柏の若い世代の店主は横のつながりも深い
柏、特にウラカシの個人店が面白い。そう聞き路地を彷徨(さまよ)うけど裏の柏ってどこ?
「柏3丁目辺りを指すことが多いけど、明確なエリア分けはありません。ウラカシ百年会加盟店も場所はばらばら。にぎわってる場所に出店、ではなく自分たちでにぎわいを作るという気概です。目指すはポートランド!」と2代目会長の田中庸介さん。流行に関係なく好きなものを突き詰める店が多く、『刺繍 縫-nui-』は最たる例。代表の吉岡亮兵さんいわく「世界一の刺繍屋になりたい。『柏から世界へ』っていうあの有名なフレーズ、大好きなんです」。
柏の若い世代の店主は横のつながりも深い。肉汁あふれる自家製ソーセージとクラフトビールが人気の『THE LIFE』は、満席の場合おすすめの他店を紹介してあげるそう。
眼鏡の世界で我が道をいくのが『Brille』。フレームのオーダーメイドも受け付けており、最近は「天国に連れていく一本」という注文も!
百貨店での店長経験もある代表の岩山靖季さんは「百貨店文化が土壌にあるから、路面文化も際立つ。ともに切磋琢磨していきたいです」。
百貨店をつなぐダブルデッキでは新たな試みをスタート。植樹やベンチ設置で“歩く”から“憩う”場に。
「“使う”まで意識し、市民参加デイという催しも企画中。柏駅周辺に広い公園がないので、ダブルデッキは貴重な広場なんです」と柏アーバンデザインセンターの安藤哲也さん。
もうすぐ田に水も入る。牧歌的風景もまた実に柏
ダブルデッキからバスやレンタサイクルで北へ20〜30分。『布施弁天東海寺』に着くと、本堂裏手からは田んぼに利根川の土手、その奥に筑波山の双耳峰(そうじほう)が仰ぎ見えた。
「利根川の水運で人や物が行き交い、布施一帯は栄えました。弁天様に芸能の御利益を求め、向島から多くの芸者さんが参拝に来たそうです」と住職の下村法之さん。『街かどcafeYADOYA』は、かつて参拝客を泊めた旅館の宴会場を改装し、開業。店主の山崎寛史さんは「この辺は四季が彩り豊か。春はあけぼの山農業公園のさくら山で昼寝したい!」。
のどかさでは、柏の“南の田舎”、沼南地区も負けていない。
「最初はキーンと聞こえるほど静かで寂しかったけど、地元の人が温かく、暮らすほどに好きになりました」と『harumien』の柿澤友美さん。この和やかな空気に惹かれ、弁当持参でゆっくり過ごす客もいるそう。
緑豊かな沼南の県道282号付近には、キャンプ場が4つも点在。2022年開業の『ogawa GRAND lodgeFIELD』の小室徳之さんは「手賀沼と下手賀沼に挟まれた気持ちのいい自然が残る場所。野うさぎも棲んでるんです」と笑う。ご近所の『薪のPEN』から薪を仕入れていると聞き、焚火を楽しむことに。遠火でソーセージを焼くと、木の香りがワイルドで旨い。駅前のおしゃれソーセージと、野趣あふれる焚き火ソーセージと――。柏の懐は、想像以上に深い。
【駅前エリア】MYワールドを突き進み、目指せポートランド
st. valley house
山着でおしゃれに街を縦走
長くアパレル畑にいた濱谷さんは、トレランや登山にハマり、アウトドアと街をシームレスでつなぐセレクトショップを開業。ウクライナのライトウェイや日本のリッジマウンテンなど、デザイン性が高くギアとしてとがっているものが並ぶ。
・12:00~20:00、火・水休。
・☎04-7161-2400
刺繍 縫 -nui-
針で彩り針で躍らす DJ 刺繡屋さん
プロDJの吉岡さんが「刺繍で世界一に!」と開業。Taguchiのスピーカーから美音を流しつつ、試し縫いを重ね、細い糸を巧みに操り表現された繊細な曲線やグラデーションは圧巻。一般も注文できるが要予約。見学のみは基本自由。
・11:00~19:00、不定休。
・☎04-7197-4774
柏諏訪神社
ハシビロコウ御守で何事にも動じぬ心を
鎌倉時代創建と伝わる柏の鎮守。権禰宜(ごんねぎ)の友野京さんの鳥好きが高じ、ハシビロコウやフクロウ(シベリアワシミミズク)の御守500円~や御朱印700円の授与を開始。隣接の自宅庭ではフクロウも飼育!
・社務所9:00~17:00、境内自由。
・☎04-7167-8234
Brille(ブリレ)
天国へ連れていく一本とオーダーするお客も
「眼鏡は人の生き様を写すモノ」という思いから、じっくりと時間をかけ、その人に合う一本をセレクト。千葉県では希少なANNE ET VALENTINほか美しい意匠の眼鏡が並ぶ。40型30色から選ぶセミオーダーメイドも。
・12:00~20:00、水と第1・3火休。
・☎04-7161-1250
THE LIFE
クラフトビールのタップ数は柏随一
15タップも揃うクラフトビールや、柏野菜が主役のランチのサラダバーを目当てに老若男女が憩う。ビールは『BEER BRAIN』や『伊勢角屋麦酒』など国内が約6割。3種飲み比べ1580円~。自家製ソーセージ3種盛合せ2000円。
・11:30~22:00LO(フード)、無休。
・☎04-7128-7724
【布施エリア】大地から放たれた春の粒子がほわほわと舞う
布施弁天 東海寺
のどかな田園風景に現れる巨大寺院建築
大同2年(807)開山。朱塗りの本堂、龍宮造りの楼門、さらには鐘楼も県指定有形文化財。「鐘楼は八角形の基壇の上に回廊、その上に干支の彫刻を施した柱を十二角形になるように配した珍しい造りです」と住職。
・御守授与所は9:00~16:30、無休。
・☎04-7131-7317
街かどcafe YADOYA
築約120年の和空間でクロアチア料理?
料理担当の山崎さんは元クロアチア在住。透かし彫りの欄間や丸窓が趣深い空間で、サルマ(ザワークラウト入りロールキャベツ)1400円など現地郷土料理を味わえる。写真は、自家栽培の野菜も入る7種のお惣菜ランチ1600円。
・11:00~16:00(日は~17:00)・夜は前日までに要予約で18:00~22:00、不定休。
・☎04-7161-5144
あけぼの山農業公園
自然豊かで時の流れがスローな布施の象徴
約20haの広大な敷地が四季折々の花で彩られる。例年3月下旬~4月上旬は再生活動を経て新たに植樹もされたさくら山の桜が、4月中は風車前花畑のチューリップやビオラが見ごろに。
・9:00~17:00、月休(祝の場合は翌火休。2023年3月27日~5月7日は無休)。
・☎04-7133-8877
【沼南エリア】水辺の風がもう温かい。野遊びに出かけよう
harumien
古い民家が並ぶ住宅地の奥に……
突如現れるブルーのガレージや、枕木に囲まれた素敵な空間。気さくな柿澤さんが迎えてくれる園芸店で、センスのある園芸小物やアンティーク雑貨、宿根草や枝もの・葉ものなど渋い系の苗が並ぶ。
・4月7日~6月・10~12月の10:00~17:00、月・水休。
・☎090-4963-6824
手賀カフェ
絵本に出てきそうな一軒家カフェ
広がる空と手賀沼の風景にほれこみ、吉田さん夫妻が開業。窓際のカウンターやお庭席で、眺望を堪能したい。10時までは、サラダやトースト、後味すっきりのオリジナルコーヒーなどがセットのモーニング650円がお得。
・8:30~17:00(11~3月は9:00~)、木・金と第2・4・5水と1・8月休。
・☎04-7193-1117
ogawa GRAND lodge FIELD
仕事終わりに森の秘密基地で幕営ロマン
アウトドアブランド「ogawa」の直営キャンプ場で、センターハウスでは同社のほぼ全商品を販売。芝生が気持ちいい区画・フリーサイトに加え、今春には林間デッキサイトもオープン!
「GWごろまでイチゴ狩りも行ってます」と小室さん。デイキャンプ1人1500円~。
・10時IN・18時OUT、無休。
・☎04-7170-4486
薪のPEN
ITから炎の世界へ焚火で楽しくSDGs
代表の園ペータルさんは焚き火を愛する余り、IT業界から薪の専門店へ。伐採後、廃棄される予定だった広葉樹を譲りうけ、薪へと再生。「乾燥が命」と、コンテナ内の自然熱源を使った独自のシステムで、完全乾燥薪を作り上げる。薪約2.5束ぶんで1200円前後。
・10:00~19:00、無休。
・☎070-8555-3177
取材・文=鈴木健太 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2023年4月号より