安政遠足(とおあし)侍マラソン大会
走りもコスプレも本気度マックス
仮装で走る人の多いユニークな大会で、2コース計1800名が参加する。「関所・坂本宿コース」は20.15㎞。ギャラリーの声援を受けて町なかの旧中山道を坂本宿まで走る。峠コースはそれに加え坂本宿から登山道に入り熊野神社がゴールで標高差1050m、28.97㎞とハード。通過地点の碓氷関所では郷土芸能が披露される祭りも開かれる。申込受付は毎年2月上旬。来年こそ!
●見学自由。例年5月中旬開催。☎︎027-382-2500(群馬県安中市教育委員会体育課)
安政遠足
日本におけるマラソンの発祥といわれる
安政2年(1855)5月19日から6月29日にかけて行われた安政遠足。安中藩主板倉勝明が、藩士の心身を鍛えるために発案したもので、安中城門から碓氷峠の熊野権現まで中山道を走らせ記録を競わせた。藩主自ら碓氷峠まで下見に行くなど熱心だったようだ。50歳以下の家臣が明け六つ(朝5 〜6時頃)の太鼓を合図に出発、7里あまり(約29㎞)を3〜4時間かけて走ったという。1日に数名ずつ走り、96名が完走した。
旧安中藩武家長屋
マラソン大会のスタート地点はこちら
300名ほどの藩士のうち安中在住だった約200名は長屋住まいだった。これは中級武士の住まいだったという長屋。三軒長屋として残っていた建物を新築当初の四軒長屋として復元し1992年から公開している。遠足を前に武者震いする情景が目に浮かぶようだ。
有田屋
天然醸造にこだわり「本物」を追求する醤油蔵
天保3年(1832)創業の老舗蔵。天然醸造のもろみを2年間じっくり寝かせた最高級醤油「丸大豆仕込み天然醸造」、それに麹を加え1年以上発酵熟成させた「さいしこみ」は自慢の逸品。また有田屋の湯浅一族は、日本の教育や文化、社会に貢献した人物を多数輩出していることでも知られる。とくに3代目当主の治郎は、新島襄に師事し同志社英学校の運営に尽力、日本初といわれる私設図書館も開設した。併設のギャラリー(無料)では新島襄・八重夫妻の史料などを展示している。
玉屋ドライブイン
250年以上の歴史がある老舗の名物スイーツ
玉屋は碓氷峠の四軒茶屋の一つ。横川・軽井沢間の鉄道開通を機に熊ノ平駅で駅売りし、1963年から現在地で営業。名物の力餅は、江戸時代に峠越えの旅人に出したのが始まり。和宮一行や、安政遠足の武士たちにも振る舞われ労をねぎらった。店内にはアプト式鉄道の資料を多数展示する。
皇女和宮資料館
中山道といえば和宮、安中では板鼻宿に宿泊
群馬県内にあった中山道の宿駅7つのうち4つが安中市内。文久元年(1861)、板鼻宿本陣の書院に孝明天皇の皇妹和宮親子内親王が仮の宿として宿泊された。その書院が移築保存され資料館として公開されている。和宮に用意した2足の草履や山岡鉄舟の書に目を奪われた。
崇台山(そうだいさん)
掃き掃除のおばさんも 卒寿の爺様も毎日登山
標高299mと群馬県で5番目に低い山ながら、展望が素晴らしく「ぐんま百名山」の一つに数えられている。山頂からは浅間、妙義、榛名、赤城など周囲の名山が一望のもと。「崇台山に毎日登る会」により登山道はよく手入れされている。「ふるさと学習館」からの周回コースがオススメ。
●所要約1時間。群馬県安中市上間仁田、群馬県富岡市下高尾
レストランニューアルプス
今こそ訪ねたい、ドラマ『64』のロケ地
カマボコ形のオレンジの庇(ひさし)が目印。1989年の事件がテーマのテレビドラマ『64』で、身代金受渡場所「純喫茶チェリー」として登場しただけに昭和感たっぷり。タマネギ、ピーマン、ニンジンが卵でとじられ、ジューシーな肉にニンニク醤油のタレをかけるポークソテーが自慢。
交通安全大観音
自動車に乗って 交通安全を祈る
蓮華座に自動車を組み込んだ、クルマ社会の群馬ならではの観音様。新島襄が帰国後最初の講演をした寺だがこちらの方が有名。さまざまなミニカーを観音像とともに並べた「世界乗り物館」や、参道の左右に並ぶ108口の梵鐘「和合の鐘」もユニーク。これらはすべて先代住職が建立したもの。
チャンコロリン石
『まんが日本昔ばなし』にも登場した不思議な石
昔、夜になると中山道をチャンコロリン、チャンコロリンと不思議な音が鳴り響いた。役人が調べると車輪のような石が転がる音と判明。刀や槍、鉄砲で撃っても退治できず、住職が境内に封じ込めたという。墓地には安中藩初代藩主井伊直勝の妻と母(直政の正室)の墓碑もある。
●見学自由。群馬県安中市安中3-21-44 ☎︎027-381-0175(大泉寺)
板鼻館
安中名物グルメのタルタルカツ丼
タルタルカツ丼が看板メニュー。先に運ばれてくるのは小さなすり鉢。6枚にスライスされたゆで卵とマヨネーズ、好みでカラシを混ぜてタルタルソースを作りカツ丼を待つ。ソースあっさりめのカツ煮は、タルタルソースでぐんと濃厚になる。エビやホタテなどのトッピングも可。
山吹の郷&群馬県野鳥の森 小根山森林公園
花盛りのヤマブキと野鳥がさえずる森
4月下旬〜5月上旬に5000本のヤマブキが見ごろになる「山吹の郷」は終日開放。開花中は山吹まつりを開催。「山吹の郷」から遊歩道でも行ける小根山(おねやま)は見本林だった91haの国有林。所要30分〜1時間の散策コースが3つあり、探鳥がてら森林浴ウォーキングが楽しめる。
●ともに無料。小根山は9:00〜16:30、木休。群馬県安中市松井田町横川地内 ☎︎027-395-3026
アイリスの丘
ジャーマンアイリスの咲く楽園
紫、ピンク、黄など色とりどりの付けるため「虹の花」とも呼ばれるジャーマンアイリス。丘陵に広がる3haの園内では5月から1000種10万株が見ごろ。最新の種をアメリカより輸入、オリジナル種の開発も行う。また、6月下旬にはヘメロカリス1500種20万株が楽しめる。
栄泉堂
サクッとした歯ごたえと 口のなかでとろける食感
磯部温泉の名物は明治時代に考案された磯部煎餅。栄泉堂は東京の「岡埜栄泉」で修業し明治中頃創業した老舗で、先代までは和菓子も作っていた。そのため一枚一枚丁寧に手焼きするこだわりをみせる。レトロなロゴ入りの煎餅は、鉱泉水を使うためサクサクしており、香ばしくほんのりとした甘さが口の中に広がる。
松岸寺
磯部温泉の観光名所だった意外な忠臣蔵スポットその①
赤穂藩国家老だった大野九郎兵衛が眠る。仇討ちに参加しなかった不忠臣の悪役だが財政運営に優れた常識人ともいわれ真偽は不明。源頼朝の重臣で磯部に隠居した佐々木盛綱夫妻の供養塔と伝わる五輪塔は正応6年(1293)の建立。ほぼ完全な姿の1基は群馬県指定の県重要文化財。
松井田の名建築
「畑の中のパルテノン」と「宿場町の九段会館」
1956年に竣工した「旧松井田町役場」は、建築家・白井晟一(1905 〜1983)の設計。1961年に氏が受賞した高村光太郎賞の対象作品で代表作の一つ。横に延びるバルコニーの手すりや太い柱が並ぶ斬新なデザインが魅力的。耐震強度不足のため内部見学不可なのは残念だ。「旧松井田警察署」(現商工会館)は戦前流行った帝冠様式が終焉を迎える直前、昭和14年(1939)の建築。
赤穂四十七義士石像&石尊山
ぐんま百名山とあわせて巡る 意外な忠臣蔵スポットその②
義士の一人片岡源五右衛門の下僕だった向西坊元助(こうさいぼうもとすけ)が、討ち入り後浅野内匠頭長矩(ながのり)夫妻と四十七義士の供養のため故郷に石像を建てた。長矩夫妻の2体が高さ約1m、それ以外は50 〜70㎝ほど。大正時代に植え始まった秋間(あきま)梅林とともに、昭和時代は磯部温泉に来た客のよい観光名所になっていたようだ。
松井田城跡
戦国武将に思いをはせて のどかに巡る里山ハイク
北条氏の有力家臣だった大道寺政繁が大改修した遺構が残る。天正18年(1590)豊臣方の前田利家、上杉景勝、真田昌幸ら北国勢の大軍に対し1カ月籠城した後に降伏。政繁は豊臣方に従い忍城、鉢形城、八王子城の攻略で功があったが戦が終わると切腹させられた。麓の補陀寺に政繁の墓がある。見どころは連続竪堀。
●見学自由。群馬県安中市松井田町高梨子1192-5
取材・文・撮影=飯田則夫
『散歩の達人』2019年5月号より