日暮里駅の東口を出て日暮里繊維街を抜けると、閑静な住宅地が始まり、その中に『ひぐらしガーデン』がある。
「もともとこの一帯は町工場の集積地で、我が社もフェルトを製造していました。工場を閉めた後、大好きな地元の魅力を高めたいと思い、人々が足を運べるスポットを跡地に作ったんです」と代表の佐藤雅一さん。月2回の「ちいさなおはなしかい」(参加自由)は子供たちに人気。『ひぐらしベーカリー』で好きなパンを購入し、日暮里南公園でピクニックと洒落れ込むのもおすすめだ。
複合施設『上野桜木あたり』は、上野と谷中、日暮里の境界エリアにあり、あちこちから人がやってくる。レンタルスペースのお茶会やヨガ、路地でのマルシェに集うのも、地元住民、遠方から来る人などさまざまだ。敷地内の『谷中ビアホール』は地元のビールメーカー「AUGUST BEER」のクラフトビールを味わえ、なかでも「谷中ビール」シリーズを味わえるのはここだけ。3月14日から20樽限定で5周年記念のシーズナルビールが登場するので、ぜひ昼間から乾杯したいなあ!
START 日暮里駅
01 ひぐらしガーデン
フェルト工場跡に立つ地域の安息地
大正6年(1917)創業の地元企業が自社工場の跡地に築いた憩いの場。庭を囲んで立つ凹型店舗にパン屋、親子のための本屋が入る。もちろんおひとり様、友達同士、観光客など老若男女ウェルカム! コーヒー330円、チーズカレーパン253円。
02 日暮里南公園
大の大人にも走り回りたい時はある
子供たちが元気よく走り回れる広さがあり、休日ともなれば朝からにぎやか。芝生に敷物を広げてピクニックするのもいい。オブジェのような遊具や噴水広場では、大人もつい童心に帰る。
04 上野桜木あたり
戦前の民家をミニ複合施設に再利用
古い木造の三軒家にパン屋、塩とオリーブオイルの店、ビアホール、多目的のレンタルスペースが軒を連ねる。パン屋では、ノルウェーや北欧諸国でよく食べられているサワードゥブレッド ハーフをゲット。次の店では各国のオリーブオイルを試食し、お気に入りを探そう。ビアホールでは、テイスティングセット1400円、地ビール「谷中ビール」235ml 660円~で乾杯! 路地ではマルシェなどの催しも。
一人で散歩していても人の温もりを感じる
界隈は、岐阜に関するトークショーや食事会を催す『岐阜ホール』、和菓子作りを体験できる『ギャラリー大久保』をはじめ、あちこち気になるスポットだらけ。なお、『ギャラリー大久保』の茶室は普通に喫茶利用も可能だ(抹茶と和菓子のセット1100円)。骨董の茶碗で飲めるのは、骨董店ならでは。偶然隣り合った人と「あなたがお使いの器も素敵」なんて会話につながることも珍しくない。
歩き回ってかいた汗は『ふくの湯』で流す。常連客が声をかけ合うシーンは、まさに古きよき日本。ユニークなペンキ絵が名物の個性派デザイナーズ銭湯でありつつ、清潔で居心地がいいとすこぶる評判が高い。湯船に舞台を作れる設計も興味深いポイントだ。ひと風呂浴びた後は『西日暮里スクランブル』の『SPICESH』でスパイス注入! 締めのデトックスもでき、明日も頑張れそう。
03 岐阜ホール
岐阜県民も他県民もお気軽にどうぞ!
工芸品や食品など岐阜の良品がずらり。岐阜が本拠地のデザイン会社が運営し、イベントも頻繁に開かれる。2019年にオープンして1年弱、岐阜にゆかりのない学生にも輪が広がり、新たな文化発信地になる予感。
05 ギャラリー大久保
美術館級の器で本格的な茶事を体験
事前に連絡すれば1名から和菓子作り体験3800円が可能。先生のお点前付きで、自作の和菓子を抹茶と一緒に味わえる。普通にお茶をするのも歓迎。
06 青鶴茶舗
フランス人店主が営む日本茶の専門店
店主フローラン・ヴェーグさんは日本茶に魅せられ、フランス人で初めてインストラクターの資格を取得。シングルオリジンの茶葉が60~70種揃い、試飲もできる。毎月、新入荷あり。
07 花兆
まるで本物! フレスコ盆栽の世界
よみせ通りを歩いていると、小さくてかわいい盆栽に目が留まる。フレスコ盆栽といい、蝋加工した耐水性紙で作った造花の作品だ。近寄っても本物と見紛う精巧さで、店主の手作り。心が和む。
08 ふくの湯
神様が見守るパワースポット銭湯
館内はきれいで快適。壁の絵にちなみ「弁財天の湯」「大黒天の湯」に分かれ、日によって男女が入れ替わる。ペンキ絵師の丸山清人・中島盛夫両氏の富士山も圧巻。
09 西日暮里駅前歩道橋
ホームの人と目が合うかも!?
日没後、明かりの灯った西日暮里駅のホームが見えるビュースポット。
10 エキラボ niri
地域のスキルを人々に共有する
2019年、西日暮里駅の構内にオープンしたコミュニティスペース。定期的に行われる「まちの教室 KLASS」では、社交ダンス教室や地元の主婦による味噌作り教室が人気。イベントスケジュールはHPにて確認。
11 西日暮里スクランブル
人々が盛んに往来し、交流する空間
2019年、西日暮里駅脇にオープン。飲食店や八百屋、本屋、作家の工房兼ショップが肩を寄せ合うように同居する。本屋は31㎝角の本棚を1オーナーにつき1箱借りることができ、「悪役」「団地」のようにぐっと絞ったテーマがおもしろい。立ち食いカレーの店では9種のスパイスを駆使したカレー600円~が評判。カルダモンやコリアンダーが香り、恍惚。
GOAL 西日暮里駅
取材・文=信藤舞子 撮影=金井塚太郎
『散歩の達人』2020年4月号より