[その1]筑波実験植物園
国立科学博物館が運営する、約14haの植物園。園内には3000種ほどの植物が。屋外や温室を巡れば、日本と世界の多様な植生環境が見えてくる。絶滅危惧植物の保全や、植物多様性の研究にも取り組む。
[その2]産業技術総合研究所(AIST-Cube)
産総研の研究成果を、実物展示や映像を交えて紹介する展示施設。エネルギーや環境、人口減少、高齢化といった社会課題を軸に、研究成果を“難しい技術”としてではなく、少し先の暮らしや社会の姿として伝えている。
[その3]筑波宇宙センター(JAXA)
展示館「スペースドーム」に並ぶ、実物大の人工衛星やロケットエンジン、「きぼう」日本実験棟のモデルに圧倒。宇宙開発の歩みに童心をくすぐられながら、未来の暮らしへつながる技術にも思いをめぐらせる。
[その4]Beer&Cafe Engi
つくばセンター広場そばにあるビアカフェ。朝のコーヒーからランチ、夜のクラフトビールまで楽しめる一軒で、時間帯を問わず立ち寄りやすい。研究施設を巡る旅の合間に、科学の街の空気をゆっくり味わえる場所だ。
駅前のバスターミナルから、北回りの始発バスに乗車。街に出ると車窓の風景は少しずつ広がり、研究機関が点在するつくばらしい景色へと変わっていく。
最初に訪れたのは、『筑波実験植物園』。土曜朝イチのまだ人もまばらな園内を歩いていると、ここが単に植物を眺めるための場所ではないことに気づく。たとえば絶滅危惧植物のコーナーや、沖縄の希少な植物を展示する温室。目の前にある緑は、地球の多様性を伝える記録であり、未来へ受け継いでいくべき自然そのものでもある。植物を知り、守り、残していくことは、これからの地球環境を考えることでもあるのだ。
再びバスに乗り、訪れたのは『産業技術総合研究所(AIST-Cube)』。植物園で広がった視点が、自身の生活と地続きな「社会」へと移る。安全かつコンパクトに水素を貯蔵する技術や、雪を滑り落とす特殊なゲルなど、展示されているのは、暮らしのそばにある課題に向き合う研究だ。未来は突然やってくるものではなく、いまこの瞬間にも着実に形づくられているのだと感じる。
さらにバスに揺られて、『筑波宇宙センター(JAXA)』へ。展示館に並ぶ技術試験衛星“きく”シリーズなどの機体や精密な部品に圧倒される一方で、宇宙食や宇宙服の展示からは、生活の気配を感じ取れる。いかにも未来的に見える宇宙開発も、どこか遠い世界の話ではなく、生身の人間の仕事なのだと実感する。
停留所を一つずつ進むだけで、地球、社会、宇宙へと視点が広がっていく。その気軽さとスケールのギャップが、つくばサイエンスツアーバスの面白さなのかもしれない。
一日の終わりは、『Beer&Cafe Engi』でひと息。未来のことでいっぱいになった頭を、クラフトビールでゆっくり現在に戻す。植物、技術、宇宙をめぐったあとは、またいつもの日常へ。街路樹や空の見え方が、来たときとは少し違っている。その小さな変化こそ、科学の街を巡った一日の収穫だった。
取材・文=重竹伸之 撮影=泉田真人
『散歩の達人』2026年7月号より






