海を感じる居酒屋。BGMはサーフミュージック

壁面には応援してくれるアーチストが描いた海辺の風景が描かれている。
壁面には応援してくれるアーチストが描いた海辺の風景が描かれている。

東京芸術劇場の裏手から池袋西口公園に向かう道をグルメ通りと呼ぶ。ベトナム料理、トルコ料理、マレーシア料理、スペイン料理など各国料理の店が立ち並ぶ光景は、「グルメ」の名にふさわしい。

『焼鳥MOZU』もこの一角にある。店はビルの2階。エレベーターを降りるとそこはすでに店内。サーフボートが立てかけられ、ヤシの木も見える。ひと目見ただけで並みの居酒屋ではないことがわかる。BGMはサーフミュージックやレゲエだ。

海辺をイメージしたという店内には、オーナーの地元である三浦海岸の砂をあしらったカウンター席や廃材を利用した手作りのテーブル、体が沈みそうなふかふかのソファー席などがあり、オーナーのこだわりが伝わってくる。居酒屋とか焼き鳥屋というより、ダイニングバーと呼んだほうがピッタリな雰囲気がある。

「開店する前は、エレベーターが奥にあるので入りにくいのではないかと気になったのですが、常連さんの中にはちょっと奥まった感じも隠れ家感があっていいという方も多いんです。私もこのロケーションを気に入っています」とオーナーの俊(とし)さんは話す。

砂や貝殻をディスプレーしたカウンター席。小さいレコード盤はコースター。
砂や貝殻をディスプレーしたカウンター席。小さいレコード盤はコースター。

ユニークなアイデア料理の焼鳥フォンデュ

「よくばりセット」。基本のセットで足りない場合は、フォンデュや串盛、バケットなどが追加ができる。
「よくばりセット」。基本のセットで足りない場合は、フォンデュや串盛、バケットなどが追加ができる。

「この場所で開店するにあたって、どんな料理がいいか考えたんですが、焼き鳥屋で修業したこともあり、老若男女、誰にでも好まれる料理であることから焼き鳥をメインにすることにしました」。

でもここは立大生が行き交う学生街でもある。普通の焼き鳥では面白くないし、若い人にも気に入ってもらえるメニューを、と考えたのが名物メニューになっている焼鳥フォンデュだ。

焼鳥フォンデュは、炭火でじっくりと焼き上げた焼き鳥や野菜を、熱々で濃厚なチーズに絡めて味わうもの。バケット、ベーコン、つくね、もも、ぼんじり、砂肝が付く「焼鳥セット」、バケット、ベーコン、ミニトマト、アスパラ、ピーマン、シイタケが付く「ベジセット」、バケット、ベーコン、ぼんじり、つくね、ミニトマト、アスパラが付く「よくばりセット」の3種類あり、各1650円。

チーズが入った容器は、俊さんの地元である三浦市を応援しようと、俊さんたちが作ったゆるキャラの「プープくん」をモチーフにしたもの。ユニークなキャラクターなので、テーブルに運ばれると歓声が上がる。グループで利用したら盛り上がること間違いない。

数種類のチーズをミックスしたチーズフォンデュは180gも入っているので、たっぷりと絡めて味わいたい。
数種類のチーズをミックスしたチーズフォンデュは180gも入っているので、たっぷりと絡めて味わいたい。

オーソドックスな串盛り? 創作料理? お好みはどっち?

葉っぱの形をしたメニューもこの店の雰囲気に合っている。
葉っぱの形をしたメニューもこの店の雰囲気に合っている。

各テーブルには葉っぱに描かれたメニュー表が置かれている。ここに書かれているのがグランドメニューだ。焼き鳥が看板料理だから皮、砂肝、ねぎま、レバー、ハツ、せせり、ぼんじり、手羽などの焼き鳥メニューがずらりと並ぶ。焼き鳥は1本154円~。串盛り5本715円がお得だ。

「学生のお客様が多いので価格は抑えています。ブランド肉ではありませんが、調理には気を遣って、丁寧に仕上げています」と話す俊さん。

ハチミツとレモンを使ったMOZUサワー、隠し味にハチミツを使ったMOZUボール、かすかに香りとうもろこしの香りがクセになるコーン茶ハイなど、ドリンクメニューも多彩。串盛りとともに味わいたい。
ハチミツとレモンを使ったMOZUサワー、隠し味にハチミツを使ったMOZUボール、かすかに香りとうもろこしの香りがクセになるコーン茶ハイなど、ドリンクメニューも多彩。串盛りとともに味わいたい。

俊さんはアイデアマンでもあり、数々の創作料理を作り出している。その一つが明太子アヒージョ638円。ゴロッとかたまりのまま提供される明太子は食べごたえがあり、バケットにつけて味わえば軽い食事にもなる。粗めにつぶしたポテトのホックリとした食感が楽しいポテトサラダ440円も人気の一品。クラッカーが添えられているので、トッピングして味わうのがおすすめの食べ方だ。

店はテーブル席が中心なのでグループの利用に最適。利用客の7割が女性というのも雰囲気やメニューを見れば納得できる。90種類以上のドリンクが飲み放題となるコースは、フォンデュコース3500円、炭火焼&一品料理コース3000円。女性限定の2.5時間飲み放題付きコース2800円~はスパークリングワインも付くから女子会にはピッタリだ。

ハチミツとレモンを使ったMOZUサワー、隠し味にハチミツを使ったMOZUボール、かすかに香りとうもろこしの香りがクセになるコーン茶ハイ各480円など、ドリンクメニューもオリジナリティがあり、こんなところからも若い客が多いことが想像できる。

一番人気の窓辺の席は、ぜひ早めの予約でゲットしよう。
一番人気の窓辺の席は、ぜひ早めの予約でゲットしよう。

オーナーはミュージシャンと店主の二刀流

「おいしいことはもちろんですが、楽しかったといわれるのが一番うれしい」と話す俊さん。
「おいしいことはもちろんですが、楽しかったといわれるのが一番うれしい」と話す俊さん。

オーナーの俊さんはカルフォルニアに音楽留学した経験をもつ。帰国後はミュージシャンとして活動し、地元の三浦市や横須賀市ではイベントなどで今もライブを披露し、アルバムも3枚出している。

俊さんの曲は、時折、BGMとして流れることもあるらしい。「酔ったときは歌うこともあります」と話すが、過去には店内でライブをした事もあるそう。
今でも歌いますか?  と聞いてみたら、「いや~、今はMOZUではライブはしてません」という返事。でも、聴いてみたいな。

海と焼き鳥、意外な取り合わせだが、ポップなBGMが流れる店内にいると海の家で飲んでいるような気分になり、テンションも上がる。さほど広くない店だが、この密度感も活気を生む要因になっているのだろう。元気なスタッフも感じがよいので、ドリンクのお代わりのスピードも早くなりそうだ。

俊さんのCDは店内でも販売ている。ジャケットの絵は「ブープくん」だ。
俊さんのCDは店内でも販売ている。ジャケットの絵は「ブープくん」だ。
住所:東京都豊島区西池袋3-20-2 フェリース西池袋2F/営業時間:17:00~24:00LO(ドリンクは0:30LO)/定休日:無/アクセス:JR・私鉄・地下鉄池袋駅から徒歩5分

取材・文・撮影=塙 広明 構成=アド・グリーン