【住みたい街の隣も住みよい街だ】とは

住みたい街ランキング常連の人気の駅。その隣の駅も、実は住みよい街なのではないか——?
いつか住むかもしれないあなたのために、灯台もと暗しの面白さを探して散歩してみました!

ニコンのできたて社屋は新名所になりそう!

初めてJRの西大井駅に降り立った。

東側にひとつだけある改札を出ると、すぐにバスのロータリー。
周りにはマクドナルドや日高屋といったお財布に優しいチェーン店が目に留まり、気張らなくていい街だなと安心する。

特に、広めのマクドナルドは老若男女関係なく、よく利用されているようだ。

駅前。大きいマンションが印象的だが、その下に飲食店が並んでいたり、スーパー(マルエツプチ)があったり、ちょっとした買い物に便利。
駅前。大きいマンションが印象的だが、その下に飲食店が並んでいたり、スーパー(マルエツプチ)があったり、ちょっとした買い物に便利。

前回、同じく品川駅の隣として訪れた北品川駅周辺は思わぬ観光地だったけど、こちらはザ・住宅地といった雰囲気。

東海道新幹線も停車し、交通の要衝として便利な品川駅。駅周辺には飲食店やホテルが並び、週末には映画館や水族館などのスポットもにぎわう人気の駅だ。私もよく利用している。しかしその隣駅はどんな駅なのだろう? 一度も降りたことがないぞ。ということで、【住みたい街の隣も住みよい街だ】第3回は品川駅の隣駅、京急本線「北品川駅」周辺を散策します!
駅前にあるレトロな電灯。こういうのがあると落ち着きますよね。
駅前にあるレトロな電灯。こういうのがあると落ち着きますよね。

ほかに何かあるかなと地図を見ると、「光学通り」というちょっと変わった名称が目に留まった。歩いてみよう。

光学通りを進み、駅から見えた大きいマンションの裏に回ると、西大井広場公園というこれまた大きい運動場あり。子供たちがのびのび野球をしていた。
光学通りを進み、駅から見えた大きいマンションの裏に回ると、西大井広場公園というこれまた大きい運動場あり。子供たちがのびのび野球をしていた。

光学通りを調べてみると、どうやらカメラでおなじみのニコンが関係しているみたいだ。

西大井はニコンが100年以上にわたって拠点を構えているゆかりの地で、旧社名「日本光学工業」から光学通りの名がついたようなのだ。

西大井広場公園の奥にはすぐ、ニコンの大きい社屋がドーン!

ニコンのできたてホヤホヤの新社屋。2024年、東京都港区港南にあった本社がこちらに移転。
ニコンのできたてホヤホヤの新社屋。2024年、東京都港区港南にあった本社がこちらに移転。

人気の『ニコンミュージアム』(入館無料)もこちらに移転し、この2024年10月にオープン。

取材時はミュージアムはまだオープン前だったし、週末だったので人の出入りはなかったけど、今後はこの施設目当てで西大井に訪れる人は多そうだ。

地元の人に聞いた「特に何もない」けど「住むには良い」街

光学通りをいったん駅方面に戻り、線路わきにある通称「たまご公園」と呼ばれる森前公園で地元の方に聞き込みをしてみることに。

たまご公園は滑り台とちょっとした遊具、砂場がある小さい公園なのだけど、ファミリーが遊んだり、お年寄りが休憩したり、入れ替わり立ち替わりよく使われていた。

卵みたいな遊具があります!
卵みたいな遊具があります!

そこで数人に声をかけてこの辺りのおすすめを聞いてみる。
けっこう粘ったのだがいずれの方も「特に何もないな~」という回答だった。

だが分かったことがある。
これといった推しの場所は出てこないが、「住みやすい」という言葉が共通して出るのだ。
たとえば、以下のような理由だ。

・自転車があれば大井町や戸越銀座、大森などに行けるし、『しながわ水族館』や公園などけっこういろんなところに行けちゃう。子供と遊ぶ場所には困らない。
・駅前に皮膚科や眼科などが入っているメディカルセンターがあり助かる。
・駅前にフラダンスや書道などが学べるカルチャースクールもあるので楽しい。
・スーパーも近くに2つあって便利、焼き芋が安くておいしい。

ほんとだ、調べたら『しながわ水族館』まで自転車で13分ほどで行けるみたいだし、自転車なら東急大井町線、地下鉄浅草線などいろいろな路線の駅へのアクセスもいい。
駅前にはコンパクトに医療関係の施設がそろい、カルチャースクールもあるからファミリーや高齢者も住みやすそう。

電車でもすぐ品川駅に出られるから、会社勤めの人にも便利である。

お豆腐屋さんの手作り豆腐が旨い!

特に何もない、と地元の人の生の声を聞きつつも、散策していたらめちゃくちゃ良いスポットを見つけたのでいくつか紹介したい。

まずはたまご公園から徒歩3分くらいのところにある『手作りとうふの店 喜多村』さん。
手作り豆腐なんてずいぶん食べていないのでぜひ食べたい!

看板に四角形が並んでいて、豆腐屋と分かりやすくてかわいい。建物自体もきれいに四角形でお豆腐みたい。
看板に四角形が並んでいて、豆腐屋と分かりやすくてかわいい。建物自体もきれいに四角形でお豆腐みたい。
年季の入った価格表。これを見ただけで、おいしそう、と思ってしまう。
年季の入った価格表。これを見ただけで、おいしそう、と思ってしまう。

あとで調べたところ1960年開業だそうだ。

私も小さいころ、ボウルや鍋を持ってこういった感じの豆腐屋に買いに行っていたことを思い出した。
昔は豆腐屋さんがラッパを吹きながら自転車で売っていて、それを追っかけたこともあったなあ。

胡麻豆腐が人気だそうで、いただくことに(※胡麻豆腐は期間限定で4月頃から9月いっぱいまで)。
胡麻豆腐が人気だそうで、いただくことに(※胡麻豆腐は期間限定で4月頃から9月いっぱいまで)。
絹ごし。食べてみると胡麻の風味が徐々に広がり上品。おいしい!
絹ごし。食べてみると胡麻の風味が徐々に広がり上品。おいしい!

たまご公園のベンチでいただくことに。

これが豆腐屋さんの胡麻豆腐かあ。
一般的に「胡麻豆腐」で連想するのは、精進料理などで出てくる葛粉を使いモッチリとした食感のものだが、こちらは豆腐に胡麻がミックスされている。

醤油か塩をかけようか迷ったけど、そのままのほうが胡麻の香りや風味がしっかり堪能でき、ツウな感じ。
最近は豆腐にしっかり向き合っていなかったのでとてもうれしい体験だった。

必見! 巨大な五智如来と新幹線のある景色

踏切を渡り、今度は西大井駅の西側を散策することに。
そこで見つけたのは如来寺だ。

駅から10分ほど歩くと、きれいに整備された立派なお寺が! 養玉院如来寺だ。
駅から10分ほど歩くと、きれいに整備された立派なお寺が! 養玉院如来寺だ。
まるで京都や奈良に来たみたいで興奮! 大仏様が5体並んでいる。
まるで京都や奈良に来たみたいで興奮! 大仏様が5体並んでいる。

美しい境内の奥にある如来堂には「大井の大佛(おおぼとけ)」と呼ばれる五智如来坐像が並んでいる。寛永12年(1635)に造立されたもので、最も大きい中尊大日如来で3.21mもある。

宝暦10年(1760)建立の如来堂そのものも素敵。境内にはもみじが植えられているので、秋の紅葉と共に見に行くのも絶対良い!
宝暦10年(1760)建立の如来堂そのものも素敵。境内にはもみじが植えられているので、秋の紅葉と共に見に行くのも絶対良い!

社務所に寄ってみるとお寺の方がこの辺りの歴史を教えてくれた。

この辺は昔、沼地になっており、雑木林で山賊も出たらしい。
品川に住んでいた池波正太郎の歴史小説にも描かれたそうだ。

記念に御朱印をいただいた。五智如来が並んでいて素敵。なお、如来寺では写経もやっているそうだ。
記念に御朱印をいただいた。五智如来が並んでいて素敵。なお、如来寺では写経もやっているそうだ。
境内にある無量光殿の屋上からは、頻繁に行き交う新幹線が見える。なかなかいい景色で気に入った!
境内にある無量光殿の屋上からは、頻繁に行き交う新幹線が見える。なかなかいい景色で気に入った!

また、西大井駅から4分ほどのところには初代内閣総理大臣の伊藤博文の墓所があり、かつてはその辺り一帯を「伊藤町(ちょう)」と呼んでいたことも教えてくれた。

あとで調べたところ、如来寺のある5丁目と、伊藤博文の墓所のある6丁目の旧町名は「大井伊藤町」とある。
近くの品川区立伊藤小学校も伊藤博文の名前に由来しているようで、影響力がうかがえる。

伊藤博文公墓所。狭い道路と門の間の凹んだ空間は、馬車がUターンするためのものらしい。言われないと気づかなかった!
伊藤博文公墓所。狭い道路と門の間の凹んだ空間は、馬車がUターンするためのものらしい。言われないと気づかなかった!

伊東博文の墓所は普段は中に入れないが11月に数日のみ一般公開されるそう。ちなみに門の隙間からは銅像が見えた。

白蛇に囲まれ開運を願う! 蛇窪神社

他にも蛇窪神社という白蛇だらけの縁起が良さそうなパワースポットもあった。
良縁、財運、病気平癒、立身出世などの御利益があるという。

蛇窪神社の近くには白蛇の街灯が。ご当地キャラのくぼっちもいる。
蛇窪神社の近くには白蛇の街灯が。ご当地キャラのくぼっちもいる。
社殿等は再建され新しめに見えるが、創建は鎌倉時代の元亨3年(1323)頃と古い。
社殿等は再建され新しめに見えるが、創建は鎌倉時代の元亨3年(1323)頃と古い。
銭洗い所があります!
銭洗い所があります!

境内には、社会やお金がよい方向に回るように願いをこめて回す「銭回し」や「銭洗い」、撫でると開運する撫で白蛇などがあった。

白蛇は神様の使いとされているそうで、脱皮をする蛇のイメージから「復活と再生」を表しているそうだ。

お金持ちになりますように!
お金持ちになりますように!

日によっては本物の白蛇も見られるようで、参拝者を楽しませてくれる工夫がちりばめられている神社だった。

来年の2025年は巳年なので蛇窪神社に訪れる人が多そうだ。

目が点でかわいい白龍。
目が点でかわいい白龍。

散歩の締めは西大井駅前に戻り、オシャレなコーヒースタンド『自家焙煎珈琲の99coffee』でひと休み。
後ろが緑道になっており、自然が感じられて心地いい。

緑道の脇にあるカフェ『自家焙煎珈琲の99coffee』。2023年2月にオープンしたばかり。
緑道の脇にあるカフェ『自家焙煎珈琲の99coffee』。2023年2月にオープンしたばかり。
かわいらしい店内。ベーグルもオーダーできる。黒糖シナモンの甘い系から明太のりチーズといった食事系のものまで、この日は7種類あった。
かわいらしい店内。ベーグルもオーダーできる。黒糖シナモンの甘い系から明太のりチーズといった食事系のものまで、この日は7種類あった。
お散歩がてらに立ち寄るのにピッタリ。あー楽しかった!
お散歩がてらに立ち寄るのにピッタリ。あー楽しかった!

冒頭で「ビジネス街であり、商業施設も充実している品川駅」と書いたが、お隣の西大井駅周辺はそういったものとは無縁の、のんびりした住宅地だった。

品川駅のように全国から人は集まってこないし、若者向けの遊び場があるわけでもない。
でもだからこそ住むのには平和で、ちょうど良いのかもしれない。

それに、紹介したように見どころはあるので、ぜひお散歩に訪れてみてほしい。
私も新しい『ニコンミュージアム』や、如来寺から見える新幹線をまた見に行きたいと思う。

取材・文=小堺丸子

見どころも多くおいしいグルメもあり、無計画に行っても楽しい1日が過ごせ、住みたい街としても人気の横浜駅。でもその「隣」の駅はどうなっているんだろう?電車では通っていても、降りる機会がないから全く知らない……。ということで、【住みたい街の隣も住みよい街だ】第2回は横浜駅の隣駅、JR京浜東北線・横浜線「東神奈川駅」周辺を散策します!
住みたい街としても人気の「横浜」。巨大な横浜駅の隣に、神奈川県の「神奈川」を冠した駅があるのをご存じでしょうか。私は知りませんでした……!周辺に商業施設が集まり、シーバスの乗り場も隣接する横浜。説明するまでもなくターミナル駅として有名だし、東東京に住む私もたまに使っているけど、よく考えたら隣の駅についてはぜんぜん知らない……。ということで、【住みたい街の隣も住みよい街だ】第1回は横浜駅の隣駅「京急本線 神奈川駅」周辺を散策します!