実はラーメン激戦区という大森駅周辺

JR大森駅から徒歩3分。飲食店の多いエリアにある。
JR大森駅から徒歩3分。飲食店の多いエリアにある。

飲み屋など、小さな飲食店が多いイメージの大森駅周辺。多数のラーメン屋が揃うラーメン激戦区としても有名だ。二郎系、無化調、家系、はたまたミシュラン掲載店までバラエティに富んだラインナップに2022年、新たな店が加わった。それが『中華そば 天辺月(てっぺんのつき)』だ。

カウンター8席と、奥にテーブル席がある。
カウンター8席と、奥にテーブル席がある。

和食の職人たちが作る、こだわりの中華そば

ピカピカの厨房で作業していたのが印象的。
ピカピカの厨房で作業していたのが印象的。

長く和食の料理人をしていた店主の麻生さん。「和食としての中華そばを極めたい」という思いからラーメン専門店の修業を経て、この店を開店するに至った。おもしろいのは麻生さん以外のスタッフも皆、和食出身ということ。同じ分野出身なので、麻生さんとスタッフの意思疎通がしやすいという。では、和食出身の強みはどんなところだろうか。

「出汁のひき方や、盛り付けの美しさとスピードは和食料理人の得意分野だと思います」と麻生さん。看板メニューである中華そばのスープは、鰹をベースとした出汁に、鶏ガラを強火で炊く鶏白湯と、弱火で長時間炊く鶏清湯を合わせた鶏スープ、さらに皮つきチャーシューの煮汁という3つの味を加えた手間のかかったものだ。なかでも出汁に関しては、厳選した鰹節を使うというこだわりがある。素材の持つポテンシャルをいかに引き出すか。なるほど和食出身の腕の見せどころだ。

皮つきのチャーシューは三元豚使用。
皮つきのチャーシューは三元豚使用。

透き通ったスープと独特なトッピング。懐かしくて新しい中華そば

中華そば(並)750円。
中華そば(並)750円。

丁寧にひいた鰹の出汁とまろやかな醤油の風味がふわりと香る。透き通ったスープがとてもきれいだ。トッピングはチャーシュー、ネギ、刻んだカイワレ、ひじき、そしてメンマの代わりにエリンギがのる。見たことのない独特のラインナップだ。

太めのひじきが中太平打ち麺にぴったり。
太めのひじきが中太平打ち麺にぴったり。

淡麗に見えていたスープは、鶏スープの濃厚な旨味と鰹の香りが混じり合い、凝縮された深い旨味がある。洗練された和風の味付けであり、どこか懐かしさも感じる味だ。

このスープのために小麦の配合や太さなどにこだわったという特注の中太平打ち麺は、つるつるシコシコの歯ごたえ。もちろんスープとの相性はばっちりで、スープを吸った麺はもっちり感も味わえる。カイワレのシャキシャキ、ネギのねっとりとした食感がアクセントになり、ひと口ごとに変化があるのもいい。そして、思った以上によかったのがひじきだ。麺ともよく絡み、和の味付けともはまる。

皮目に炙ったときの焼き色が見える。
皮目に炙ったときの焼き色が見える。

皮つきの豚バラ肉を煮込み、皮目を炙ったチャーシューも秀逸。香ばしく、肉の旨味と甘みが口の中でとろけるようだ。食べ進む間に、チャーシューの脂がスープに溶け込み、スープはさらにコクを増していく。

つけ麺850円。こちらもトッピングはエリンギ。
つけ麺850円。こちらもトッピングはエリンギ。

中太平打ち麺で食べるつけ麺もおすすめ。ラーメン同様、鰹出汁と鶏スープを合わせたスープは、このままでも飲めそうなほど塩加減がまろやか。もやし、チャーシュー、ひじきが入る。

割りスープのこの透明感!
割りスープのこの透明感!

割りスープは鰹出汁。試しにこれだけで飲んでみると、ストレートな鰹の豊かな香りが口の中いっぱいに広がった。まさに和の味付けだ。

和の料理人たちが手間を惜しまず作り上げる味にファンも多く、すでに行列必至の人気を得ている。今後がますます楽しみな店だ。

味変にはこんぶ酢、コショウ、ショウガ、ニンニクなど。
味変にはこんぶ酢、コショウ、ショウガ、ニンニクなど。
住所:東京都大田区大森北1-11-5 登丸ビル 1F/営業時間:11:30~15:00、17:00~22:30/定休日:不定/アクセス:JR京浜東北線大森駅から徒歩3分

取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ 画像提供=中華そば 天辺月