川越一番街には相変わらずたくさんの観光客が行き交い、人気店は行列をなしている。
一見変わってないようだけど、あちこちで蔵の建て替え工事が行われていて、歴史ある洋館建築で知られる埼玉りそな銀行川越支店も改装中。2024年春に生まれ変わる予定で、少なからず街の雰囲気に変化をもたらしそうだ。
町並みに溶け込んだ新しい建物もちらほら
その一つが、和菓子の老舗『亀屋』が立ち上げた『kashichi』。以前あった建物は、亀屋の寮として使われていた時代もあったそう。白い大きな暖簾(のれん)が目を引く『MINAMIMACHI COFFEE』も、2022年に蔵の建て替えを機に誕生した。今時のデザインなのに違和感なく蔵造りの町並みに溶け込んでいるのは、「川越には、町並み保存のために結成された川越町並み委員会がルールを設けていて、新店舗がデザインや内容を審議されるんです」と広報の高橋勇気さんが教えてくれた。「細かい要望に対応するのは大変でしたが、町並みを維持するにはそれくらいの努力が必要なんですよね」と振り返る。
また、ほかの観光地と同様に川越もコロナ禍によって観光客が激減したが、それを乗り越えるための変化がいい方向に動いている。土産物をメインにしていた『川越角屋酒店』がリニューアルして地元の人たちがひと息つける場所に。テイクアウトで始めたカレーが評判になってお店をもつことになった『タベカレー』は、今や遠方からこの店目掛けて訪れる客もいる人気店に。実は、店主の田部さんは2017年に川越に新風を吹き込んだ居酒屋『すずのや』出身。一番街の交差点近くに立つ『コの字酒場goen』も居心地が良くていい店だなぁと思ったら、店主の山本コータさんも元『すずのや』。評判の高い焼き菓子店『annon』も『すずのや』仲間だとか。新たに生まれた場所が時間を経て町全体の原動力となっているのだ。
「川越にはいろんな顔があるから、チャレンジしやすいですね」と話していた田部さん。確かにその通りだ。本川越駅や川越駅周辺は沿線の住民が買い物や食事に訪れる繁華街があり、少し足を延ばせば観光客は皆無の住宅地で日常の時間が流れていて、そのさらに先には畑が広がる田舎の風景を目にする。多彩な面があるからこそいろんな種がまかれ、次々と芽を出していくことで、どんどんおもしろさが増していく。「川越は一度行ったからもういいや」なんて思っていたらもったいない!
『コの字酒場goen』お客さん同士や街の酒場をつなぐ架け橋に
『すずのや』、『ゲストハウスちゃぶだい』などを経て2023年4月に独立。店主の山本コータさんのこだわりは、向かいの人と乾杯できる距離のコの字カウンター。いつの間にかお客さん同士で盛り上がっていることも。サク飲みから締めのご飯までOK。
・14:00~22:00、火休(不定休あり)。
・☎049-292-1226
『萩原商店』川越B級グルメの太麺焼きそばが進化
焼きそば居酒屋を営む店主の萩原秀樹さん(中央)が、食べ歩きできるように羽根つき三角焼きそば400円を考案。薄焼き卵とチーズで焼きそばを挟んで焼き上げる。実家の製麺所の特注麺を使い、生麺からゆでて作るのがこだわり。
・10:30~16:00ごろ、不定休。
・Instagram:hagiwara_shoten
「丹徳庭園」歴史ある建物や庭園をひとり占め
川越で明治2年(1869)に材木商を創業した鈴木徳次郎が明治34年(1901)に建てた離れを一般公開。抹茶体験は1210円(和三盆作りは+1210円)。予約がないときは枯山水が美しい日本庭園の見学のみも可(無料)。
・11:00~15:00(要予約)、火・水休(10月以降は木も休み)。
・☎049-224-9115
『kashichi』亀屋の職人が和菓子作りを指南
創業240年を迎えた『亀屋』が、今までの感謝の気持ちを込めた新店舗。本店とは異なる月替わりの生菓子を提案するほか、熟練職人による和菓子作り体験を実施(2200円、土・日・祝のみ、予約制)。
・10:30~17:00(土・日・祝は10:00~)、不定休。
・☎049-228-3320
・Instagram:kashichi_kawagoe
『ボンボンニッキ』ふらっと寄って楽しい気分に
住宅地の一軒家を改装し、2022年10月オープン。店主の深澤麻希子さんが好きなインドやネパールなど世界各国の手仕事の雑貨や天然素材の洋服が並ぶ。絵も得意で、愛らしいナマステ人形は深澤さんが旅で出会った人を描いたオリジナル。
・10:00~18:00、水休。
・☎049-250-9002
『MINAMIMACHI COFFEE』一番街でひと息つくならここ!
ひと休みのお供は、最新のスチームコンベクションオーブンで焼き上げた焼き芋。しっとり、ねっとり、ほくほくの3種のほか、表面を焦がしたブリュレも。奥には広々としたイートインスペースがあり、壁に描かれた川越の観光名所のイラストにも注目!
・9:00~19:00、無休。
・☎049-227-6727
『めだか屋喜楽川越店』珍しい改良めだかをお土産に
埼玉県鶴ヶ島市のめだか専門店が川越に進出。約100種類の改良めだかをめだかすくいで楽しめる。1回500円で、5匹まで持ち帰りOK。すくえなくても、3匹好きなめだかをもらえる。約30種類の個別販売もあり。
・13:00~18:00、火休(不定休あり)。
・Instagram:medaka_kiraku
『タベカレー』ミールスと日本酒の新世界がここから始まる
人気ワインバー『コポリ』の昼を間借り中。店主の田部さんが夢中になったミールス(南インドの定食)と燗酒の組み合わせを提案。希少な日本酒が多く、カレー店とは思えない品揃えだ。日本酒 半合500円~、一合900円~。
・12:00~14:00LO(土は11:30~、日は18:00~21:30LO)、火・水休。
「川越八幡宮」足形に足を合わせて元気をもらおう
足腰の治療法を伝えた神様を祀る民部稲荷神社が鎮座し、マラソン神社としてランナーに有名。2023年8月に設置された埼玉を代表するプロランナー・川内優輝選手の足形記念石は、宮司の榊原祥光さんとラン友の縁で実現したとか。
・拝観自由。
・☎049-222-1396(9:00~17:00)
『川越角屋酒店 クレアモール店』快適すぎて一杯では終われない
観光客も地元民も気軽に来られるように試飲スペースを設置。自然派ワイン5種類のほか、クラフトビールの樽生が約10種類も。角打ちとは思えないほど広々として、ここだけで満足できそう。
・10:00~22:00(月・火は~21:00、2023年10月以降は変更予定)、無休。
・☎049-223-7001
取材・文=井島加恵 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2023年10月号より