深大寺が涼しい理由(1)敷地いっぱいの緑

都心から電車とバスで約30分の場所にある調布市の深大寺が近年、若者や家族連れを中心に人気を集めています。都内なのに自然が豊かで、食べ歩きや「らくやき」といった陶芸体験ができることから、ちょっとした小旅行気分を楽しめるとSNSでもよくポストされているのです。そんな深大寺は、都心に比べてかなり涼しく感じられると「避暑地」としても注目されており、私も散歩してみました。

都内で浅草寺に次いで2番目に古いお寺といわれる深大寺。深大寺の名は水神と関係のある深沙大王に由来している。
都内で浅草寺に次いで2番目に古いお寺といわれる深大寺。深大寺の名は水神と関係のある深沙大王に由来している。

実際に訪ねてみて、まず驚いたのは緑の多さです。深大寺の周辺には背の高い木々がたくさんあり、強い日差しを遮ってくれる効果があるのです。地面に直接日差しが当たらないと周りの空気も温まりづらく涼しさを実感できます。訪れたのは7月上旬。とっくに見ごろは過ぎていると思っていたアジサイがまだ残っていたことからも、都心との違いを感じました。

隣接する神代植物公園を含めると、東京ドーム10個分もの広さになる敷地には、6つのお堂に加えて、シダレカツラやナンジャモンジャの木、キンモクセイなどの木々、鯉が泳ぐ五大尊池もあり、自然の中での散歩を楽しめます。特に深沙堂の北西に広がる林の中では森林浴もでき、自然の恵みを全身で受け止められるので癒やし効果抜群です。登山に行くのはハードルが高いという人も、深大寺の境内なら気軽に森林浴が叶います。

深大寺が涼しい理由(2)豊富な湧水

深大寺が涼しい理由は緑が多いためだけではありません。ここは豊かな湧水がある場所として有名で、「深大寺不動の滝」は東京の名湧水57選に入っています。明治時代から使用されていたといわれ、現在は敷地の外から見ることができます。不動の滝のほかにも深大寺には湧水が流れており、この湧水こそが深大寺周辺の暑さを和らげてくれているのです。

湧水は過去に降った雨をもとにして生まれます。深大寺は武蔵野台地上に位置していますが、武蔵野台地に降った雨の一部が地下へ浸透し、時間をかけて地下水となります。深大寺周辺にはその地下水が地表に湧き出しているのです。

地下水は年間を通して温度変化が小さく、一般的には17℃前後だといわれます。さらに、湧水が蒸発する時に周囲から熱を奪い気温を下げるため、ヒートアイランド現象を緩和する効果もあるとされています。このため湧水のある場所やその周辺は温まりにくく、ひんやりと涼しく感じられるのです。

なぜ深大寺には湧水があるのか?

では、なぜ深大寺には湧水が豊富にあるのでしょうか?

武蔵野台地に降った雨が地下水となり、やがて表面に湧き出すには、台地に切り口が必要です。その切り口の代表例となるのが「国分寺崖線(がいせん)」と呼ばれる崖です。国分寺崖線とは、立川市から国立市、国分寺市、府中市、小金井市、三鷹市、調布市、狛江市、世田谷区、大田区まで続く崖の連なりで、距離にして約25kmに及び、高さは10~20mほどあります。この崖は地域の人からは「はけ」と呼ばれ親しまれています。

この一帯は表面が水を透過しやすい赤土の関東ローム層に覆われ、その下に砂礫層があります。砂礫層の下には水を通しにくい層があるため、砂礫層で水がたくわえられ、ここから自然に水が湧いてくるのです。

深大寺で湧水が出る理由(作成=片山美紀)。
深大寺で湧水が出る理由(作成=片山美紀)。

武蔵野台地に降った雨が地下水となり、その一部が国分寺崖線など、台地の切り口にあたる場所から現れたものが深大寺の湧水です。武蔵野台地を「雨水をためるスポンジ」だとすれば、国分寺崖線は「スポンジの切り口」、深大寺の湧水は「切り口からしみ出した水」といったイメージです。

豊富な湧水をそばのさらし水などに使えたため、深大寺は古くからそばの名産地としても発展しました。深大寺散歩の休憩には、深大寺そばやそば粉を使ったそばまんじゅう、そばパンなどのグルメを味わうのもおすすめです。

そば粉を使ったパンでソフトクリームをサンド!
そば粉を使ったパンでソフトクリームをサンド!
片手で持てるため食べ歩きにもおすすめ。
片手で持てるため食べ歩きにもおすすめ。

都市化の影響で都内の湧水は減少しつつありますが、深大寺では湧水の恵みを感じることができ、ここを歩けば少しの間、厳しい暑さを忘れられます。もちろんこまめな水分補給や休憩を取ることは必須ですが、この夏は身近な避暑地・深大寺へ涼を感じる散歩へ出かけてみませんか?

取材・文・撮影・画像作成=片山美紀

 

参考:

久保純子 著『東京の自然史を歩く』.創元社,2026年1月.

尾形希莉子・長谷川直子 著『地理女子が教えるご当地グルメの地理学』.ベレ出版,2018年6月.

“東京の名湧水57選”.東京都環境局,https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/water/conservation/spring_water/tokyo,(参照2026年7月13日).

“湧水とは”.東京都環境局,https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/water/conservation/spring_water/type,(参照2026年7月13日).

“国分寺崖線保全の取り組み”.世田谷区,https://www.city.setagaya.lg.jp/sumaimachizukuri/midori/category/12595.html,(参照2026年7月13日).

“国分寺崖線調査”.公益財団法人世田谷トラストまちづくり,https://www.setagayatm.or.jp/research/gaisen?utm_source=chatgpt.com,(参照2026年7月13日).