どこか懐かしいを集めた『四歩』
吉祥寺駅から歩いて15分ほどの住宅街に『四歩(しっぽ)』はある。積み上げられたお皿や戸棚はどこか懐かしく、吸い寄せられるように扉をくぐる。
同店で扱うのは、ジャンルや年代にこだわらず、衣類、うつわ、雑貨、アンティーク家具など、どこかに懐かしさやぬくもりを感じるもの。日常に寄り添うセレクトで、何気なく手にとった雑貨も、自分が使うシーンがふとよぎる。
「以前、三鷹のインテリアショップの会社に勤めていて、そのショップの一角ではじめたお店なんです。最初は雑貨などを扱うたった4坪の場所でした」と話すのは、オーナーの宮崎さん。同社が手がける4番目の企画で店を立ち上げ、『四歩(しっぽ)』と名付けたのだそう。その後独立し、2018年3月に吉祥寺へ移転。店舗も広くなり、ライフスタイル全体を提案する店に進化させたのだという。
カフェスペースで食べられる定食やケーキは、“どこか懐かしくやさしい”店の世界観をそのまま表現した味わい。ランチタイムは平日も満席になるほど人気だ。席が空くまでにちょっと待ち時間が出ても、お店をぐるりと一周すれば、あっという間に順番が回ってくるのもうれしい。
おばあちゃんの手料理をお手本にした定食
本日のごはんセットは週替わりでメニューが変わり、メインのおかずは2種類から選べる。この日は「アジフライ タルタルソース」と「鶏団子と車麩とかぶの煮物」から、後者を注文。ごはんも白米と玄米、十五穀米から選べ、ここに味噌汁と3種類の副菜がつく。
店で出す料理は特別な素材は使わず、家庭の味をつらぬく。「おばあちゃんの家で食べられるような料理をお出ししています。メニューによっては、実際におばあちゃんに聞いたレシピもあるんです。旬の食材も使いつつ、野菜たっぷり。お腹いっぱい食べて欲しくて、この形になりました」との宮崎さん。言葉通り、カフェの食事と侮れないボリュームだ。
「鶏団子と車麩の煮物」は、ほろりとくずれる鶏団子とだしをたっぷり吸った車麩がやさしい味わい。うんうんと頷きながら、顔がほころぶ。
小鉢も食感や味付けがかぶらないよう考えられた、細やかな気遣いもうれしい。いろんな料理を少しずつ、あれも、これもと楽しんでいるうちに食べ終わって、いつの間にか満腹。
「晩ご飯を食べに通う人もいるんですよ」と宮崎さん。納得の満足感で自分の暖かいおなかをなでながら、「夜、これを食べて眠るなんて、いい夢がみられそうだ」と羨ましくなった。
コーヒータイムにぴったりの焼き菓子も素朴な味わい
カフェタイムは、季節のフルーツを使ったケーキやクッキーなどの焼き菓子も人気。季節限定の林檎とキャラメルのケーキは、ビターに煮たりんごを使用。しっとりとやわらかく、コクのある甘さだ。
ゆっくりと食事を楽しんでいたら、おかずが盛られた小鉢やケーキの乗せられたお皿が可愛いことに気づく。もう一周お店をまわって帰ろうか。ウキウキしながら、席を立った。
『四歩』店舗詳細
取材・文・撮影=福井 晶