都内唯一の木造映画館で猫まみれ『シネマネコ』
国登録有形文化財になった、昭和初期築の都立繊維試験場を活用。支配人の菊池康弘さんは「青梅は映画と猫の町だから」と、夫妻が描く愛猫ぎんちゃん、きんちゃんモチーフのグッズ、カフェのピザトースト750円、カプチーノ600円など猫推しで用意。カフェの本棚も年々、猫本が増殖中だ。
11:00~17:00(カフェ)/定休日:火/アクセス:JR青梅線東青梅駅から徒歩7分
猫街化を牽引する小さなミュージアム『昭和幻燈館』
織物で賑(にぎ)わった昭和の街並みを、「青梅猫町」として表現した山本高樹さん作のジオラマが印象的。また、青梅から作家活動をスタートさせた有田ひろみさん・ちゃぼさん母娘の作品で彩るネコマチ商店街が楽しい。館長の横川秀利さんは商店会のアイデアマンで、猫神様も拝める。
鳥居のそばに猫の神様が鎮座「住吉神社」
高台に構えるのは、応安2年(1369)、大阪の住吉大社から勧請したお社。大社の初辰(はつたつ)猫にあやかり、1998年に商店会より奉納されたのが街道沿いの鳥居そばに座す「阿於芽(あうめ)猫祖神」だ。その数年後には、階段手前の二の鳥居両脇に鯛を抱えた恵比寿天猫、俵に乗った大黒天猫も仲間入り。合わせて拝んでいきたい。
連れ帰りたくなるステンドグラスの猫たち『グラスワークスタジオMinamo』
「猫街だし、猫好きだし」と、アートフェスを機に青梅にアトリエを構えた簗瀬まり子さんは、歴代飼い猫たちをモデルにした作品で店を彩る。壁掛けやミラーフレームは色使いやデザインがモダン。また、ガラス玉のジェムや、ステンドグラスの枠に用いる銅ワイヤーに工夫を凝らしたアクセサリーもあり。身につけたくなるキュートさ。
猫のための意匠もある! 青梅流猫暮らしの邸宅『青梅宿 津雲(つくも)邸』
昭和9年(1934)築の純和風建築は、代議士だった故・津雲國利氏が客人をもてなす場だった。コレクションの美術品や室礼の企画展(次回は2025年2月15日~)を折々に催すが、古民家の廃材を活用した宮大工の技を駆使した贅沢(ぜいたく)な意匠も必見。玄関横の和室には、左右に障子が開いて猫が出入りする猫間障子も。
手みやげにもいい青梅オリジナルの猫雑貨『まちの駅青梅』
駅に隣接するのは、青梅みやげが手に入る雑貨店。青梅出身の作家が手作りする土鈴や、街を彩る山口マオさんのグッズなどが満載。甘み懐かしいアメちゃんは、青梅三大名物の猫、ダルマ、藍染めの青梅ブルーを表現し手みやげにも人気だ。店主の和田保彦さんは「にゃにゃまがりの古民家で、猫雑貨&カフェも始めましたよ」。
限定公開の涅槃図に猫の姿を探す「常保寺」
室町時代創建の古刹が、近くの廃寺より猫地蔵を引き取ったのは昭和初期。境内片隅から白瀧不動尊の脇に遷座したところ、参拝客が急増。住職の小澤秀孝さんが手ずから描く猫イラストの御朱印(電話対応不可)も人気。また、例年1~2月に涅槃図をご開帳。お釈迦様の下に、滅多に描かれない猫の姿もある。
ラテアートにほっこりニンマリ『ナミオ珈琲』
店名の由来は店主の渡邉藍さんの愛猫、ナミとミオから。元家具店の木造建物の一角は、地元作家の猫雑貨や猫本を集めた猫の図書館コーナーもあり猫愛がひしひし。ここではドーナツ&カフェラテのセット600円を。ミルクに描いた猫がキュートで、オーブンで焼いたドーナツもしっとりほろり。芳醇な香りの澤乃井の酒粕入りもあり。
谷中が東ノ猫町なら、青梅は西ノ猫町!
青梅と猫の関わりは古い。坂上に立つ津雲邸の津雲さんは「青梅はかつて織物の町。江戸時代は青梅縞、昭和期は夜具地の一大産地で、布をかじるネズミを退治する猫をとても大事にしました」と、眼下にギザギザ屋根の機屋が立ち並んだと教えてくれた。
特に昭和期は映画館が3館(現在閉館)も立つほど活気にあふれ、『シネマネコ』の菊池さんは「その灯を消したくなくて」と青梅織物工業協同組合の建物で開館。「猫と掛け合わせたら面白いかな」と店名のみならず、グッズも愛猫モチーフに。「最近、1匹保護しちゃったんで、また何か作らないと」。
猫愛は街で高まり、イラストレーター・山口マオさんなど映画・広告パロディ看板が街を席巻。にゃにゃまがりに雪守横丁など、あちこちの路地で多彩な猫アートが出迎えてくれる。
猫神様を祀(まつ)る住吉神社宮司の梅宮さんによるとアイデアの発端は商店会。
「大阪の住吉大社には、初辰さんと親しまれる招福猫がいるのですが、年に一度のアートフェスティバルのテーマが招き猫だったとき、大社とゆかりのあるこちらの社に奉納されました」
聞けば、猫神様の制作者は食料品卸の店主だとか。そういえば、常保寺住職や『シネマネコ』の菊池さん夫妻も「好きなだけ」と笑っていたっけ。青梅住民のアーティスト気質に驚く。
猫本もまた、じわりじわりと街に集積している模様だ。『ナミオ珈琲』の猫の図書館は、廃棄される猫本を集めてイベント出展するクマさんの収蔵本。
「猫仲間の『Minamo』さんの紹介で、2カ月ごとのセレクトには簗瀬さんと出かけています」とほほえむ。
クラフト作家に本マニアが多く暮らす青梅では、どうやら猫が紡ぐ縁で、さらなる縁を呼び寄せているようだ。
取材・文=林さゆり 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2024年12月号より