まず初めにそもそもチェアリングとは
パリッコ チェアリングとは、もともと僕たちが勝手にやり始めた遊びなんですよね。
スズキ そう。アウトドア用の折りたたみ椅子を持って散歩に行って、公園の中とか、広い川辺とか、ここだと思った場所に置いてくつろいだり、酒を飲んだりするという。
パリッコ 何年か前にナオさんに「やってみません?」と誘ってもらって、実際にやってみたら想像以上に気持ちよかった。そこらのベンチに座るのとはぜんぜん違うんですよね。
スズキ まず座り心地が段違いだし、視線も自然と低い位置から空を見上げるような感じになって、ずっと座っていられる。
パリッコ で、「チェアリング」なんて名付けて勝手にやっていたら、信じられないことにだんだんと、真似して同じようにやってくれる人々が現れはじめて、むしろこっちが驚いてます。
スズキ 最初は冗談半分でしたからね。
椅子を持って散歩に出てみよう
スズキ そこで思うのが、今って、不特定多数の人が集まる場所を避ける必要のある状況じゃないですか。だけど、散歩のときに椅子を持っていって、広くて人のいない場所を見つけたら、ほんの少しだけチェアリングして過ごすというのは、もしかしてありなんじゃないかと。
パリッコ 難しいところですけどね。それでも「のんきに出歩くなんて許せない!」という人もいるだろうし。ただこういう状況下でも、人には迷惑をかけずに癒やしを得る方法のひとつになるんじゃないかなとは、やっぱり思いますよね。
スズキ 椅子選びもポイントかもしれません。街中でアウトドア用品を背負ってるという姿が、人から見たらのんきすぎる気もするし。だから私なんて、100円ショップで300円で売っていた、相当簡素な椅子でやりましたから。
パリッコ あれは踏み台じゃなくて?
スズキ はは。言われてみるとあれは踏み台かもしれない。だけどクッションを置いて座ると、これがけっこういいんです。腰をゆっくり落ち着ける感じではないんですが、視界が変わる感じは十分あり。
パリッコ 背もたれ、欲しくなりませんか?
スズキ 欲しいですね!
パリッコ ははは。でも手軽には楽しめると。見た目もセカンドバッグみたいだし。
スズキ 実際いつも、保冷バッグに踏み台とクッションと折りたたみのテーブルをひとまとめにして持ち歩いてるんですよ。
パリッコ リビングじゃないすか。
スズキ そうですね。持ち運びリビングです。
パリッコ 僕の場合、本当に家からすぐの場所に大きな公園があるので、いつも通りの椅子で行ってしまいましたが、これも本当、状況に応じてという感じですよね。そもそも、椅子を持って出かけていったからといって、もしもちょうどいいスポットが見つからなければ、その日は潔くチェアリングを諦めるという選択肢もありだと思うし。
スズキ うん。あくまで「一応持っていく」というスタイル。それくらいの気持ちがちょうどいいと思います。
パリッコ 僕は公園を一周しつつチェアリングをしてきたんですが、天気もよくて最高に気持ちいいのはもちろん、今の状況にぴったりのリラックス方法なのでは?ということもあらためて実感しました。
スズキ これまでも気軽に、「雨が降ったらすぐ撤収」みたいな姿勢でやっていたじゃないですか。そのくらいがちょうどハマるというか。
パリッコ 広い公園にポツンポツンと人がいて、一緒に飲んでるわけじゃないんだけど、「あ、いるな」って。それだけでけっこうほっとすると思うんですよね。
これからのスタンダード「お弁当チェアリング」
パリッコ 今回は自分たち的にも新しい試みとして、それぞれ「おつまみ弁当」を作ってチェアリングしたんですよね。ナオさんのはどんな?
スズキ 家の棚にあった、マトリョーシカのようにスタッキングできる弁当箱を引っぱりだしてきて。でかい箱にはモヤシ炒め。
パリッコ わはは! モヤシ好きだな~。
スズキ もうひとつのデカい箱には、冷蔵庫に残っていたハンバーグなどを適当に入れました。子供がかじったものも入っている。あとは小さな箱にわさび味のおかきを入れただけのやつと……。
パリッコ 全体的に発想が自由すぎる。わさび味のおかき、弁当箱に入れる意味ありました?
スズキ ありました。
パリッコ はは。
スズキ お母さんが入れてくれたデザートみたいな気がして。
パリッコ 自分で入れたのに、ついホロリと。
スズキ 最後に、ピンクの小箱が余ったので、「ピンクの間」と名付けて、ハム、カニカマ、紅しょうがを入れてみたんです。
パリッコ 最大の問題作ですね。「入れてみたんです」じゃないって。
スズキ ははは。でもね、ハムに全部巻いて食べてみたらおいしいの!「ピンク巻き」として商品化したい。
パリッコ いや、まぁやってみたいけど。
スズキ パリッコさんのお弁当は、売ってるものみたいで、おいしそうですね!
パリッコ 最近買ったまげわっぱの弁当箱に、地元の商店を回って買い集めたものを詰めてみました。好きな肉屋のから揚げと、中華屋の餃子と、みたいな。あと今回、せっかくのお弁当なんで、ちょっとご飯ものも入れてみようと思って、商店街にある小さなマートみたいなお店で、普段は買わないおにぎりを買ってみたんですよ。焼きおにぎりを大葉で挟んである。これがうまくて、そういう発見もいいなって思いました。
スズキ 楽しそうですね。
パリッコ 売ってるものを自分の好きな弁当箱に詰め替えるの、楽しいし、なんだか味もアップする気がするんですよね。
スズキ うんうん。お弁当を詰めてる時間も含めて、心の健康にもいい気がして。
パリッコ 今までコンビニなどで現地調達が望ましいと提唱してきたチェアリングですが、そういうこともなかなか気軽にできない昨今、自分たちのなかで、弁当がこんなにも輝きを増してくるとは予想外でした。しばらくはせっせと弁当を作ってベランダでチェアリング。これがマイブームになりそう。とはいえ、こうして実際にやってみた今も、じゃあそれを「みなさんもぜひ!」と全力で勧められるかというと、考えても考えても答えは出ないわけですが。
スズキ そうですね。ただ、もともと「集まろう!」っていう行為じゃなく、1人または少人数で、好きなようにやる行為だったから。
パリッコ うん。とにかく気づかないうちにストレスや不安な気持ちがたまってしまっている昨今ですからね。気をつけつつやるくらいのことは許容してほしい。
臨機応変に外の風を感じよう
スズキ できるだけ人と距離のある場所。そして、そこへ行くまでに人と接するような機会が極力ない場所を探して。
パリッコ 広い公園の中でも人の少ないスポットとか、穴場みたいな場所を探すのも楽しみのひとつですよね。
スズキ 近所の思わぬ場所にそういう穴場があるかもしれないし。逆に、広い公園でもそこにあまり人が集まって来ていたら避けるべきでしょうし。
パリッコ 臨機応変に。だけどそれこそもう、街であたらしい発見をできるかも。楽しいですよね。
スズキ 楽しいです。近所でもまだまだ通ってない道があったりするんですよ。こんなところに公園あったんだ!? とか、自分でもあります。
パリッコ さらに良きチェアリングスポットなんか見つけちゃったとき、椅子があれば座れる!
スズキ そうです。お、ちょうど椅子を持ってきてたんだっけ。と。
パリッコ 忘れてたふうをよそおって。そのためにも、椅子は小さめがより良いかも。
スズキ そうですね。そしてやっぱり、いざというときの力強い味方、ベランダ! もちろん家にベランダがないという人もいるでしょうが。
パリッコ そういう場合は、部屋の窓辺にビニールシート敷いて、窓開けてやるだけでも気分違うと思いますよ。
スズキ 外の風さえ感じられれば、もはやなんでもあり!
チェアリングの心得3か条
一人一脚、折りたたみ椅子を持参 | 街を散歩し「ここでひと休みしたいな」という場所があれば座る。 |
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手軽に気軽に無理しない | 「今日は絶対!」ではなく、あくまでチャンスがあればの姿勢で。 |
モラルやマナーはしっかり守る | 騒がない、汚さない、他人に不快感を与えないは大前提! |
取材・文・構成=パリッコ 取材・撮影=スズキナオ 撮影=松岡 誠
『散歩の達人』2020年6月号より