屋久島三山縦走
縄文杉も楽しめる洋上のアルプストレッキング
人気ルートは樹齢7200 年とも言われる縄文杉往復だが、約8 割が単調なトロッコ道で人も多いから思いきって縦走するのも手だ。九州最高峰である宮之浦岳(宮之浦御嶽)、永田岳(長田御嶽)、黒味岳(黒御嶽)の三山は標高2000 m近いけれど、登り口が高く距離は長くても思うほどキツくない。白谷雲水峡から入り山小屋2~3泊で淀川入口に抜けるか、淀川入口から小屋1~2泊で荒川口か白谷雲水峡に出るコースがオススメ。●協力金1泊2000 円。
白谷雲水峡&ヤクスギランド
大スギ多過ぎ!!ハイキングで会えるヤクスギ群
ヤクスギや多様な原生林が見られる2 つの自然休養林は縄文杉と並ぶ定番観光スポット。倒木更新や切株更新、近世の伐採跡もじっくり観察できる。ヤクスギの基準は樹齢1000 年超えでそれ以下は「小スギ」らしいが、樹齢3000 年の弥生杉を前にすると納得してしまう。白谷雲水峡は映画「もののけ姫」のモデルといわれる「苔の森」でも有名。
千尋滝
アニメキャラの名前にもなった名瀑
尋、千人が手を結べるほど大きい岩盤から名付けられた。落差約60 mの滝自体は遠目なので迫力はそこそこだが、この大岩盤は大川の滝に負けない絶景。標高270 mの展望所からの眺望もよい。駐車場に登山口がある本富岳の読み「モッチョム」は方言で女性器の意味とか。陰陽に見える山容が理由だが、地元住民は赤面せずに言えるのだろうか。
一湊珈琲焙煎所
焙煎道を究める港町のコーヒーショップ
東京で書籍編集をしていた女性が夫とともにUターン、島の伝統的な古民家を改装して焙煎所を営む。「豆から語りかけられる」と忠幸さん。井上製作所の焙煎器で豆本来の甘みを最大限に引き出し、その時々で最良と思える高品質でストーリーのあるコーヒーを販売。編集室を併設し島の情報発信にも意欲的。
県営フェリー待合所 2F/営業時間:11:30~17:00/定休日:火・水
民宿 晴耕雨読
ディープな島の話が聞ける?リピーターの多い宿
『屋久島発、晴耕雨読』(野草社)を著したり、シンガーソングライターの顔を持つなど多才なオーナーはUターンの島出身者。島の季刊誌『生命の島』編集者時代に成り行きで民宿を始め20 年以上になる。本棚とキッチンのあるフリースペースに、夜ごと初対面の旅人が集まり酒を飲み語らう。
喫茶 樹林
島の自然を守りたい思いが伝わる森のカフェ
現店主・日吉眞臣さんの父・眞夫さんが発行人だった雑誌『生命の島』の情報談話室が前身。ほとんどがスギ材の建物、ヤクスギのテーブル、子供が自由に遊べる庭など。屋久島関連本の閲覧や購入もできる。屋久島産の有機無農薬の紅茶、自家製の屋久島産フルーツジュース430 円~。
愚角庵
地を耕し言葉を綴り島の文化を牽引した表現者の庵
詩人・作家の山尾三省(1938 ~ 2001)は、40 年前廃村だったこの地を終ついのすみかに選び東京から移住。島の自然や人々の暮らしを詩や文章で伝えながら晴耕雨読の日々を送った。移住当時には、原生林保護運動にも携わった。思索を深めた書斎「愚角庵」が生前のまま遺されている。
岳参り
中世から伝わる特徴的な島の山岳(三嶽)信仰
長峰集落では鎮守で行程の無事を祈願し海岸で身を清めて登る。今年はサカキ、酒、集落で作られた米と塩、水、今年発行の500円硬貨、山から下ったものをお返しする意味を込めた海岸の玉石などが山頂の権現様に供えられた。
島の電気事情
自然エネルギー100%できっちりと自己完結
90%が森林で地形が急峻、雨量豊富な屋久島は水力発電に都合がよい。その利を生かして屋久島電工は島内に3つの水力発電所を造り電力消費が大きい炭化ケイ素を製造している。発電量のうち1/ 4は配電組合などを通じて島内の家々に供給。大手電力会社が独占せず電力自由化のはるか前から独自の供給網で発送電が分離されている日本唯一の地域だ。
Restaurant&Wine Barヒトメクリ.
屋久島情報とグルメを発信
自然な農法で育てた島の野菜などの食材を使った料理が楽しめる。「屋久島と人をめくる・めぐる、頁をめくる」の思いで名付けた季刊~年刊ペースの地元誌『屋久島ヒトメクリ.』出版元の直営店で、バックナンバーや島の書籍が揃い特産品も販売。自然派ワイン600 円~。
~17:30 LO)
/定休日:月・火
焼酎
読書のお供に超軟水で割った芋焼酎を
屋久島には安房地区に工場を持つ焼酎メーカーが2社ある。島の河川が「屋久島宮之浦岳流水」として名水百選に選ばれているだけあって、超軟水で育ったイモと水で仕込んだ焼酎はまろやかな味わい。とくに仕込みと同じ島の水で割ると格別だ。みやげには割り水用に島の水もセットで買いたい。島民は空港そばのスーパーでまとめ買いしている。
散歩亭 ダイニング&バー
安房川を眺めて洋風島グルメに舌鼓
新鮮な島の食材を使った料理やカクテルが楽しめる。テラス席もありしゃれた店ながら、カウンターがあるので1 人でも入りやすく、他の客とも会話しやすいフランクな雰囲気。ランチはパスタと季節のサラダ、ドリンク付きで980 円~。
ヤクニク屋
2014年創業、島で唯一のヤクシカ解体精肉所
山中や西部林道などで見かけるヤクシカは屋久島と口永良部島に生息するニホンジカの亜種。島内に2~3万頭生息し農作物や自然環境に現れ始めた悪影響を軽減する目的で年間約5000頭が有害捕獲されている。精肉所ができたことで、体が小ぶりなため柔らかい肉や皮を食用や皮革製品などに活用する道が開けた。
革cafe〝ariga-to〞
命に感謝しつつ丁寧に作られるヤクシカ革小物
ヤクシカ革作家の清水舞さんが、植物由来のタンニンでなめし、染料のみで仕上げた丈夫でしなやかなヤクシカ革を手縫いで仕上げる革小物。ステッチが美しく糸が切れにくい。裏表の皮がウマとシカ(馬鹿)のキーホルダーなどオーダーにも柔軟に対応してくれる。
シドッチ神父上陸の地
禁制下に潜入、殉教した最後の宣教師
シドッチ神父(1668~1714)はキリスト教禁制の江戸時代、屋久島に上陸を果たしたイタリア人宣教師。東京都文京区の切支丹屋敷跡で発見された遺骨が彼のものと確定した2015年の話題は記憶に新しい。彼の聖母像を基にしたステンドグラスが飾られる教会ではシドッチ祭が例年11月23日に行われる。
手打ちそば松竹 まつたけ
亜熱帯の島で味わう本格そば
熊本産のソバを屋久島の水でしめて手打ちした関東風の二八そば。細めでツルツルとのど越しがよい、旬の野菜などの天ぷらとともに、ヤクスギが香る古民家の座敷で楽しみたい。島の西側には店がほとんどないので貴重な存在でもある。ざる600 円、うな丼セット1450円。
エビス様
風雨に耐えて海に暮らす人々の安全を見守る
おなじみ漁業の神様。屋久島では「えべっさん」と親しまれ、漁港のある集落には海に向かって浜エビス、集落内に岡(村・町)エビスが対をなして祀られていることが多い。島を一周するときは気に留めてみよう。浜エビスは漁港周辺、岡エビスは漁協近くの港を見下ろす小高い場所を探すとよい。
一湊散策
ほどよい広さの集落をまったり散歩
「かおり風景100 選」に選ばれた「サバ節工場」がある首折れサバ発祥の古い港町。石垣が囲む民家や遺跡、愛嬌のあるエビス様、番屋峰、矢筈岬などぐるりと回って3時間ほど。クルマで県道を南下すると平家落人伝説が残る吉田集落、ウミガメの産卵で知られる永田いなか浜に至るが、途中の東シナ海展望所のオブジェがなぜかリクガメ。モヤっとしつつ『なっちゃん食堂』で食事をしてキャンプ場へ。
さーや Yoga 屋久島
心身を見つめるYogaで五感を通し自然とつながる
オーダーメイドのセルフメンテナンス中心のリラックスストレッチヨガ。武家造の古民家のスタジオを拠点に、日の出や日没の海辺、林間などさまざまな屋外でのヨガを積極的に実践。自然のサイクルを意識してのヨガは、屋久島ならではの新鮮な体験だ。
取材・文・撮影=飯田則夫
『散歩の達人』2017年9月号より