バリエーション豊富な「子ども110番の家」のステッカー
警察庁HPによれば「子ども110番の家」とは、犯罪被害に遭った、遭いそうになった子どもが助けを求めてきた際に保護し、警察等に通報を行うボランティアである。1996年に初めて岐阜県可児市で設置され(岐阜新聞Web )、その後はPTAや教育委員会の協力のもと全国に広まっていった。運用や登録方法などは各自治体に任されているようで、確かに街を歩くと、自治体ごとにステッカーのデザインが異なっていることに気づく。このステッカーのバリエーションを追ってみたい。
「子ども110番」は家だけとは限らない
まず「子ども110番」は「家」だけとは限らない。たとえば全国の鉄道事業者は「こども110番の駅」を掲げ、「きかんしゃトーマス」をデザインしたステッカーを各駅に貼っている。また金融機関や自動車販売店なども、独自のデザインの「子ども110番の店」ステッカーを掲げている店が多い。
全日本アミューズメント施設営業者協会連合会(現在は日本アミューズメント産業協会)も、マスコットキャラの「ゲーミィ」を用いたステッカーをゲームセンター等に掲示している。
一番多いのは「ピーポくん」など警察キャラクター
一方、商店や家、公共施設に貼られた「子ども110番の家」ステッカーは、自治体ごとにいくつかの種類に分類することができる。最も多く見られるのが、都道府県警察のキャラクターを用いたものだ。神奈川県であれば県警キャラクターの「ピーガルくん」、東京都であれば警視庁キャラクターの「ピーポくん」デザインのものが圧倒的に多い。
同じ「ピーポくん」を用いたデザインといっても、市・区ごとに内容は異なる。よく使われている絵柄は「パトカーと並んで飛ぶピーポくん」「両手を広げるピーポくん」「片手を口に当てて何かを叫ぶピーポくん」「後ろに妹を従えるピーポくん」の4種類である。
ステッカーの形状は四角形で黄色いものが多いが、円形や楕円形のもの、赤や緑のものとバリエーションに富んでいる。
また、呼称も「緊急避難の家」(府中市)、「ピーポくん110番」(杉並区)、「こどもをまもろう110番」(世田谷区)などさまざまだ。
既存のキャラクターを用いたステッカーも多い
既存のキャラクターがステッカーに使われる場合もある。川崎市では、藤子・F・不二雄氏が長く在住していた縁からか、ドラえもんを採用している。
また海老名市も近年、市のキャラクター「えび~にゃ」を用いたデザインに一新した。渋谷区もおなじみのハチ公がモチーフとなっているものの、イラストに描かれた「ハチ公くん」はどうやら「子ども110番」専用のキャラクターだと思われる。これらは子どもにも馴染み深いキャラクターを用いることで、親しみやすい雰囲気を作っているのだろう。
私自身はこの「子ども110番」ステッカー観察により、品川区の防犯マスコット「しなぼう」や自由が丘の「ホイップるん」といったキャラクターの存在を知ることができた。
一方足立区のステッカーに描かれた丸顔のキャラクターは何者なのだろうか。ご存じの方がいらしたら是非教えていただきたい。
ピーポ君とイラストの融合型も
自治体の中には、独自のイラストを用いたステッカーを作成しているところもある。台東区のステッカーはピーポくんとイラストとの融合型である。
調布市や墨田区、荒川区などは、いずれもかわいらしい子どものイラストが用いられている。
「子ども110番の家」は、本当ならば使われないに越したことはない。しかしいざという時のために、子どもと一緒に街の「子ども110番の家」ステッカーを観察しながら、今一度安全な場所について話し合っておくのも良いのではないだろうか。
絵・取材・文=オギリマサホ
※写真はすべて2020年撮影