長年愛されてきた味。焼き立てで提供したい
小さな間口の引き戸を開けると、いかにも白いご飯に合いそうな焼き魚の芳ばしい香りが漂う。この店は都内でも珍しい西京漬け専門店。小樽の漬け魚工場から取り寄せる絶品の漬け魚を定食やテイクアウトのお弁当として提供している。
実家である都内の人気仕出し弁当店を手伝ってきた店主の森さん。数ある仕出し弁当の中でも西京漬けは人気があり、長年に渡り愛されてきた人気のメニュー。それだけに「もったいない」と感じていることもあった。それは「焼きたても食べてもらいたい」。この気持ちが原動力となり、2018年、実家の仕出し店と同じ工場から仕入れた魚を焼き立てで提供するこの店を立ち上げた。
目利きが選ぶ鮮度抜群の魚。絶妙な塩梅で西京漬けに
森さん自身、仕入先の小樽の工場に修業した経験を持つ。そこで漬け魚職人である師匠との出会いがあり、仕込みや漬け込み、商売の基礎を教えてもらった。しかし魚を見極めることは本当に難しいと痛感。その上で改めて師匠の魚を見る目に惚れ込み、師匠から仕入れた魚をおいしく食べてもらいたいという気持ちが湧き上がったという。
贅沢に3点盛り!人気の定食をいただこう
一番人気は日替わりの3点盛り定食。注文が入ると大型の魚焼きグリルで焼き始める。ほどなく、魚から脂が落ちる音がすると同時に芳ばしい香りが広がった。高温で一気に焼き上げる時間は約10分。魚の状態や脂の多い少ないなどを見極め、焼き時間を調整する。
3種は醤油、生姜味噌、西京味噌と異なる味付けで、バリエーション豊かな味を楽しめる。まずはカレイの西京焼きからいただこう。箸で割るとふわっと湯気が立ち上ると同時に甘さのあるいい香りが立ち込めた。
こんがりと焼かれたカレイの身はふんわり柔らかく、皮はパリパリ。白身魚なので淡白な味かと思うが、西京味噌に漬けられて旨味が凝縮されている。甘しょっぱい味にご飯がすすむ。
次はハラス。先程の上品さとはうって変わってパンチのある味わい。ジュワッと肉汁のように出てくる脂に照り焼きの濃い味付けがぴったりだ。
3点目、サワラの生姜味噌焼きはカレイと似ているように思っていたが身のプリプリ感がまったく違った。弾力のある歯ごたえに、味噌の香ばしさと生姜のさわやかさがバッチリだ。
3種を食べ比べながら、「ご飯は大盛りにしたほうがよかったかもしれない……」と後悔した。お米は粘り気が少なく、あっさりした味わいの新潟産こしいぶきで、魚の味が際立っていた。大盛りにするとてんこ盛りで出されるので、大食漢の方はぜひこちらを。
デリバリー、2号店、オンラインショップ。広がりを見せるおいしさ
焼き魚単品のテイクアウトや弁当のデリバリー、切り身の冷凍真空パックの地方発送。そして2021年6月には新宿近くの小滝橋に2号店もオープンした。一番おいしい「魚の焼き立て」にこだわって、店のステージは着々と広がりを見せている。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ