2003年、渋谷駅周辺の開発が本格化

大勢の人でごった返す渋谷スクランブル交差点は、ある意味東京名所。
大勢の人でごった返す渋谷スクランブル交差点は、ある意味東京名所。
ハチ公と記念撮影をする外国人観光客。
ハチ公と記念撮影をする外国人観光客。

「東急文化会館」が閉館し、渋谷駅周辺の再開発が本格化したのが2003年。ただでさえ道が複雑に入り組んでいるうえに、東口方面の工事が進むにつれ、ますます迷路としての難易度を上げていった。駅もしょっちゅう出口までのルートが更新され、まるでダンジョンのような雰囲気がアップ。あれからはや20年。久しぶりに渋谷へ繰り出すと、あちこちにピッカピカのビルが立っていた。

駅舎から延びる東京メトロ銀座線の空中トンネル。その向こうにそびえる『渋谷スクランブルスクエア』が、太陽光を浴びて輝く。
駅舎から延びる東京メトロ銀座線の空中トンネル。その向こうにそびえる『渋谷スクランブルスクエア』が、太陽光を浴びて輝く。

現在、「東急文化会館」跡地にあるのは、他のビルに先駆けて2012年にオープンしていた『渋谷ヒカリエ』。8階で営業している『渋谷◯◯書店』には、壁面の本棚に加え、荷車が特設コーナーの陳列台に。

「戦後、渋谷が復興するきっかけの一つは、駅前の闇市だったそうです」と話す、管理人の横石崇さん。何度でもゼロから始められる力強い「渋谷の遺伝子」をイメージし、荷車にしたとか。

「時々、荷車を引いて外に出て、青空書店もやるんですよ」

宮下公園の高架下で見られるしりあがり寿の壁画。
宮下公園の高架下で見られるしりあがり寿の壁画。
石畳が特徴のスペイン坂。パルコから依頼された喫茶店の店主が命名した。
石畳が特徴のスペイン坂。パルコから依頼された喫茶店の店主が命名した。
『渋谷パルコ』の開店を機に、1972年、渋谷区役所通商店街が公園通りと命名。パルコはイタリア語で「公園」。
『渋谷パルコ』の開店を機に、1972年、渋谷区役所通商店街が公園通りと命名。パルコはイタリア語で「公園」。

個性と個性がぶつかり合いエネルギーを生む街

「東急百貨店」跡地では再開発工事が進む。本工事に伴い「Bunkamura」は一部施設を除いて休館中(2027年度中再開予定)。
「東急百貨店」跡地では再開発工事が進む。本工事に伴い「Bunkamura」は一部施設を除いて休館中(2027年度中再開予定)。

店内放送が響くビルのエレベーターで7階・9階へ上がると、まるで別世界。レッドカーペットならぬ、影色のシャドーカーペットを敷いた『Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下』は静かだ。ロビーで『ドゥ マゴ パリプチカフェ』のコーヒーを片手に、映画のチラシを収集。時間が合えば、今日も1本観ようかな。

公園通りからオルガン坂に折れ、さらに細道の多国籍通りへ。渋谷はあらゆる通りに名前があって想像がかき立てられる。『Good good notbad』の長谷川健さんは、「僕らはこの辺を“ウラウダガワ”(裏宇田川町)って呼んでるんですよ。浸透してないけど(笑)」。そのウラウダガワは、職種や世代、人種も異なる人が集まる「ビジネスとストリートが混ざり合う街」。

古い景色が残る渋谷百軒店。
古い景色が残る渋谷百軒店。
ランドマーク的名店の、坂道に挟まれた鋭角の建物が目を引く。
ランドマーク的名店の、坂道に挟まれた鋭角の建物が目を引く。
渋谷駅東口地下広場は、渋谷川の下。写真右側の通路の上、広告のある辺りに川が流れている。
渋谷駅東口地下広場は、渋谷川の下。写真右側の通路の上、広告のある辺りに川が流れている。
2020年、MIYASHITA PARKとして生まれ変わった宮下公園。
2020年、MIYASHITA PARKとして生まれ変わった宮下公園。

桜丘、渋谷東をぐるっと回り、また宮益坂へ。『たつろー 宮益坂本店』で特大のシロにかじり付き、生レモンサワー(杜の蔵 吟香露)を煽ると、うまみと爽やかさが爆発して一気に夢見心地。店長の佐橋シンゴさんが言うには「表参道からヒカリエにアクセスする人が増えて客層が変わった」らしく、昔からいろんな人がいる街だったけど、今後もっとそうなるのね。面白いね。なんか力が湧いてきた気がするけど、酔いが回ったのかな?

小体な飲み屋が軒を連ねる渋谷のんべい横丁は、再開発の影響で縮小された。
小体な飲み屋が軒を連ねる渋谷のんべい横丁は、再開発の影響で縮小された。
渋谷生まれ渋谷育ち、渋谷在住。毎日のように渋谷の街を歩き、Twitterで渋谷の魅力を発信する「渋谷散歩の達人」井上順が、お気に入りスポットをご案内!今回訪れたのは、2023年1月31日をもって営業を終了する東急百貨店本店だ。文=井上順
渋谷生まれ渋谷育ち、渋谷在住。毎日のように渋谷の街を歩き、Twitterで渋谷の魅力を発信し、朝ドラ『らんまん』では弘法湯(こうぼうのゆ)の利権者役を務めた「渋谷散歩の達人」井上順が、お気に入りスポットをご案内!今回は、大規模再開発の進む渋谷の街で、昭和の雰囲気を残している不思議なエリア「百軒店(ひゃっけんだな)」を散策。この街で昭和6年(1931)から営業を続ける老舗『たるや』を訪ね、百軒店の歴史とお店の歩みを聞いてみた。文=井上順
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渋谷二丁目⇒神南

『渋谷○○書店』せめぎ合う、約100人分の「偏愛」

入り口の「推し棚」には、各店が1冊ずつ選んだイチオシが。
入り口の「推し棚」には、各店が1冊ずつ選んだイチオシが。
快適すぎる半個室の読書スペース。
快適すぎる半個室の読書スペース。
「スツールに座って会話するのもいい」と『渋谷◯◯書店』の管理人・横石崇さん(右)。この日の店番は『sumi book room』の店主・sumiさん。
「スツールに座って会話するのもいい」と『渋谷◯◯書店』の管理人・横石崇さん(右)。この日の店番は『sumi book room』の店主・sumiさん。
sumiさんの手作りのZINEが気になる!
sumiさんの手作りのZINEが気になる!

棚ごとに異なる店主がいるシェア型書店。選書のテーマは「偏愛」で、各店の品揃えからあるじの熱気が伝わってくる。ジャンルは文芸、ファッション、演劇、歴史、思想など多岐にわたり、その多様性は渋谷そのもの。

・12:00~18:00、不定休。
・X(旧Twitter):Shibuya_Books

『Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下』エレベーターを降りると別世界

柔らかい照明が印象的なロビー。
柔らかい照明が印象的なロビー。
タルトタタン500円は『ドゥマゴ パリ』の味。ホットコーヒーLとセットで900円。
タルトタタン500円は『ドゥマゴ パリ』の味。ホットコーヒーLとセットで900円。

Bunkamuraル・シネマが長期休館に入り、「渋谷TOEI」跡地に移転。4Kや、今では珍しい35mmフィルムも上映できる設備を入れた。元々の内装を活かしたレトロな雰囲気にうっとり。「Bunkamura」の名店『ドゥ マゴ パリ』も「プチカフェ」として登場。

・X(旧Twitter):BunkamuraCinema

日々、街の表情が大きく変化する東京。2006年、私はふと思い立って、消えていく風景を写真に収めることにしました。「消えたものはもう戻らない。みんながこれを見て懐かしく感じてくれたらうれしいな」とそれくらいの気持ちで始めた趣味でした。そんな、東京から消えていった風景を集めた「東京さよならアルバム」。今回は第19弾として、2022年10月~2023年1月に消えていった風景を紹介します。 写真・文=齋藤 薫

『東京都渋谷公園通りギャラリー』ふらっと立ち寄れるアート空間

※写真のプログラムは既に終了。
※写真のプログラムは既に終了。

通りに面した交流スペースでは時にワークショップが開かれ、偶然訪れた観光客がアートを楽しむ場面も。奥の展示スペースでは、2023年12月24日まで「アール・ブリュット2023巡回展」を開催。入場無料。

・11:00~19:00、月休(祝日の場合は翌平日休・展示替え期間休)。
・☎03-5422-3151

宇田川町⇒神南

『水曜日の花屋』「循環」をテーマに街の風景を彩る

北谷公園。定期開催されるフリーマーケットに『水曜日の花屋』も出店する。
北谷公園。定期開催されるフリーマーケットに『水曜日の花屋』も出店する。

コワーキングサロンの一角で週1日だけ開店。売れ残った花を捨てる「フラワーロス」をなくすため、商品は厳選し、万が一売れ残ったらドライフラワーやワークショップに「循環」する。1本から購入でき、長持ちのコツを聞けるのもうれしい。

・13:00~19:00、水のみ営業。
・Instagram:suiyoubi_no_hanaya

『Good good not bad』毎日通いたくなる人間交差点

オルガン坂から分岐する無国籍通りには老舗クラブ『Organ bar』もある。
オルガン坂から分岐する無国籍通りには老舗クラブ『Organ bar』もある。

無国籍通りのコーヒースタンド。「飲みやすいので毎日でもOK」とオーナーの長谷川健さん。コクのある中深煎りを求めてやってきた若者、ビジネスマン、外国人観光客など、さまざまな人がここで交わる。ラテ(Large)630円。

・9:00~22:00(日は~20:00)、無休。
・☎03-6388-1286

鶯谷町⇒南平台⇒道玄坂

『南平台食堂』ボリューム満点の定食に感服

味噌汁は+150円で豚汁に変更できます。
味噌汁は+150円で豚汁に変更できます。

ランチの定食は焼き魚、刺し身、唐揚げ、油淋鶏など種類豊富で、人気は鮭のハラス焼き1300円。豊洲から仕入れている肉厚なハラスは、口に入れると脂がちゅるっ、甘みがじわり。箸が止まらない。

・11:30~15:00・18:00~23:00、土・日・祝休。
・☎03-6416-5088

『RAILSIDE COFFEE & VINTAGE』ヴィンテージの味わいに包まれる

古材でリノベーションした店内に10数軒の古着屋が出店。古着から洋服をリプロダクトするアトリエも置く。線路が近く、「窓から電車が見えます!」とスタッフの久保実希子さんと高田俊平さん。アメリカーノ500円。

・12:00~20:00、無休。
・Instagram:railside_coffeevintage

渋谷一丁目⇒東一丁目

『ULTRA SHIBUYA』アイスが溶けるまで音楽談義

独立系レコード会社のウルトラ・ヴァイヴが営むショップ。自社商品や中古レコードなど、ジャズやソウル、歌謡曲を中心に揃える。ソファでクリームソーダ750円を食べ、ジュークボックスの懐メロを聴くひとときは格別(1曲100円)。

・12:00~20:00、木休。
・☎03-5485-2302

『たつろー 宮益坂本店』右手に串、左手にグラスを

「味付けは、塩、たれ、味噌だれの3種類だよ!」
「味付けは、塩、たれ、味噌だれの3種類だよ!」

目当ては、うまみ、甘みがあふれるフレッシュなやきとん1本190円~。レバーは群馬の契約農家、他は芝浦の食肉センターから仕入れる。仕込みに手間をかけ、「炭と会話しながら」焼くのがこだわり。一品料理も充実。生レモンサワー540円。

・16:00~24:00、不定休。
・☎03-6452-6206

取材・文=信藤舞子 撮影=逢坂聡
『散歩の達人』2023年11月号より

大規模な再開発が進められ、街の様相が日々変化する渋谷。新しい商業ビルも続々と誕生し、新店が増え続ける一方で、老舗が残るエリアもまだまだ存在する。料理のジャンルも多彩で、あれこれ迷うのも楽しい。おしゃれなカフェ飯から昔ながらの町中華まで、厳選した13店をご紹介。
100年に1度とも言われる大規模な再開発が進められている渋谷。高層ビルが立て続けに竣工し、新しいお店がどんどん誕生する一方で、昔ながらの姿そのままで営業を続けるお店も多い。ロボットと遊べる近未来のカフェからクラシカルな純喫茶まで、11店をご紹介。
渋谷生まれ渋谷育ち、渋谷在住。毎日のように渋谷の街を歩き、X(旧 Twitter)で渋谷の魅力を発信する「渋谷散歩の達人」井上順が、お気に入りスポットをご案内!今回は、渋谷のシンボルともいえる「忠犬ハチ公像」と、そのモデルとなった秋田犬「ハチ」の意外に知られていない“本当の物語”を紹介したい。文=井上順