランチメニューは主菜料理の好事家コース2420円〜とパスタコース1980円。セットのドリンクにはワインも選べるので、思わず昼からまったり過ごしたくなる。

テラス席は源兵衛川と一体化したかのよう。予約してから訪れたい。
テラス席は源兵衛川と一体化したかのよう。予約してから訪れたい。
住所:静岡県三島市緑町1-1/営業時間:11:30〜15:00LO、18:00〜21:00LO(ディナーの営業は金・土・日のみ)/定休日:月・火(月が祝の場合ランチのみ営業)

めぐみの子

目の前に立つといきなり人形が動きだす!

「よいしょ、よいしょ」の掛け声とともに清冽(れつ)な雪解け水が竹筒から出てくる。
「よいしょ、よいしょ」の掛け声とともに清冽(れつ)な雪解け水が竹筒から出てくる。

湧水ポイントの一つ・白滝公園の一角にあり、人感センサーでからくり人形が動き出す。「こんにちは。三島のおいしい水だよ。さあどうぞ」と語りかけながら、富士山の雪解け水が出てくる仕組みだ。三嶋大社門前の下田街道にも同じ仕掛けの「つるべっ子」がある。

●利用随時。静岡県三島市芝本町1-5

三嶋大社

地名の由来でもある伊豆国一宮

慶応2年(1866)築で総ケヤキ造りの豪壮な本殿(社殿)。
慶応2年(1866)築で総ケヤキ造りの豪壮な本殿(社殿)。

奈良・平安期の書物にも名が記されている古社。伊豆国一宮として篤い信仰を集め、源頼朝が源氏再興を祈願し、旗揚げに成功したことでも名高い。大鳥居をくぐり、神池を過ぎると、総門・神門が現れ、舞殿、そして荘厳な本殿へといざなわれる。

参拝後は境内の茶店に寄り、福太郎餅200円(お茶付き)で一服していこう。
参拝後は境内の茶店に寄り、福太郎餅200円(お茶付き)で一服していこう。
住所:静岡県三島市大宮町2-1-5/営業時間:境内自由/定休日:無

すみの坊 大社前店

食べ歩きの新定番? うなぎたい焼き

三島の食の代表格といえばうなぎ。市内には蒲焼き専門店が数多くあるが、テイクアウト用のうなぎたい焼きを提供しているのは『すみの坊 大社前店』のみ。自慢の蒲焼きを特製タレごはんで包んで香ばしく焼き上げたもので1個520円。数量限定につき前日までに予約を。

住所:静岡県三島市大社町18-1/営業時間:11:00〜17:30LO/定休日:火・金

三嶋暦師の館

熱心な解説は傾聴の価値十分

三嶋大社から三嶋暦師の館にかけて路上に設置された案内表示。
三嶋大社から三嶋暦師の館にかけて路上に設置された案内表示。

仮名文字で印刷された暦としては日本最古と伝わる三嶋暦(太陰太陽暦)。代々精巧な版木を作成し、暦を印刷・販売してきた河合家から江戸期の建物(国登録有形文化財)を市が譲り受け、三嶋暦をはじめ各地の暦や三島茶碗の由来などを詳しく紹介。

江戸時代後期に普及した帳面型の綴版型三嶋暦。 当時116文(約2320円)で民間に販売されていた。
江戸時代後期に普及した帳面型の綴版型三嶋暦。 当時116文(約2320円)で民間に販売されていた。
三嶋暦の印刷体験もその場で無料でできる。
三嶋暦の印刷体験もその場で無料でできる。
住所:静岡県三島市大宮町2-5-17/営業時間:9:30~16:30/定休日:月(祝の場合は翌火)

千貫樋

三島西町の散策とあわせて訪ねたい

水路の下に潜り込めば、くたびれ気味の樋の様子を仰ぎ見られる。
水路の下に潜り込めば、くたびれ気味の樋の様子を仰ぎ見られる。

戦国時代末期の16世紀半ば、駿河の国5カ村の水不足を解消すべく、現在の楽寿園内にある小浜池から水を引くために造られた千貫樋(せんがんどい)。当初の木製から、関東大震災を機にコンクリート製に改修された。用水としての役割はほぼ終えたが、歴史の遺構として貴重な存在だ。

●見学自由。静岡県三島市加屋町ほか

純喫茶キネマ座

映画愛と喫茶店愛が店中にあふれる

昭和レトロの風情が漂い、ノスタルジックな気分に浸れる店内。
昭和レトロの風情が漂い、ノスタルジックな気分に浸れる店内。

映画ポスター、年代物の蓄音機やジュークボックス、大きな古時計など、店内にはマスター・奥平孝さんの映画と喫茶店への熱き思いが凝縮。カウンター席でコーヒー片手に映画談議に花が咲くのも良し、窓際の席で映画音楽を耳に独りくつろぐのも良し。思い思いの過ごし方ができる。キネマ座ブレンド660円、昔懐かしオムライス990円など。

挽きたてのコーヒー豆をネルドリップで小気味よく淹れてもらえる。
挽きたてのコーヒー豆をネルドリップで小気味よく淹れてもらえる。
住所:静岡県三島市梅名109-2/営業時間:9:00〜18:00/定休日:木と第1・第3水

三島スカイウォーク

富士山の眺望に圧倒される大吊り橋

安定感があるので高い場所が苦手な人でも渡りやすい。
安定感があるので高い場所が苦手な人でも渡りやすい。

市街地から箱根方面へ向かう途中に2015年お目見えした三島の新名所。日本一の長さを誇る歩行者専用吊り橋は、全長400m、高さ70m。園内は大吊り橋を挟んで、ショップやレストランなどが揃う南エリアと、ロングジップスライドはじめ自然に親しむ各種アクティビティ(利用料別途)を楽しめる北エリアに分かれる。

住所:静岡県三島市笹原新田313/営業時間:9:00〜17:00(変動あり)/定休日:無

山中城跡&箱根旧街道

箱根西麓エリアで往時をしのぶ

ユニークな形状の障子堀の先に富士山が悠然と姿を見せている。
ユニークな形状の障子堀の先に富士山が悠然と姿を見せている。

戦国時代末期、北条氏により築かれた山中城。国指定史跡の城跡は緑豊かで眺望にも恵まれた公園として整備され、衝立障子(ついたてしょうじ)のように見える障子堀などが目を引く。春から秋にかけて城跡を彩る花々との出合いも楽しみだ。山中城跡周辺から市街地にかけては箱根旧街道の石畳や一里塚、松並木がところどころ残り、往時の東海道の面影をしのぶことができる。

●散策自由。静岡県三島市山中新田410-4ほか

取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2021年5月号より