松山通りさんぽのひと休みにどうぞ『路上』
その日の気分で古着をチョイス
すぐ近くで美容室『Life is』を営む傍ら、仲間たちが得意な古着、多国籍の雑貨、コーヒーを集結させた店をオープン。「語りかけてくる服を選んでいます」と楽しそうに話すオーナーの小鷲泰彦さん。阿佐ケ谷愛が強すぎて中杉通りTシャツ3300円(小鷲さん着用)も製作。日々替わる店員さんとのおしゃべりも楽しい。
毎日食べられるやさしい味は昔のまま『希須林(きすりん)小澤』
名店中華をお持ち帰り
1986~2015年の間、阿佐ケ谷の住人にこよなく愛された中華の名店『希須林』が帰ってきた! 中華総菜をテイクアウトで販売し、当時の人気メニューだった黒酢の酢豚やエビマヨ、鶏肉のカシューナッツ炒め、炒飯なども。1階の奥と2階にイートインスペースがあり、阿佐ケ谷に恩返しすべく飲食営業の再稼働も企画中。
日本茶とアートを交流のきっかけに『ガヤ』
おいしいお茶でゆったり過ごす
建築家との縁から築100年近い古民家と出合い、改修をスタート。DIYをする間に、間借りカフェの予定から日本茶と人が交わる場所へ。デザイン会社『navact』を営むオーナーの尾木さんとスタッフが仕事を通して出合ったおいしい煎茶と自家製の和菓子を楽しめる。ものづくりのサポートなどデザイナーの視点を生かした取り組みも。
前菜からデザートまでおかゆ尽くし『おかゆテラス 阿佐ヶ谷本店』
おかゆ屋さんのコース料理を食べる
東京みやげの人気商品「東京ばな奈」を生み出した「グレープストーン」が営むおかゆ料理専門店。創業地への恩返しの気持ちを込めて阿佐ケ谷が選ばれた。グリル料理におかゆソースを合わせたり、おかゆをお寿司にしたりと、新しい発想から生まれるおかゆのコース料理は驚きの連続。
ゲストと地元民の交流の入り口に!『阿佐ヶ谷いりぐち』
あの和菓子店にチェックイン!
2024年5月に閉店した和菓子店「うさぎや」の建物をゲストハウスにリニューアル。当時の間取りや木材を可能な限り生かし、懐かしい趣も。夕方ごろからはフロントまわりで立ち飲みがスタートし、ゲストだけでなく誰でもウェルカム! 1階奥のラウンジではこども食堂を定期的に開催する予定で、国籍や世代を超えた交流が楽しみ。
和気あいあいで一度行ったらリピート必至『よりみち酒場 ニソクノワラジ』
パン屋さんでちょっと一杯
野菜たっぷりのパンがおいしい『草鞋(わらじ)』が金・土曜日の夜、立ち飲み酒場に変身。金曜は店主の鈴木さんが立ち上げた結婚相談所『ヒカレバ婚活居酒屋』チームの大出恭子さんと一緒にカウンターに立ち、結婚相談所の会員さんたちが来ることも。土曜は隔週で料理好きのご近所さんが作る野菜を中心とした体にやさしいおつまみも。
ワイン通が行きつく知られざるBAR『BAR 頻伽(びんが)』
ジョージアワインを心ゆくまで
約60年続いたスナックそのままの妖艶な空間。グルジア絵画やコーサカス文化好きからジョージアワインに目覚めた店主のさちさんが迎えてくれる。深掘りは止まらず古代製法のクヴェヴリワインに夢中になり、品揃えは都内随一。文献を見て作るというジョージア料理も貴重。酒愛あふれるさちさんとのおしゃべりも楽しすぎて、時間を忘れてしまう。
つながりが町をどんどん楽しくする
阿佐ケ谷の人々は外へ出ずに地元で完結するから、かつては“アサガヤムラ”と揶揄(やゆ)されていたとか。行き交うのはほぼここで暮らす人たち。だからなのか、それほど小さい町ではないのに、まるで田舎のようにあちこちで人と人がつながっているのだ。
松山通りで金・土曜だけ営業する立ち飲み店『ニソクノワラジ』が盛り上がっていると聞いて行ってみると、初対面でも快く受け入れてくれる陽気な方ばかり。「自分が酒場で友だちができて町が楽しくなったから、つながりができる場所が好きなんです」と話す店主の鈴木伸弥さんは、みんなが楽しそうにしてる様子を見てうれしそう。ここの常連客であり、すぐ近くの美容室『Life is』のオーナー・小鷲泰彦さんが始めたのが『路上』。鈴木さんから近くの空き物件を教えてもらったのがきっかけだ。「阿佐ケ谷は多種多様な人がコラボして何かしようと企んでいるのが面白い。若手や老舗に限らず気持ちよく手を貸してくれるから何かやりたくなっちゃうんですよ」。小鷲さんの話を聞いていると、こっちまでわくわくしてくる。
かつて和菓子店「うさぎや」だった建物の前を通ると閉店したはずが、入り口の造作はそのままでゲストハウス『阿佐ヶ谷いりぐち』に。ここを立ち上げた森口剛行(たかゆき)さんは本業が水道工事会社の経営でとにかく顔が広い。地主さんから「森口さんならいいよ」と言われて借りられることになったそう。外から人を呼ぼうと「阿佐ケ谷飲み屋さん祭り」を始めたのも森口さん。『ニソクノワラジ』の鈴木さんとも付き合いが長く、立ち飲み店『アサガヤアンナイジョ』を共同経営している。森口さんは「好きなことをやってるだけ」と言うけれど、誰よりも町のつながりを大切にしているように感じた。
心に刻まれた阿佐ケ谷愛が、新しい輪を広げていく
逆に、なぜ阿佐ケ谷に?と思うのが知る人ぞ知る『BAR頻伽』。都内でも数少ないジョージアのクヴェヴリワインが飲める店として、ここを目がけて遠方から訪れる人も。経歴を聞いたら、阿佐ケ谷最古のジャズバー『鈍我楽(どんがら)』で働いていたと聞いて納得した。
昔の阿佐ケ谷とのつながりを大切にしていると言えば、閉店を悲しむ人が多かった『希須林 小澤』の復活。「阿佐ケ谷で育ててもらったので、10年以内には戻ってきて恩返しがしたいってずっと願っていたんです」。店に立つ谷川理恵さんの言葉を聞いて、ジーンと胸が熱くなった。同じく『東京ばな奈』で一躍有名になった「グレープストーン」が『おかゆテラス』を創業地の阿佐ケ谷でオープンしたのも恩返しの思いが込められているそう。
一方で、『ガヤ』のオーナー・尾木洸太さんは、古民家の再生を機に阿佐ケ谷に足を踏み入れたニューカマー。「まちづくりに携わってきたこともあって、商店街復活の拠点として活動していく話もでてきています」。今回訪れた先々で、「最近オープンした『ガヤ』が気になってるんです」という声を耳にした。近いうちに、また新たなつながりが生まれそうな予感。
取材・文=井島加恵 撮影=泉田真人
『散歩の達人』2026年8月号より






