ヨーロッパのダイナーをイメージした空間

下北沢駅から歩くこと17分。三軒茶屋駅、池ノ上駅からも同じくらいの位置にある、静かな住宅街に店を構えるのが『YELLOW CAFE』。駅からやや離れた立地にありながら、近隣住人だけではなく遠方からもお客が訪れる人気のカフェだ。

高さのあるガラス張りのドアは開放感があり、外からでも店内の様子がわかるのでふらっと気軽に入ることができる。

店内に一歩入ると、海外のカフェを連想させるハイセンスな空間と、スタッフの優しい笑顔が出迎えてくれる。

この店のオーナーは、飲食店や美容室などのデザインを手掛ける建築デザイン会社『877inc.』のマネージャー(飲食事業部)佐々木星也さん。同社の初めての試みとして飲食店をオープンすることになり、飲食業界での経験を持っていた佐々木さんが立ち上げから携わった。

「空間づくりで大事にしたのは、開放的で大きな扉があること明るい光が入って風通しがいい空間にすることで、ここに来た人たちの気の流れが良くなったり、気持ちよく過ごしてもらえたらいいなと思いました。店名の“YELLOW”も、明るい気持ちになってほしいというイメージからつけました」と佐々木さん。

壁に溶け込むようなデザインの本棚も、自社で製作。たまにデザインを気に入ったお客から「自宅にもほしい」と依頼されることもあるのだとか。
壁に溶け込むようなデザインの本棚も、自社で製作。たまにデザインを気に入ったお客から「自宅にもほしい」と依頼されることもあるのだとか。

店づくりのコンセプトは“ヨーロッパにあるアメリカンダイナー”。趣のあるアンティークやポップなアートが混ざり合った空間は、スタイリッシュでありながらラフさも感じられる。

2017年にオープンして以来、コロナ禍にはテイクアウト用のカウンタースタイルにするなど、店内のレイアウトをたびたび変更している。環境の変化に合わせて柔軟に対応できるのも、自社でデザインをしている同店ならではだ。

さりげなく使われている椅子は、フランスのアンティーク。一つひとつのインテリアに注目するのも楽しい。
さりげなく使われている椅子は、フランスのアンティーク。一つひとつのインテリアに注目するのも楽しい。

名物は店内で焼き上げるクロワッサンサンド

メニューに至っても店のコンセプトと同様、アメリカンなカフェメニューをベースにしながら、ヨーロッパの伝統的な食材を使用するなど多彩なエッセンスを掛け合わせ、定番の中にこだわりを詰め込んでいる。店の顔と言えるコーヒーは、イタリアのエスプレッソ文化にフォーカス。知り合いの焙煎士とともにブレンドを考え、時期や季節によってブレンドの比率や焙煎度合いを調整しているそうだ。

カフェラテはホット、アイスともにレギュラーサイズ550円。
カフェラテはホット、アイスともにレギュラーサイズ550円。

この日は、店で人気のカフェラテをオーダーしてみた。ホット、アイスで種類の異なるカップがかわいらしい。コーヒーの深みとミルクのバランスがよく、気持ちを安らげてくれる味わいだ。ホットはラテアートがあしらわれており、目にも楽しい。

写真手前がハム、チーズ、ルッコラのサンドイッチ650円。奥がエッグサンドイッチ600円。
写真手前がハム、チーズ、ルッコラのサンドイッチ650円。奥がエッグサンドイッチ600円。

“コーヒーに合う”という視点で考えられたフードメニューのなかで、名物といえるのがサンドイッチだ。サンドイッチといっても、使用するのは食パンではなくクロワッサンというヨーロッパスタイル。じっくりと店内で焼き上げるクロワッサンは、サクッとした生地の食感とバターの香りを存分に感じられる。生地そのものの味わいが、具材のボリュームに負けていない。

ほかにも、スイーツ系のサンドイッチやシンプルなクロワッサン300円も販売しているので、朝食やデザートなど、日々のシーンに合わせて味わいたい。

毎日会いたくなる元気で気さくなスタッフ

写真左がバリスタの兼松幸史朗さん、右が副店長の内海渚さん。
写真左がバリスタの兼松幸史朗さん、右が副店長の内海渚さん。

この店のもうひとつの特徴が、ほど良い距離感が心地よい、元気で明るいスタッフたち。スタッフは飲食業界の経験者に偏らず、さまざまな経歴を持つ人たちが集まっているという。だからこそ、フラットな視点で自由な店づくりをおこなえるのだ。

「お客様はデイリーに利用してくださる方が多いので、コミュニケーションを大切にしています。常連さんだけではなく、初めて来店してくださった方にも同じようにコミュニケーションすることを心掛けています」

日々の何気ないコミュニケーションは、意外にも気持ちを高めてくれるもの。そんな店の雰囲気もあってか、同店には近所の小学生からお年寄り、遠方から足を運ぶ若者まで、老若男女さまざまな人たちが訪れる。

「僕らの店がこの場所にあり続けることで、地域に住んでいる人たちの楽しみになれたらいいなと思っています。ライフスタイルに寄り添える店づくりを心掛けることで、お仕事へ行く前に立ち寄ってスイッチを入れてもらったり、スタッフとコミュニケーションを取ってコーヒーを飲むことで“今日も頑張ろう”と思ってもらえたり。大それたことではないですが、これからも、そんな些細なことを続けていけたらいいなと思います」と笑顔で話す佐々木さん。

明るく軽やかな空気をまとう『YELLOW CAFE』は、一度訪れれば、きっと日常のなかでスイッチを切り替えてくれる貴重な場所になるだろう。

住所:東京都世田谷区代沢4-17-19 Nビル/営業時間:8:00~18:00/定休日:木/アクセス:小田急電鉄小田急線・京王電鉄井の頭線下北沢駅から徒歩17分

取材・文・撮影=稲垣恵美