商店街でゆるくアメカジを普及『MRG』
店主の森口さんが買い付けるアメリカ古着はNBAやMLBのアイテム、バンドTシャツなどが充実し、状態が良くリーズナブル。何が売れたか把握したいと、“古着の街”ではなくゆっくりと営めるこの地を選んだ。「会社帰りに昔を思い出して買っていかれる方も」。お父さん世代のハートもつかむ。
●12:00~20:30頃、不定休。
肉肉しいバーガーにかぶりつけ!『PERSIMMON BURGER CLUB(パシモン バーガー クラブ)』
田園調布のステーキの名店『パシモン』が新たにオープン。ステーキ肉の端材を粗めにミンチして作ったパテをジューシーに焼き上げたハンバーガーは、ステーキを食べているような弾力と肉感が味わえる。アメリカ西海岸をイメージした店内も居心地がいい。
●11:30~16:00・18:00~22:00、水夜休。
☎03-5349-1700
水産店の看板の下で営業中『皆川珈琲』
店頭に並ぶのは深煎りのコーヒー豆だけ。店主の皆川さんが“相棒”と呼ぶ焙煎機でしっかりとローストし、酸味がなく濃い味わいに。インドネシアのマンデリンなど定番4~5種類に加え、月替わりの豆も。道具も販売されているので、第一歩を踏み出してみては。100g800円~。
●12:00~18:00、水休。
全国のうつわをその物語とともに『工芸生活』
商店街の奥、路地を入ったところに潜む。店主・石田貴義さんが旅をしながら実際に作家に会って選んだ全国各地のすてきなうつわがズラリ。「作り手と使い手をつなぎ、サイドストーリーも含めて伝えたい」と、どんな焼き方をしているかまで丁寧に教えてくれる。
●12:00~18:00、水・木休。
☎03-6881-0325
“好き”が詰まったワードローブへ『Sister Market.(シスター マーケット)』
「店内にあるのはすべて自分の好きなもの」と、以前スタイリストだったオーナーの長谷川茜さんが旅先で買い付けたセンスのいい洋服やアクセサリー、雑貨が並ぶ。お客さんは自分の部屋で洋服を選ぶように探し、長谷川さんとの会話を楽しんで帰る。駅から遠くてもわざわざ足を運ぶのも納得だ。
●11:00~18:00、日・月休。
店主の感性がキラリと光る一杯『OLD RAMEN(オールド ラーメン)』
ラーメン屋とブティックが同居するスタイリッシュ空間。店主の岩﨑さんが作るラーメンは、シンプルなスープをベースに、合わせるタレにバリエーションをつけることで、独創的な一杯を生み出す。メロンと生ハムがのったビジュアルに驚きつつ、ひと口すすると絶妙にまろやかな味わいに箸が止まらない。
●9:00~14:00、日・月休。
酒とスイーツの織り成す世界に開眼『お酒とお菓子と.bijin(ビジン)』
甘い香りがただよう店内には、酒好きも唸(うな)る国産の酒がズラリ。「飲み心地が落ち着くお酒が好き」と話す店主の田村萌さんが推すのは、酒とスイーツの組み合わせ。ショートケーキには生クリームと相性のいい日本酒を、タルトならロースト香のある焼酎を。新たな世界へ飛び込もう。
●19:00~24:00(日は14:00~)、不定休。
ウルトラマンが見守る自然体な街
かつて円谷プロダクション本社と初代社長・円谷英一の自宅が砧(きぬた)にあったご縁から「ウルトラマン商店街」が誕生。駅前のウルトラマン像が見守るなか、狭い道を車も自転車も通行人も忙(せわ)しなく通り過ぎていく。成城のお隣にありながら、なぜか下町っぽさもあって、いつも活気にあふれている。
しかし、街を隅々まで歩くと新たな一面に気づく。まず、商店街で思わず足を止めたのが、アメリカ古着を扱う『MRG』。下北沢や高円寺にありそうな存在感だ。
「古着は自己満足の世界。売れなくても自分が好きなものを仕入れているからいいやって思えるんです」と、店主の森口浩一さんは笑う。“古着の街”よりも買いやすい値段で、会社帰りのおじさんたちもふらりと立ち寄り家路に着く。
祖師谷住宅の向かい、けやきロード内にある『皆川珈琲』は、店内で焙煎した深煎りのコーヒー豆を販売する。店主の皆川真理子さんは「しっかりとしたローストで濃い味わいが深煎りの魅力」と話しつつも「あの横断歩道から見る景色がビートルズの『アビイ・ロード』みたいで“祖師谷のアビイ・ロード”って呼んでいるんです」と、はにかみながら教えてくれた。
すると、見慣れた商店街がだんだん外国っぽく見えてくる……?
街のあちこちで勃発する偏愛ワールドにおじゃまします
古びたアパートの階段の先には朝9時からやっている『OLD RAMEN』。アパレル出身の店主が作る斬新な一杯が味わえると評判で、店の一角には洋服が並んでいる。
「僕自身、ラーメン屋だと思っていない。単純に作りたいものを作っているだけ」と、岩﨑和樹さん。割り箸やレンゲにまでロゴがデザインされているそのこだわりたるや。
『bijin』では、夜な夜なお酒とスイーツが楽しめる。店主の田村萌さんは客の好みや気分を聞いて、その日のスイーツに合うお酒を選んでくれる。「ショートケーキ×日本酒」なんてこれまで考えもしなかった組み合わせに心が躍った。
「bijin」はロシアのウルチャ民族の言葉で「何事もあるがまま」という意味だそう。「固定観念は取っ払って、非日常を味わってもらえたら」と、田村さんはにっこり。
昔ながらの商店と、いい意味で自由すぎる店主が繰り広げるニューワールドが混ざり合う。『皆川珈琲』の皆川さんがこの街の印象を「適当で、温かい」と言ってたっけ。
気取っていなくて、自然体。自分の好きなものを、分かってもらえる人に楽しんでもらいたい。そんなフリースタイルがこの街の新たな魅力だと思う。
取材・文=香取麻衣子 撮影=逢坂 聡
『散歩の達人』2024年9月号より