海辺ではなぜ風が吹くの?
みなとみらいといえば、赤レンガ倉庫にランドマークタワー、山下公園など見どころが盛り沢山です。中でも横浜港大さん橋は国内最大級の大型客船ターミナルでありながら、広々としたおしゃれなデッキを歩いて美しい海辺の景色を楽しめると人気です。この橋を歩くと、日差しは強いものの気持ちのいい海風を感じられます。海辺には風がある。当たり前のことのように思えますが、なぜ海風は吹くのでしょうか?
そもそも「海風」とは、海から陸に向かう風のことですが、この風が吹くのは海と陸地との間に温度差があるためです。風は、気圧の高いところから低いところへ空気が移動することで吹きます。昼間は強い日差しに温められることで海よりも陸地の方が高温になります。すると、陸地では温められた空気が上昇し、海側に比べて気圧が低くなります。そのため、相対的に気圧の高い海側から陸側へ空気が流れ込み、海風が吹くのです。
反対に、夜は放射冷却で陸地の方が冷えます。このため、日中とは逆に陸地から海に向かって吹く「陸風」が吹きます。
大さん橋を歩くと、実際に海風が感じられます。海から吹き付ける風が肌に当たると、ひとときの間、暑さがふっと和らぐように思えました。広々と見渡せるマリンブルーの景色も、目から涼しさを感じさせてくれるのかもしれません。
不思議な形の防波堤「象の鼻」。歩いて歴史に迫ろう
大さん橋の近くを歩いていると、海岸線が不思議な形をしている場所があります。ここは「象の鼻防波堤」です。安政5年(1859)、横浜港が開港すると、港には2本の突堤(防波堤)が築かれましたが、当時は岸からまっすぐにのびた簡素な構造で、東側の突堤は外国貨物、西側の突堤は国内貨物の積み下ろしに使用されていました。ところが、慶応2年(1866)に「横浜大火」と呼ばれる大火災が発生し、これをきっかけに周辺が再整備されたのに伴い、突堤も改造されたのです。
横浜の冬は北よりの季節風が強く、直線状の突堤では風や波に対して無力であることが問題だったため、東側の突堤は波除けとしても機能するように大きく弓なりに曲げた形に延伸されました。この形状が象の鼻に似ていることから「象の鼻防波堤」と呼ばれるようになったのです。
海は私たちに涼しい風を届けてくれますが、台風が来れば高潮や高波という別の表情も見せるため、いつの時代も海と共に暮らすための工夫が求められます。「象の鼻防波堤」は先端部まで歩くことができるため、開港の地の歴史を感じてみてください。
開けた海辺は雲の観察にもぴったり
開けた海辺は空を眺めて気持ちよく散歩をするのにもぴったりです。この時季は垂直に連なる夏の雲と薄く広がる秋の雲が共存する「行合いの空」が広がります。今の季節しか見られない雲の共演はぜひ味わってほしい絶景です。私が散歩した日も、モクモクとした積乱雲と空高くに羽根のようにのびる巻雲が同時に見られました。まだまだ暑いものの、秋は近付いてきていることを実感しました。
ところで、みなとみらいのシンボル・ランドマークタワーのふもとには不思議なステンレス製のオブジェがあります。一度は目にしたことがある人が多いと思いますが、何を表現したものなのかご存じでしょうか?
こちらは、「モクモクワクワクヨコハマヨーヨー」と名付けられたモニュメント。「たなびく雲」をイメージして造られたそうで、強いビル風を和らげる役目も担っています。いつもは通り過ぎているだけという人が多いかもしれませんが、見上げてみると空高くに広がる雲のイメージにぴったりだということに気付きます。
何気なく感じていた海風も、そのしくみを知ると少し特別に感じられるかもしれません。横浜に息づく港の歴史を感じたり、今しか見られない空を眺めたりしながら、ひと味違った横浜散歩を楽しんでみてください。
取材・文・撮影・画像作成=片山美紀
参考:
田中祥夫 著『横浜港の七不思議 ―象の鼻・大桟橋・新港埠頭』.有隣堂,2007年9月.







