今の子供も、昔の子供も夢中にさせる宝箱『駄菓子屋まめぶん』
駄菓子文化を途絶えさせたくないという思いから、鈴木順子さんが祖母の代から続く店を2021年に復活。「自分で厚紙に計算してもらうなど、ここは子供たちが初めてふれる社会の場。当たり付きのワクワクも駄菓子屋の魅力だと思います」。ビッグカツやペペロンチーノなど大人が童心に帰る菓子もずらり!
13:30~18:00ごろ(土・日・祝は10:00~17:30ごろ)、月・火休(不定休あり)。
ポップに全振り、食べたくなるアート『食品サンプル工房アップルキャンディー』
トミーさんは「父が突然亡くなり、自分もいつ死ぬか分からん!」と一念発起。2017年に食品サンプル制作の世界へ。児玉産業TOYのチャーミーちゃんとのコラボ作品が話題に。「大事なのは自分の食べたいものを食べたい量で作ること」。ワークショップは第4日曜に『OSC湘南シティ』で行われる湘南クラフトマーケット、または不定期で『ららぽーと湘南平塚』にて開催。
緑の香りと抜ける風、まるで避暑地のよう『茶室 雨ト音』
ベルギーから帰国した建築家が半世紀前に設計した建物を「和洋折衷が美しい。多くの人に見てもらった方がこの建物が生きる」と那須野浩美さんは、カフェ兼ギャラリーに。自家製スコーンとジャム、クロテッドクリーム、紅茶やハーブティなどをセットにした英国式の本格的なクリームティ1900円を味わえる。
11:00~18:00LO(不定期で~21:00LOの夜営業)、火・水休。
☎0463-26-7055
創業は昭和……ではなく大正時代『昭和本店』
カフェとして開業し、今は母・白川里子さんと昭子さん・美香さん姉妹が弁当屋として切り盛り。木型で作っており、口で絶妙に米がほどけるおにぎり170円~やちらし寿司小350円、ボリューム満点の各弁当700円など、手作りの味は幅広い世代にファンが多い。やわらかな唐揚げ1個75円は、学校帰りにおやつとして買っていく子も。
10:30~18:30ごろ、日・月休。
☎0463-21-0505
4代で紡ぐ新旧練りモノ語(がたり)『中秋蒲鉾店』
創業は大正12年(1923)。昔から作り続けるさつま揚105円やもやし揚115円のほか、4代目の中村彰伸さんが考案のカレー団子120円や湘南特産のコマツナを浅漬けにして練り込んだ湘南七夕揚げ220円など、新旧の練り物20種以上が並ぶ。「生の魚から手作りしているのは代々不変。そうすることで弾力が出て味わい深くなるんです」。
9:00~17:00(なくなり次第終了)、水・日休。
☎0463-21-0122
パッと見はそば屋なのにラーメン専門?『大黒庵本店』
老舗そば屋の2代目・高橋真一さんは「若い世代も来てほしい」と、もともと品書きにあったラーメンを改良。ソバの割り粉を使って製麺し、2日間乾燥させたちぢれ麺はごわごわパツパツ! シジミと煮干しで出汁を取る漆黒スープも中毒性が高く、9割以上が注文するように。3代目光信さんの継承時、ラーメン一本となった。
11:00~19:50(水は~14:50)、無休。
☎0463-21-1335
平塚の魅力
かつて軍需工場があり、その跡地が企業の工場用地に活用され、商工業都市として昭和を駆け抜けた平塚。街を歩けば、同時代を生きた個人商店が点在する。復活した『駄菓子屋まめぶん』もその一つ。
「廃業後、常連だった中学生が成人になり『チームまめぶん』の飲み会を開いてくれて。そのとき、一人の女の子が『この仲間とまめぶんがなければ、今の自分はない』と号泣したのを見て、復活させようと決意しました」と、鈴木順子さん。
50mほど隣にある『食品サンプル工房アップルキャンディー』のトミーさんは元ハマッ子。
「平塚は子育てしやすい。文字どおり地形が平らなので、子供をのせてどこまでもチャリで行けるべ! みたいな。もう今は、平塚を離れがたいです」
『茶室 雨ト音』の那須野さんは湘南で住居探しをしているとき、平塚の魅力に気づく。
「道が広く、雑木林も残っていて気持ちがいい。南側は静けさも印象的で、湘南の華やかなイメージとは少し違うように感じ、そこがまた魅力でした」
北口の老舗『中秋蒲鉾店』の中村彰伸さんは生粋の平塚っ子。
「平塚人は田舎モンです。最初は警戒するけど、話せば打ち解けられる」と笑う。周囲の各商店は七夕祭りを愛して止まず、2024年夏、中村さんも七夕飾り型のさつま揚げを考案!
仕事終わり、中村さんがよく訪ねるのが同じ大門通りにある角打ちの『田中屋酒店』。3代目の田中秀康さんいわく「この通りは駅前から平塚八幡宮まで続く参道。でも、鳥居の前を国道1号が遮っているので迂回(うかい)しなくちゃならない。行政にもお願いしてるんだけど、まっすぐ参拝できる横断歩道がいつか新設されたらうれしいですね」。
大門通りから200mほど西に歩き、公園通りの『昭和本店』へ。ガテン系の男性から小学生まで、昼過ぎても来客が絶えない。御年80の白川里子さんは「母に連れられて来ていた子が、母になって来てくれるの。お客さんとの距離感の近さが対面販売の醍醐味(だいごみ)ね」とほほえむ。公園通り沿いに植えられたアジサイは里子さんが育てたもの。商店街が紫色に彩られるのももうすぐだ。
取材・文=鈴木健太 撮影=泉田真人
『散歩の達人』2025年7月号より





