新宿三丁目のレトロな雑居ビルにある「心と体にやさしさを」をテーマにしたカフェ

レトロな雰囲気が残る雑居ビルの3階で、店主の尾上昌彦さんがひとりで営むこのカフェは2009年にオープン。

地元の福岡でもカフェで働いていたが、「東京でカフェを営業したい」という夢を持って上京。カフェ・レストラン事業を行う企業に就職し、店の立ち上げや営業・運営にも携わってきた。

「経験を積んでいくうちに、自分が行きたくなるリラックスできるカフェを作りたいなと思うようになって。会社を辞めて独立しました」と、尾上さん。新宿は自宅に近く、勝手知ったる場所であったことや、2009年当時は周辺にカフェがなかったので「ここにしよう」と思ったそうだ。

雑居ビルの階段を上がっていく。入り口の階段はうっかり通り過ぎてしまうから、この看板を目印にしよう。
雑居ビルの階段を上がっていく。入り口の階段はうっかり通り過ぎてしまうから、この看板を目印にしよう。

「最初に物件を見た時、スケルトンな物件で何もなかったんですよ。なんか“コンテナみたいだな”と思って、そのまま店名にしました」。

オープン以来これまで培ってきた経験からメニューを構成してきたが、2019年にコロナを機に「心と体のやさしさを」というコンセプトを打ち出しメニューを一新。「ただ、ストイックなヘルシー志向にしちゃうと楽しめなくなっちゃうので、罪悪感なく食べたり飲んだりできるものを提供しています」。

20~30代女性に人気のグルテンフリーのケーキと野菜たっぷりのご飯

開店とともにランチもカフェメニューも注文できる(ランチは平日のみ)。ケーキはすべてグルテンフリーで、ミネラル豊富なきび砂糖を使い、甘さ控えめで特有の風味がいきている。「“体にやさしい”と言いながら、ケーキのポーションは大きめ。でも、女性の方はぺろりと召し上がります(笑)」。

ケーキは定番のクラシックガトーショコラ、バスクチーズケーキ、イタリアンプリンのほか日替わりのスイーツメニューもある。これらはすべて尾上さんが1人で作っている。

取材時にちょうど焼きあがった人気No. 1のバスクチーズケーキ。各ケーキは毎日1台ずつ焼く。
取材時にちょうど焼きあがった人気No. 1のバスクチーズケーキ。各ケーキは毎日1台ずつ焼く。

ドリンクにも健康に配慮されたものを提供する。「オーガニックのコーヒーやティーを使用しています。カフェイン97%カットのカフェインレスコーヒーは、体に気をつけている人にも安心して召し上がっていただけます。また、果汁100%のジュースや有機コーディアルを使ったソーダ類もあります」。

バスクチーズケーキ660円。中はとろ〜りとした舌触り。濃厚なチーズの風味があるが爽やかな酸味があるので後味は軽やかだ。平日14:00〜17:00までは好きなドリンクとセットで200円引き。
バスクチーズケーキ660円。中はとろ〜りとした舌触り。濃厚なチーズの風味があるが爽やかな酸味があるので後味は軽やかだ。平日14:00〜17:00までは好きなドリンクとセットで200円引き。
ハンドドリップで淹れてくれる、カフェイン97%カットのカフェインレスのアイスコーヒー710円。
ハンドドリップで淹れてくれる、カフェイン97%カットのカフェインレスのアイスコーヒー710円。

オープンからのランチ(平日のみ)は、リゾットやクロックムッシュ、サラダなど軽いものだが、夜は高たんぱくで低糖質、栄養バランスなどにこだわった料理で、軽めのデリからがっつり系ご飯まで食べられる。どれも野菜をふんだんに使い、加工肉でなく鶏肉や豚肉を使っていてできるだけ体にやさしく作られている。

12周年を記念したグッズも販売。「何よりみなさんがゆっくりくつろいでくれたらうれしい」

店の窓から外を見ると、普段は気に留めなかったホテルやビルの上階、路地にまで目が届く。ほー、あんな店があるんだとか筆者がブツブツ言っていると、「このあたりはものすごく飲食店があるし、昔ながらの雑多な街でしょう? でも、こんな高層ビルに囲まれた超都会のなかに、レトロな建物やノスタルジックを感じる場所がまだ残っているんですよ」。

「僕はこの街のそういうところが好きです。この店が隠れ家的で、コンパクトだけど窓が大きいところも気に入っています」と、尾上さんに言われて気づいた。ほぼ壁一面が窓なのだ。それでこのなんとも言えない開放感があるのか。

窓が広く、自然光が差し込む明るい店内。ここから違う視点で新宿の街並みを見てみるのも面白い。窓の柵の形がレトロでオシャレ。
窓が広く、自然光が差し込む明るい店内。ここから違う視点で新宿の街並みを見てみるのも面白い。窓の柵の形がレトロでオシャレ。

このエリアはたくさんの飲食店がひしめき、幅広い年齢層の人がやってくるが、こちらのカフェにくるお客さんの8割は20~30代の女性だという。

尾上さんもなるべくインスタに投稿するようにしているが、SNSの効果に驚いている。「いやほんとインスタってすごいですよね。お客様がバースデーケーキの投稿をしたら人気がでちゃって。平日のみ前日までに要予約なのですが、コンスタントに予約が入っています。それにちょっとウチの場所はわかりにくいから、SNSで発信できるのはありがたいです」。

インスタを見た外国人のお客さんがわざわざ海外から来てくれたときは「驚きました!」と微笑む。

店主の尾上昌彦さんがハンドドリップで淹れてくれるコーヒー。店内がコーヒーのいい香りに包まれる。
店主の尾上昌彦さんがハンドドリップで淹れてくれるコーヒー。店内がコーヒーのいい香りに包まれる。

このカフェは10余年、新宿三丁目の隠れ家カフェとしてたくさんの人に癒やしを与えてきた。2021年には、オープン12周年のタイミングでオリジナルグッズも作った。

「最初に友人のデザイナーがコースターを作ってくれて、そのイラストやデザインが可愛かったのでグラスやマスク、コースターも商品化しました」と、販売中のアイテムを見せてくれた。

ネオングラス1個1690円、2個2970円、珪藻土コースター1個1690円、2個2970円、イラスト入りオリジナルマスク770円。
ネオングラス1個1690円、2個2970円、珪藻土コースター1個1690円、2個2970円、イラスト入りオリジナルマスク770円。

筆者が新宿でカフェに入るとたいがいチェーン系やにぎやかな喫茶店ばかり。こんなにリラックスできるカフェを知らなかった。1人でふらりと入っておいしいケーキを少しずつ食べながら、ときおりコーヒーをすすり、ぼーっと窓の外を眺めながらパワーを“充電”したい。できれば誰にも教えたくないんだけどなあ。

住所:東京都新宿区新宿3-8-5 中川ビル3F/営業時間:13:00~16:30LO ※ランチ(平日のみ)は14:30LO・18:00~21:30LO(日は13:00~17:30LO)/定休日:月/アクセス:地下鉄新宿三丁目駅から徒歩1分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢