割烹出身の大将がまかなう、うなぎと天ぷらが自慢の和食店

吉祥寺駅北口のヨドバシ裏は、細い路地に小さな店がひしめき合っていてブラブラ散歩するのが楽しいエリア。気に入った店があればひょいっと入れる気軽さもいい。

今日はどこでランチを食べようかと探していたところ、路地の一角で「うなぎ」「天ぷら」と書かれた提灯が下がる店の前でアンテナが反応した。筆者はうなぎと天ぷら、どっちも大好き!

店頭のランチメニューを見てみると、どれもリーズナブル!(写真提供=うな天)。
店頭のランチメニューを見てみると、どれもリーズナブル!(写真提供=うな天)。

店内は和風の落ち着いた雰囲気。ボックス席になっているので隣のお客さんの目線を気にせず食事ができるのもうれしい。また、筆者のようにひとりで気兼ねなく楽しみたいならカウンター席もある。

落ち着いた上品なトーンで統一された店内。
落ち着いた上品なトーンで統一された店内。

気さくなマスターに話を聞くと、『うな天』は2021年10月に現在地から斜向かいのビルの2階にオープンし、2024年7月に移店してきたとか。 

「この周辺で異なるジャンルの店を4つ運営しているんですよ。『うな天』はそのひとつです。うちは年配の常連さんが多いから、路面の店がいいなと思っていたところ、この場所が空いたので移店したんですよ」と話す。

 「2階にあるうなぎ屋ってあんまり聞いたことないでしょう?」と、大将に言われてポンと膝を打った筆者。たしかに、商業施設に入っている店舗以外はたいてい路面店かも。

うなぎ&天ぷら、とんかつ、和牛焼肉、居酒屋と同じグループの店舗をヨドバシ裏で展開。
うなぎ&天ぷら、とんかつ、和牛焼肉、居酒屋と同じグループの店舗をヨドバシ裏で展開。

大将は料理の世界に足を踏み入れそろそろ半世紀だが、日本料理店ひと筋。長年研鑽を積んできた確かな腕で本格的なうなぎの蒲焼きや天ぷらを提供している。

それを聞いてますます今日のランチは期待が高まった! おなかが減ってきたのでさっそく注文してみよう。

うなぎに天丼、そしてそば! ランチの1番人気はミニ天ざるセットだ

ランチメニューは多彩で、季節の食材をふんだんに使用した料理が揃っている。天ぷら定食、うな重、刺身定食などがある。天ぷらやそばのランチセットには、サラダが付いているところがいいなあ。

ミニ天ざるそばセット1100円がランチの一番人気だ。
ミニ天ざるそばセット1100円がランチの一番人気だ。
豪勢にいくなら国産うなぎのうな重3850円〜もアリ。
豪勢にいくなら国産うなぎのうな重3850円〜もアリ。

少しずついろいろなものが食べたいから、ミニ天丼ざるそばセット1100円をオーダーしよう。

厨房で大将がそばを茹ではじめ、冷水で締める。「江戸そばみたいに喉越しがいいんですよ。つゆも自家製でね」と説明してくれながら、続いて天ぷらを揚げる準備へ。

何種ものそばを食べ比べて選んだというそば。その都度茹でて提供してくれる。
何種ものそばを食べ比べて選んだというそば。その都度茹でて提供してくれる。

ミニ天丼につく天ぷらの具材はエビ、イカ、ナス、カボチャ。あとは旬の食材を1品100円でプラスできるというので、取材時に提供していたタケノコを追加した。

具材に衣をつけ、ごま油を熱した鍋に入れた瞬間、ジュワ〜!っと音を立てながら小さな泡がプチプチと弾けている。芳しい香りにうっとり〜。

「うちはね、具材も大切だけど油にこだわっているんです。焙煎していない太白胡麻油を使っているから、酸化しにくく体にもいいんですよ」

大将は何気なく調理していたが、カラッと揚げる技術はさすが。ごま油の香りが客席まで漂ってきた。
大将は何気なく調理していたが、カラッと揚げる技術はさすが。ごま油の香りが客席まで漂ってきた。

お茶碗にご飯を盛り付け、自家製の天重タレをかけてから天ぷらを盛り付けていく。ただ積み上げるだけじゃなく、美しさも大将の気遣いが垣間見える。

ミニ天丼はお茶碗サイズ。ご飯を覆い隠すほどのナスの天ぷら。
ミニ天丼はお茶碗サイズ。ご飯を覆い隠すほどのナスの天ぷら。

待つこと約10分。トレイにのってやってきたミニ天ざるそばセットがすごかった。ボリュームたっぷりですね!

丼ものやそばのランチは野菜がなかなかとれないが、こちらはシャキシャキのサラダもついてくる!
丼ものやそばのランチは野菜がなかなかとれないが、こちらはシャキシャキのサラダもついてくる!

「天丼のご飯だけにタレがかかっていて天ぷらには味をつけていないので、卓上の調味料を好きなようにかけて食べてくださいね」と、スタッフのふじこさんが案内してくれた。

天重タレは甘ったるくなくキレがいい。風味豊かな抹茶塩、藻塩、柚子塩のほか、山椒も2種類用意されている。

天ぷらは卓上にあるさまざまな塩や自家製の天重タレを自由につけて食べられる。
天ぷらは卓上にあるさまざまな塩や自家製の天重タレを自由につけて食べられる。

藻塩を小皿に取り、まずはお茶碗を覆い隠さんばかりの大きなナスの天ぷらを食べてみた。衣はサクッと軽やかな歯ざわりで、ナスはジューシー。藻塩のおかげか油っぽさを感じさせず、具材本来のおいしさがわかる。

エビの天ぷらは天重タレで食べてみよう。ああ、あっさりしたタレとご飯とエビが口の中で手をつなぎ、くるくる回っているよー。これぞテッパンのマリアージュですな。

甘さは控えめでキレがいい天重タレは、エビの旨味を引き立ててくれる。
甘さは控えめでキレがいい天重タレは、エビの旨味を引き立ててくれる。

続いてそばにも着手。ゆでる前で約130gと、そこそこの量がある。しっかりと冷水で締めているからコシがあって、つゆとの相性もいい。

細切りで喉越しがいい江戸そば風。自家製のそばつゆもキリッと醤油がきいている。
細切りで喉越しがいい江戸そば風。自家製のそばつゆもキリッと醤油がきいている。

ミニ天丼とそばを交互に食べつつ、味噌汁や漬物、サラダを間にはさんでバランスよく食べ進めた。うーん、満足感だけでなく“しっかり食事をとった”という充実感も得られたなぁ。ごちそうさまでした。

夜はちょい飲みセットから特上うな重まで

ところで、ランチをモグモグ咀嚼しながらチラ見していた夜のメニューも気になる。食休みをしながら、メニューを見てみた。

14時30分〜19時まで限定のちょい飲みセット1980円をはじめ、自慢の国産うなぎはお重、蒲焼き、白焼きがあり、刺し身や胡麻豆腐がついた定食4810円も味わえる。

サクっと飲みたい人にはうれしいちょい飲みセット!
サクっと飲みたい人にはうれしいちょい飲みセット!
夜のうなぎは定食スタイルでも提供。
夜のうなぎは定食スタイルでも提供。

「夜は国産のうなぎ、天ぷら、それに刺し身が中心です。仕事帰りにサクッと飲めるセットもあるけど、季節を意識した一品料理も豊富に取り揃えていますよ」

定食を頼んで、それをつまみにお酒を楽しむ常連さんも多いそうだ。なるほど、定食はいろんな料理が組み合わさっているから、そんな使い方をするのもいいですね。

ちなみにお酒は日本酒のほかビール、ハイボール、サワー、酎ハイ、カクテル、果実酒、焼酎がひととおり揃っている。

お酒の話をしていたら、ちょうど夜の仕込み中だった大将が、特別にあなごの薄造りを出してくれた。

包丁の背で身を軽くこすると、微動するあなごは新鮮そのもの。
包丁の背で身を軽くこすると、微動するあなごは新鮮そのもの。

あなごの刺し身なんてはじめて! 蒲焼きだと身がフワフワなイメージだけど生はどんな味なのかな。

あなごの特徴といえば細かい骨だが、この刺し身には一切骨がない。
あなごの特徴といえば細かい骨だが、この刺し身には一切骨がない。

あなごの身はとても柔らかいのだが、こんなに透き通るほど薄く切れるのは大将の腕の良さ。ひと切れポン酢をつけて食べてみると、淡白ながら味わいの奥に甘みがある。これは辛めの日本酒を合わせてみたいな〜。

ランチタイムでもお酒のオーダーが可能。しかし、この後仕事があったので自粛した。

名残惜しいから、再訪した時はお酒を飲みながらうな重とあなごの薄造りを味わい尽くすぞ。

取材・文・撮影=パンチ広沢