使ったのは「徳島・室戸・高知55フリーきっぷ」
徳島から室戸岬を経由して高知までを結ぶ、国道55号沿線の各種交通の指定区間が連続3日間乗り降り自由。JR牟岐線と土讃線、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の普通・快速列車の普通車自由席、阿佐海岸鉄道、高知東部交通の路線バスが利用できる。デジタルチケット版「しこくスマートえきちゃん」のほか紙きっぷもある。
発売期間●2027年3月31日まで(利用は2027年4月2日まで)
ねだん●5800円
発売箇所●JR四国チケットアプリ「しこくスマートえきちゃん」、JR四国の駅のみどりの窓口やJR四国ツアー支店、阿佐海岸鉄道宍喰駅、土佐くろしお鉄道安芸駅など
「四国の右下、海辺ゆき」のモデルコース
【1日目】(水曜出発)
徳島駅→JR牟岐線→阿波海南駅→阿佐海岸鉄道(DMV)→海の駅東洋町→高知東部交通バス→むろと廃校水族館前→高知東部交通バス→室戸世界ジオパークセンター→高知東部交通バス→室戸岬(泊)
【2日目】
室戸岬→高知東部交通バス→吉良川学校通→高知東部交通バス→奈半利駅(泊)
【3日目】
奈半利駅→土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線→伊尾木駅→ごめん・なはり線→安芸駅→ごめん・なはり線→球場前駅→ごめん・なはり線→後免駅→JR土讃線→高知駅
【1日目】徳島駅→室戸岬 不思議な乗り物「DMV」を体験して四国右下の岬へ
早朝の徳島駅は、澄んだ空気に満ちていた。「徳島・室戸・高知55フリーきっぷ」を手に、牟岐線へ乗り込む。阿波室戸シーサイドラインともいわれるだけあって、沿線の景色は海、さわやかだ。
2時間ほどの鉄道旅を経て、阿波海南駅でDMV(デュアル・モード・ビークル)に乗り換える。線路を走っていた車両がそのまま道路へ降りていく。なんとも不思議な感覚だ。
バスに姿を変えたDMVが徳島から高知へ入り、到着した海の駅東洋町は、サーファーと地元の“おんちゃん”たちが混ざり合い、南国ムード漂う場所。
地元の名産、ポンカンのポップコーンにケンピなど、攻めた土産が勢ぞろいする道の駅もおもしろい。朝獲れの魚が主役の刺身定食で腹ごしらえをして、食後はポンカンソフトのフルコースといこう。
『むろと廃校水族館』は、いい意味で普通じゃない水族館。ウミガメや室戸の魚たちが元気に泳ぐ姿はいかにもだが、階段にはイカ墨で書いた習字、理科室にはホルマリン標本風の展示、廊下には背比べの跡まであり、懐かしさに胸がいっぱいになる。
昭和世代はご存じ、OHP(プロジェクター)を使った展示には思わず笑ってしまった。まじめなのに、どこかふざけている。その絶妙な塩梅がたまらない。
[阿波海南駅]「DMV」わずか15秒でバスから列車に変身!
阿佐海岸鉄道のDMVは、鉄道とバス、2つの機能をあわせもつ世界初の本格営業車両。阿波海南駅ではバスから列車に、甲浦(かんのうら)駅では列車からバスにモードチェンジする様子を見学できる。
[海の駅東洋町バス停]『道の駅東洋町』アイデア満点のオリジナル土産がずらり
2024年に “道の駅”となった東洋町の美味がそろう直売所。鮮魚や干物、農産物に加え、ポンカンを生かした商品など若手スタッフ考案のオリジナルな味覚が目白押し。常温で持ち運べる魚の加工品もあり、旅先のお土産にはうれしい限り。
☎0887-23-9955
9:00~17:00、無休
高知県東洋町白浜88-1
海の駅東洋町バス停下車すぐ
[むろと廃校水族館前バス停]『むろと廃校水族館』大人も童心に返る絶妙昭和な展示
廃校になった小学校の昭和な懐かし空間を生かして地元の海の生きものを展示。展示は室戸の魚のみ、販売が難しい未利用魚も引き取るというやさしさでできている。プールでは、ウミガメたちが気持ちよさそうに泳ぐ。
☎0887-22-0815
9:00~18:00(10~3月は~17:00)、無休
600円
高知県室戸市室戸岬町533-2
むろと廃校水族館前バス停から徒歩1分
[室戸岬バス停]『釜めし 初音(はつね)』室戸の海が育んだ金目鯛に舌鼓
室戸岬漁港で水揚げされた魚介を、3代目店主が毎朝自ら目利き。4代目もその味を受け継ぐべく奮闘中だ。本場・室戸の金目鯛は刺身も釜めしも絶品。釜めしは注文後に炊き上げるので、予約がおすすめ。
☎0887-22-0290
11:00~13:00LO(土・日・祝は~13:30LO)・17:00~20:30LO、不定休
高知県室戸市室津2616-1
室戸岬からバス9分の室戸下車、徒歩4分
【2日目】室戸岬→奈半利駅 室戸ユネスコ世界ジオパークでダイナミックな自然を体感
室戸の朝は、海の気配で目が覚める。2日目は室戸ユネスコ世界ジオパーク三昧。
室戸半島は、フィリピン海プレートの沈み込みによる地殻変動で幾度も引き起こされてきた南海トラフ地震が海底を隆起させ形成されてきた。火山活動によるジオパークが多い日本では、比較的珍しい成り立ちだ。室戸岬周辺へ足を運ぶと、海岸沿いにはあらぬ方向に隆起した奇岩が連なるダイナミックな光景が広がる。
室戸は弘法大師 空海ゆかりの地としても知られている。なかでも「御厨人窟(みくろど)・神明崫」は、若き日の空海が修行をした洞窟と伝わる場所。洞窟内に立つと、目の前には空と海だけが広がる。この景色に感銘を受け、“空海”と名乗ったともいわれている。
さらに足を延ばして、四国八十八ヶ所霊場第24番札所の最御崎寺(ほつみさきじ)へ。境内含め岬一帯には、「空海の七不思議」と呼ばれる逸話・伝説の残る場所が点在している。
午後は吉良川(きらがわ)へ。備長炭の生産とともに発展した町で、土佐漆喰の白壁や水切り瓦、虫籠窓(むしこまど)などを備えた伝統的な建物がいまも残る。白壁が続く町並みを歩くと、台風などの自然災害をうまく乗り越えようとしてきた先人の足跡を感じられる。
大正6年(1917)創業の工場跡を活用した『藤村製絲(せいし)記念館』では、坂本雅社長が迎えてくれた。初代・藤村米太郎は、娘のために官営の富岡製糸場があった群馬県碓井社から糸繰りの指導員を招き、製糸業を興した。
「2005年に奈半利での生糸製造は幕を閉じましたが、工場や蔵を生かし先代から受け継いできた歴史や日本の製糸産業の歩みを伝えていきたいと思っています」。藤村製絲の歴史や生糸ができるまでを絹のようになめらかに、時にユーモラスに話してくれる。
社長の情熱的な交渉が実り、高級ブランドに採用されたという逸話には感動すら覚えた。その貴重なスカーフも展示されているが、20年近く経つというのにまったく色褪せていない。
[室戸世界ジオパークセンターバス停]『 室戸世界ジオパークセンター』大地の物語を知るジオパークの総合窓口
室戸半島のなりたちや、そこから育まれた文化、暮らしをわかりやすく紹介。「どこをめぐればいい?」と迷ったときは、スタッフへ相談するのもおすすめ。ただ眺めるだけではなく、地球の営みを感じる旅へと変えてくれる。
☎0887-23-1610
9:00~17:00、無休
無料
高知県室戸市室戸岬町1810-2
室戸岬からバス9分の室戸世界ジオパークセンター下車すぐ
[室戸岬バス停]「御厨人窟」空海が見つめた、空と海の景色
空海が青年時代に悟りを開いたと伝わる場所。内部へ入ると、ひんやりとした空気と波音に包まれる。約1200年前は海面が現在よりも近く、より「空と海」だけが見えていただろう。隣には修行の場であった神明窟もある。
見学自由(入洞は8:00~17:00)
高知県室戸市室戸岬町3225-2
室戸岬バス停から徒歩11分
[室戸岬バス停]「最御崎寺」岬の先に佇む祈りの古刹
室戸岬の高台、木々に囲まれた参道の先に立つ。大同2年(807)に弘法大師 空海が開基し、本尊は虚空蔵(こくうぞう)菩薩。嵯峨天皇以来の勅願寺であり、戦国・江戸時代には武将からの信仰も篤かったという。境内には空海の伝説で知られる鐘石がある。
☎0887-23-0024 境内自由
高知県室戸市室戸岬町4058-1
室戸岬バス停から徒歩25分
[吉良川学校通バス停]吉良川の町並み/一歩入れば江戸が薫る白壁の町並み
備長炭で栄えた吉良川に残る、風情ある町並み。白壁や水切り瓦、虫籠窓を備えた伝統家屋が続き、1997年には国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定された。資料の見学やトイレ休憩は『吉良川まちなみ館』へ。
☎0887-25-3670(吉良川まちなみ館)
室戸市吉良川町
吉良川学校通バス停下車すぐ
[奈半利駅]『藤村製絲記念館』絹が紡いだ奈半利の近代史
全国最高級品質と評価され、宮内庁の御用達だった藤村製絲の生糸。工場の跡地に繭から生糸になるまでの工程や当時の機械が展示されている。敷地内にある明治32年(1899)築の繭蔵は高知県近代化産業遺産、登録有形文化財に認定。
☎0887-38-4711
9:00~16:00、土・日・祝休
無料
高知県奈半利町乙2630
奈半利駅から徒歩15分
[奈半利駅]『奈半利のおかって』かまど炊きご飯は地元おっかさんの味
奈半利駅すぐそば、地元のおかあさんが営むお弁当屋さん。毎日かまどで炊くご飯や出汁の染みた煮物などのおかず、自家製パンやシフォンが並ぶ。イートインもあり、おかあさんたちの笑顔に癒やされほっとひと息。
☎0887-38-5548
10:00~16:00、月・火休
高知県奈半利町乙1305-6
奈半利駅下車すぐ
【3日目】奈半利駅→高知駅 ごめん・なはり線でぶらり途中下車
途中下車した伊尾木駅でのお目当ては「伊尾木洞」。国道沿いから少し足を踏み入れるだけで、空気が一変する。洞窟の中は外とは違ってひんやりと涼しい。まるで太古の森に迷い込んだかのような景色に圧倒される。
旅の終盤、和食(わじき)駅付近では白い砂浜と美しい松林が織りなす琴ヶ浜の絶景が車窓いっぱいに飛び込んできた。ローカル線とバスでゆったり、のんびり。海と大地、人の温かさに出会う、四国の右下めぐりとなった。
[伊尾木駅]「伊尾木洞」ひんやり涼しい幻想的な洞窟へ
約300万年前の地層が波に削られてできた洞窟の奥には、シダ植物が生い茂る幻想的な空間。連続テレビ小説『らんまん』のロケ地としても注目を集めたスポットだ。足元が悪い場合は伊尾木洞観光案内所で長靴を借りられる。
☎0887-35-1122(安芸市観光協会)
見学自由
高知県安芸市伊尾木117
伊尾木駅から徒歩7分
[安芸駅]『 安芸観光情報センター( 彌太郎こころざし社中)』幕末の偉人の熱き志にふれる
三菱グループの礎を築いた岩崎彌太郎の地元、安芸市にある観光案内施設。パネル展示やVRシアターほか、彌太郎が登場した大河ドラマ『龍馬伝』の衣装なども展示されており、幕末から明治へ駆け抜けた彌太郎の人生にふれることができる。
☎0887-34-8344
8:30~17:30、無休
無料
高知県安芸市矢ノ丸1-4-32
安芸駅から徒歩5分
[球場前駅]『 安芸しらす食堂 安芸本店』ふわっふわのしらすを贅沢に頬張る至福
安芸水産直営の食堂。目の前の海で水揚げしたしらすを新鮮なうちに釜揚げし、これでもか!と盛りつけた丼が名物だ。運がよければ生しらすが味わえることも。海を眺める店内で、潮風を感じながらいただく一杯は格別。
☎0887-34-8810
11:00~15:30LO、木と第1火休
高知県安芸市西浜3411-46
球場前駅から徒歩15分
[高知駅]『 ひろめ市場』高知の夜は相席で乾杯
高知グルメが集結する市場には、カツオの藁焼きたたきや名物屋台の餃子など、約60店舗が軒を連ねる。地元民も観光客もみんな相席! 土佐の“おきゃく文化”を体感したい。
☎088-822-5287
10:00~22:00(日は9:00~。店舗により異なる)
年に数回休業あり
高知県高知市帯屋町2-3-1
高知駅からバス8分の大橋通下車、徒歩3分
取材・文=本田亜由美 撮影=石川正美
『旅の手帖』2026年7月号より






