ジビエのイメージを根本から覆すカンガルーステーキ

美しい赤身のカンガルーステーキ。
美しい赤身のカンガルーステーキ。

『プラスアルファキッチン』のランチメニューはカレーランチのセットや定食も用意されているが、日替わりランチセット1500円として、月曜日は国産ジビエランチ、火、水、木はひつじランチ、金曜は豪州お肉ランチとして、カンガルーやワニなどを提供している。この日は豪州お肉ランチのカンガルーステーキの日だったので、それを注文した。

テーブルに置かれたのは真っ赤な断面が美しいカンガルーのステーキとお味噌汁にサラダ、シリアルとフルーツの入ったヨーグルト。

「カンガルーは体脂肪率2%以下という究極の赤身なんですよ」と星乃さん。確かに全く脂肪の見えない完全な赤身だ。

ジビエというと硬く、においにクセのあるイメージだが、お箸が沈み込むほどの柔らかさを感じる。自家製のステーキソースをかけていただいてみる。

ひと目でわかる絶妙な焼き加減。
ひと目でわかる絶妙な焼き加減。

衝撃を受けるほどの柔らかさだ。霜降りのようなとろける食感とは違うが、歯でスッと噛みきれて、それでいて赤身のしっかりとした弾力も感じられる。味は牛肉に近く、肉の力強さと柔らかさが同時に存在している。臭みも全くない。

赤ワインの風味が残るソースは淡白な赤身肉の風味とうま味をこれでもかと言うくらいに引き出してくれる。最高の焼き加減になっている表面の香ばしさと相まって、ただ珍しいだけではなく本当においしいお肉を堪能できる。

柔らかくジューシーな赤身肉とごはんという最上の組み合わせでどんどんと箸が進み、あっという間に平らげてしまう。デザートにヨーグルトもついてくるのがうれしい。

デザートにはヨーグルトも。
デザートにはヨーグルトも。

会社員経験から着想した、健康をプラスアルファするバル

ウッディな雰囲気の店内。
ウッディな雰囲気の店内。

星乃さんはオーストラリアで5年ほど過ごしたのちに、日本で9年間会社員として過ごしていた。当時は仕事が忙しく、夜はいつも遅い時間に外食をしていたが、その時間帯は居酒屋などしか空いておらず健康的とは言えない食生活だった。

「そういった経験を経て2015年にここ『プラスアルファキッチン』を開店しました。居酒屋でありながら健康的な食事もできるというコンセプトで、当時はまだジビエ感は出しておらず、タルタルソースをお豆腐で作ったチキン南蛮等を提供していました。オープンして半年後にシェフがきまして、そこから肉料理などもクオリティが出せるようになって、もともと大好きなオーストラリアのジビエ料理などを出すようになりました」と星乃さんは語る。

「今ではオーストラリアに限定せず、各地からジビエを仕入れています。ジビエを広めたいという思いもありますし、かといって下手なお肉を使うと臭みやクセが強くなってしまいますから、業者は厳選して質の高いものを使うようにしていますね。もちろん健康的においしくというコンセプトは今も一貫して持っています」

カンガルーのお肉も良質なたんぱく質にミネラルやビタミンB群、オメガ3脂肪酸も豊富で、オーストラリア政府から生活習慣病予防にも適しているとお墨付きをもらっているそうだ。

バルらしくお酒も豊富。夜はジビエで一杯楽しむお客さんたちでもりあがるという。
バルらしくお酒も豊富。夜はジビエで一杯楽しむお客さんたちでもりあがるという。

「素材だけではなく、調理にも気を配っています。ジビエは香辛料や香草で臭みを消した煮込み料理なんかが多いですがうちは基本焼きですね。カンガルーのステーキも脂がないですし火が通り過ぎるとすぐに硬くなってしまうんですね。正直現地で食べたときは硬くてあまりおいしいとは言えなかったです。うちでは表面を焼いてから低温のオーブンでじっくりと火を通しているのであの柔らかさが実現できているんです」

ジビエを広めたいという思いから、物珍しさだけではなく本当においしいジビエを提供するこだわりが感じられる。

仕事のあとに健康的な食事を!

ジビエの文字が目を引く看板とお店の外観。
ジビエの文字が目を引く看板とお店の外観。

星乃さん自身が忙しい仕事の後に立ち寄りたいと思うお店を体現した『プラスアルファキッチン』。

夜遅くても健康的な食事やおつまみと共にお酒を飲んでリラックスできる、そんなお店だ。もちろんジビエに興味があるという人たちにもうってつけ。ジビエを試してみたいけどクセがありそうで心配、という人もきっと満足できる最高のジビエが『プラスアルファキッチン』では経験できるだろう。

住所:東京都江東区門前仲町1-12-8
/営業時間:11:40~13:30LO・18:00~23:30(土・日・祝は17:00~22:30LO)/定休日:無/アクセス:地下鉄東西線・大江戸線門前仲町駅から徒歩3分

取材・文・撮影=かつの こゆき