“陸の孤島”が聖地になった!
『ゆ家 和ごころ 吉の湯』があるのは、杉並区の成田東という閑静な住宅地の中。
最寄駅である、地下鉄丸ノ内線の南阿佐ケ谷駅・新高円寺駅からいずれも徒歩20分以上と、決して便利とはいえない場所に位置しています。
店主さんも「新高円寺駅からバスで来られる人も多いですが、やっぱり『陸の孤島』だなと、我ながら思いますよ」と話します。
とはいえ、「最近はLUUPで来られる方も増えましたね。この周辺にはポートも多いので便利だと思います」と続けた店主さん。アクセスは良くなっているようです。
立地も良くなく、かつては「知る人ぞ知る名店」だった。そんな銭湯が、テレビドラマ『サ道』に登場したのをきっかけに、多くの人が訪れ、平日でも大にぎわいになっています。
古き良き銭湯が改装を経て現代的に変身!
2007年くらいに改装した『ゆ家 和ごころ 吉の湯』は、真新しい雰囲気の外観ながら、唐破風(からはふ)が設えられていて伝統も感じさせます。
「元の『吉の湯』は歴史がものすごく古くて、創業がいつなのかも、はっきりわかっていないほどなんですよ。ここで一番長く働いているスタッフが赤ちゃんの頃からあったそうなので、50年以上であることは間違いないですね」と店主さん。
かつては、木造のいわゆるクラシック銭湯でしたが、改装後の現在は大浴場にも外光が降り注ぎ、明るくキレイな空間が広がります。
中央に浴槽があるのは関西の銭湯に多く、登場では珍しいつくり。
スーパー銭湯のように広くはないものの、3種類のマッサージバスと電気風呂までついていて、あらゆる疲れを癒やしてくれますよ。
あの俳優も訪れる!? 聖地と言われるサウナ室
「聖地」とまで呼ばれる注目のサウナは、露天スペースに設置。
こちらも広くはありませんが、3段に分かれているのが特徴で、座る段によって温度が大きく変わるため、ルーキーからベテランまで、どんな人にもマッチする温度が見つけられるはずです!
「ブームになってからは高い温度が求められるようになったので、男性側は最上段で98度に設定しています。女性側も、昔は低めの温度で長く入りたいという声が多かったので82~86度でしたが、今は92度まで上げていますよ」と店主さん。
テレビも設置されていて、筆者はその設置された位置が素晴らしいと感じます。
天井近くの上部にあるため、テレビを見ずに集中したいときは正面を向いて大きな窓から外を眺め、テレビを見たければ顔を上げれば良いのです。
広くない空間ながら、温度だけでなくテレビを眺めたい人でも集中したい人でも、さまざまなタイプにマッチするようにできています!
サウナ→水風呂→外気浴の動線も最高
サウナ室が露天にあるため、限界までアチアチになってサウナ室を出れば、その瞬間に外気を浴びることができるのも、他の施設にはない魅力。
特に、春・秋・冬は、熱くなった体を撫でる風が最高です!
水風呂も露天スペースに設置。設定温度は17~18度ですが、外にあるため外気の影響を受けやすいそう。
冷たいのが好きな方は冬、ぬるめが好きな人は夏がオススメですね!
そして外気浴。
筆者は、趣味としても銭湯記事の執筆のためにも数多くの銭湯を巡ってきました。その中でも、こちらは23区内の銭湯で、トップクラスの外気浴スペースの広さだといえます!
スーパー銭湯ではなく、町の銭湯でこれだけインフィニティチェアが並んでいるのは、なかなか見かけませんよね!
それに加えて、店主さんが「ここは駅からも遠い分、露天が静かなんですよ。大通りからも離れていますしね」と話す通り、ととのうための環境が完璧に揃っています!
曜日によっては温泉まで楽しめる!
露天スペースには、人気の浴槽「炭酸泉」も。
温度を上げると炭酸が抜けてしまうため、37~39度にしてあるそうで、ゆったり長湯をしたいならば、炭酸泉がもってこいです!
さらに一人でゆったり入れる「壺湯」まで完備。しかもこの壺湯、水曜日には漢方湯になり、土曜日にはなんと温泉になります!
「港区麻布の『麻布黒美水温泉 竹の湯』という温泉銭湯に、毎週トラックで2トンの温泉を取りに行ってるんですよ。いわゆる“黒湯”と呼ばれる温泉で、土曜日はこれ目当てに来られるお客さんもいますね」
泉質は、ナトリウム-炭酸水素塩冷鉱泉で、特徴的なのはph値が8.5ある点です!ph6~7.5が中性で、それより数値が低ければ酸性、高ければアルカリ性の温泉となります。
つまり、こちらの温泉はアルカリ性。
皮脂を溶かし油分を分解する効果があるため、肌がスベスベになるとされている美肌の湯なのです!
さて、これだけ充実した同店。基本的には混んでいますが“強いて言えば空いている”という時間を、こっそりスタッフの方に聞いてみました。
「土日も平日もいつも混んでいますね。ありがたいです。ただ、平日の18~19時半くらいの夕飯どきは、空いている“ことも”ありますよ」
どうしてもサウナに注目されがちですが、銭湯全体が私たちの全てを癒してくれるのが『ゆ家 和ごころ 吉の湯』です。
実は筆者も、100回以上通った超オススメの一軒!ぜひ、堪能してみてください!
写真・文=Mr.tsubaking