お釈迦さまは“4”つの門で出会った人々を見て出家

愛知県「応仁寺」の苦行釈迦像。
愛知県「応仁寺」の苦行釈迦像。

仏教のはじまりに関わる「四門出遊(しもんしゅつゆう)」という物語があります。

“お釈迦さま”ことゴータマ=シッダールタは元々、王族の家に生まれ、何の不自由もない生活をしていました。

そんなある日、お城の外の暮らしを見てみたくなったお釈迦さまは、城の門から外に出てみることにしました。

しかし、東門から出るとそこにはヨボヨボの老人、南門から出ると病気で倒れた人、西門から出るとお葬式の列に遭遇します。それまで、若々しい美男美女ばかりを周りに置いて暮らしていたお釈迦さまは、ここで初めて、人間には誰にも、老・病・死が訪れることを知ります。

そして、「なぜ誰しもがあの苦しみに向かうのに生きるのだろう」と悩むように。

そんな思案の日々の中、北門から城の外に出てみると修行僧に出会います。もちろん修行僧も人間であり、やがて老・病・死を迎えるはずなのに、凛として穏やかな表情。

その姿に心を打たれたお釈迦さまは、出家して修行することを決意し、のちに仏教を開くことになるのです。

世界には“6”つの生きる道がある

道端でも見かける「六地蔵」。
道端でも見かける「六地蔵」。

仏教に「輪廻(りんね)」という考え方があるのは多くの方がご存知でしょう。

いわゆる「生まれ変わり」ですね。

現代的な感覚でいうと、「どんな生き物に生まれ変わるか」のように捉えられますが、「どの世界に生まれ変わるか」が輪廻の考え方です。

その世界が6種類あって「六道(ろくどう・りくどう)」と呼ばれています。

それぞれ、天・人・修羅・畜生・餓鬼・地獄となっていて、今、私たちが生きているのは「人」の世界です。

お地蔵さんが並んだ「六地蔵」を見かけたことがある方も多いと思いますが、六地蔵は六道のそれぞれの世界の苦しみを救うと考えられているものです。

なお、8月の「お盆」の由来は、目連(もくれん)というお釈迦様の弟子が、六道のうちのひとつである餓鬼道に落ちてしまった母親を救おうとした供養から始まっています。

生まれた瞬間に“7”歩あるいた!

東京都中央区「築地本願寺」の誕生釈迦仏。
東京都中央区「築地本願寺」の誕生釈迦仏。

個人差はありますが、私たち人間は生まれてから歩き始めるまでに、約1年かかりますね。

お釈迦さまも、人間ではありますが超人的な伝説がいくつも残されており、初めて歩くの場面もその一つです。

お釈迦さまの母親である摩耶夫人(まやぶにん)が、6本の牙をもった白い象がおなかに入ってくる夢を見て、お釈迦さまを身ごもったと言います。

やがて、お釈迦さまが生まれたのですが、なんと脇の下から出てきたそう。

これは、お釈迦さまが性とは無縁だという表現です。

そして生まれた瞬間にいきなり「7歩」歩いて、天を指差し「天上天下唯我独尊」と言いました。

現代でも、お釈迦さまの誕生日だとされる4月8日になると、各地のお寺では天を指差したポーズの仏像が見られます。

生きるのが楽になる“8”つの教えとは?

佐賀県「常福寺」の薬師如来像。
佐賀県「常福寺」の薬師如来像。

日本では「8」が縁起がいい数字だとされます。それは漢字で書くと「八」が末広がりであるため。

一方、インド生まれの仏教でも、「8」という数字がよく登場しますので、いくつかご紹介いたしましょう。

まず「八正道(はっしょうどう)」という教えがあります。これは、人生の苦しみをなくす生き方として仏教が語る行動規範みたいなもの。

正語(ただしい言葉遣いで、偏ったことを言わない)、正見(自己中心的なものの見方をやめて、中立的な視点をもつ)、正精進(正しい努力を重ねる)などがあります。

これに、正思惟・正業・正命・正念・正定を加えて八正道です。

その他、「日にち」に関しても「8」という数字をよく見かけます。

まずは、4月8日がお釈迦さまが生まれた日で、悟りを開いたのが12月8日だとされています。

そして、毎月8日は薬師如来の縁日となっています。

現実より多い“10”回も開かれる死後の裁判

東京都新宿区「太宗寺」の閻魔大王像。
東京都新宿区「太宗寺」の閻魔大王像。

閻魔大王が、私たちを地獄/極楽のどちらに行かせるかを決める、裁判長であることはご存知の通り。しかし実は、閻魔大王はたくさんいる裁判長の一人なのです。

閻魔大王の属する、裁判長集団を「十王」といって、その名の通り10人で構成されています。

私たちが死ぬと、七日ごとに十王それぞれの裁判にかけられ、閻魔大王の裁判は死後35日目に行われます。

そして四十九日までをかけて、7人の裁判長に裁かれ、それでも結果が出ない場合に100日後・1周忌・3回忌でも開廷されます。

群馬県「追母薬師堂」の十王像(一部)。
群馬県「追母薬師堂」の十王像(一部)。

すでにピンときた方もいると思いますが、お葬式のあとの法事、初七日・四十九日・百日忌・1周忌・3回忌は、十王の裁判の日に合わせて行われています。

もちろん、こうした法事は、「遺族の悲しみを少しづつ和らげ徐々に日常生活に戻るための機能」でもあります。また、「故人を偲ぶと同時に、仏の教えに触れる機会」という意味も。

その中で、「裁判で悪い結果が出ませんように」と願うという側面もあるのです。

 

2500年以上の歴史を持つ仏教。体系的に学ぼうとすれば、とてつもない時間がかかります。ところが、身近に触れている数字から見てみると、意外にも気楽に学ぶことができるのではないでしょうか。

後編は、今回より大きな数字から仏教を見てみます。56億7千万なんていうとんでもなく大きな数字も出てきますので、お楽しみに!

写真・文=Mr.tsubaking