横浜市庁舎と商業施設が合体した新スポット
馬車道駅は、赤レンガ倉庫や県庁舎など、横浜を代表する歴史的建造物が立つみなとみらい地区への最寄り駅。駅構内はレンガを職人が手作業で積んで仕上げたレンガ壁がノスタルジックな雰囲気を醸しだし、降り立つだけでもワクワクしてくる。
横浜市庁舎方面への矢印に従って進むと、地下から横浜市庁舎に直結しているので便利だ。地下からエスカレーターで上がると吹き抜けのアトリウムが広がり、休憩や談笑する人の姿が目立つ。週末にはイベントも行われ、家族連れでにぎわうのだそうだ。
庁舎は横浜港へと注ぐ大岡川沿いに立ち、JR・市営地下鉄桜木町駅へも徒歩3分という好立地に位置するため、庁舎や「ラクシス フロント」の利用者に限らず、通り道にもなっている。
桜木町駅へと続くデッキは、みなとみらいの眺望が素晴らしく、海風を感じながら散策も楽しめるので、ふらりと足を運ぶのも楽しみの一つだ。
未購入本が持ち込み可能!?丸善初業態のブック&カフェ
『HAMARU ラクシス フロント店』は2階フロアの桜木町駅へと続くデッキの出入口近くにある。店頭に置かれた看板には、おいしそうな料理写真が飾られ、本を選ぶより真っ先に、何を食べようか考えてしまった。とはいえ、まずは書店の方へと足を運ぶことにした。
と言うのも、実は併設のカフェには一部書籍に限り2点まで未購入の本が持ち込み可能なのだ! 気になる本も持ち込み対象のものであれば、食事や喫茶を楽しみながら試し読みができるというわけだ。これはうれしい!
書店には、書籍7000点、文具雑貨1万3000点の計2万アイテムを取りそろえている。丸善ゆかりのオリジナルグッズをはじめ、セレクトされた雑貨や書籍が並び、市の職員だけでなく、週末に多く訪れるという親子連れに向けたアイテムも充実している。
広くゆとりのある空間で、本と料理をじっくり
気になっていた本を選び、カフェへと移動した。お腹も空いているし、何を食べようかと迷いながらも、ここはやはり丸善の創業者・早矢仕(はやし)有的(ゆうてき)が考案したといわれる「早矢仕ライス」をチョイス。
カフェには、ソファのテーブル席や眺めのよいカウンター席などが配され、広くゆったりした空間で、本の試し読みと食事でゆるりとした時間を過ごすことができそうだ。大テーブルを囲むように本や雑貨類も並んでいるので目移りしてしまう。
今回お店を案内してくれたのは、このお店の責任者・半田純一さん。
「丸善系列でもカフェを併設している店舗はありますが、同じ店名でカフェと一体となった店舗はここが初となります。庁舎には約6000人もの職員が働いておりますので、利用者の多くは市の職員の方ですが、平日の朝は近隣の年配の方、週末にはご家族連れの姿をお見かけします」と話します。
カフェメニューは、今回注文した早矢仕ライスのほかに、カレーや横浜ナポリタン、デザート類まで幅広く用意している。
「丸善らしいメニューを心がけておりまして、梶井基次郎の『檸檬』にちなんでレモンを使ったメニューや横浜ナポリタンのような、この地ならではのものを楽しんでいただけます」と続ける。
併設のカフェという位置づけではなく、本格的な味を楽しんでもえるラインナップとなっており、料理目当ての客も多いという。
味も本格派の早矢仕ライスやドリンク類に感動
早矢仕ライスが目の前に運ばれてくると、なんともいい香りがする。たまらず一口食べてみれば、甘さとコクが相まって、贅沢な濃厚さだ。デミグラスソースにチャツネやカラメルなどを加えて、濃く、甘めに仕上げているのだそうだ。大きめのごはん茶碗1杯分ぐらいだろうか、ちょっと硬めに炊かれたごはんの量もちょうどよく、ソースとのバランスも抜群だ。
合わせて注文した檸檬スカッシュは、カットレモンを凍らせて氷代わりに使っている。溶けていくほどレモンの果汁が増し、レモン感をしっかり楽しめる爽やかな1杯だ。
今回注文した以外にも、こだわりのブレンドコーヒー380円をはじめ、やわらかでしっとりとした生地がおいしい4種類の味があるシフォンケーキ各600円などもおすすめだ。
本を読むことに夢中になっているうちに外が薄暗くなっていた。静かにゆったりと過ごせるからつい長居してしまい、時間の経過も忘れてしまいそう。本選びに時間をかけられる贅沢さが堪能できる穴場的なカフェは、横浜方面へ出かけた際にはぜひ一度立ち寄ってみたい。
取材・文・撮影=千葉香苗 構成=アド・グリーン