3エリアに渡り開発真っ盛りの“下北線路街”

シモキタは今、変革の時だ。小田急線の地下化に伴う開発が進み、新しいスポットが続々と誕生中だ。最終的には、東端の東北沢から西端の世田谷代田まで約1.7㎞の線路跡が1本の遊歩道でつながるという。

東北沢駅から遊歩道を進むと、2021年9月16日に開業した「MUSTARD HOTEL SHIMOKITAZAWA」や、地元の名店『しもきた茶苑大山』の移転(10月8日オープン予定)も決定している『reload』が現れる。「下北線路街はにぎわいの下北沢を中心に、感度の高い東北沢、暮らしに根ざした世田谷代田と3エリアに分けています。」と、小田急電鉄エリア事業創造部の小花璃美さん。
いわゆる箱型開発にならなかったのは、シモキタという街の特色を生かし、コミュニティを活性化するため。計画が難航した時期もあったが、ここ4年で一気に下北線路街が形づくられた。

『reload』。テラスでつながる2階建ての個店街だ。

その象徴的に見えるのが『下北線路街 空き地』だ。日々イベントが催され、土管広場では子供たちが走り回る。「以前、下北沢には子供の遊び場が少なかったんです。その意味では、実は新しいスポットともいえます」。
下北線路街では鉄道遺産をあまり見かけないが、世田谷代田方面へと向かえば、新しい商店街『BONUS TRACK』が顔を出す。「意味は『ボーナス的に誕生した線路跡(トラック)』。名称に鉄道の記憶を盛り込みました」。

『BONUS TRACK』。14軒が連なり、商店に囲まれた中庭広場が。

また、地元民や施設同士の交流も始まっている。日帰り利用もできる『由縁(ゆえん)別邸 代田』の茶寮の店長は、農大ショップの『「農」の蔵』に日本ワインや地酒の調達に通っている様子。その先の『世田谷代田キャンパス』の朝市には毎回多くの地元民が集い、西端の公園では線路と富士山が織り成す景色に皆が見とれていく。下北線路街は、ゆるやかに人々が混じり合い、新たな魅力を放つ場となっていた。

線路上に富士が現れる「代田富士356(みごろ)広場」にはレール風の歩道が。

生まれ変わった3エリアと、散歩中に立ち寄りたい下北線路街スポット

東北沢エリア

新たにバスロータリーを設けた駅周辺は閑静な住宅地で、ハイセンスなエリア。新宿や渋谷にも近いという立地を意識し、他のエリアから訪れた人が立ち寄りたくなるような感度の高い店を集める。

地下から地上へ駆け上がる様子が見られる電車ビュースポット。
ベンチの脚と肘掛けにレールを活用。さりげなく鉄道オマージュ。

reload

テラスでつながる瀟酒(しょうしゃ)な個店街

2階建て個店街に集結するのは、セレクトショップ、カフェなど、店主の顔が見える個性派揃い。白壁がまぶしい24区画はテラスで連結されて回遊しやすく、空を見上げながら木製のテーブル&ベンチで憩える。

DESK LABO [reload内]

200種以上詰まったセレクト文具雑貨店

松陰神社、三軒茶屋を経て移転。「以前からシモキタに店を構えたくて」と、金井拓二さん・彩子さん夫妻。マーブル色鉛筆2970円や、リサイクルペーパーのざらつきが書いた時に味わいを生むZAPBOOK 605円、かわいくないリアル感に心躍るドイツ製首ふり人形770円など、デスク周りに置きたくなる文具雑貨がぎっしり詰まっている。

●12:00~20:00、月休(不定休あり)。☎03-6804-9270 https://www.desklabo.net

SANZOU TOKYO(サンゾウ トーキョー) [reload内]

柏『ボンベイ』の流れをくむ新基軸

ソリッドな空間にギャラリーとカレースタンドが同居。店長推奨の山形県産の水とはえぬき米で硬めに炊くライスと、本店と異なるシンプルカレーが信条だ。ペトラカレー1300円(ほうじ茶のチャイ付き)は国産牛の旨味が深く、変更可の辛味とスパイスが魅惑的。舌に味の記憶が刻まれる。

●11:30~20:00、無休。☎03-5738-7744 https://sanzoutokyo.com

下北沢エリア

シモキタエリアの中心。駅に『シモキタエキウエ』を併設し、正面に駅前広場(工事中)や『下北線路街 空き地』を、世田谷代田側にミニシアター(2022年1月開業予定)や、広場&施設(建設中)を備え、にぎわいの拠点を目指す。

下北線路街 空き地

オープンエアなマーケットが続行中

土管が置かれた広場に、アウトドアチェアが並ぶカフェスペースを用意。毎日キッチンカーや古着&雑貨などのマーケットが立つ「体験できる場」だ。この場所は2021年3月までの暫定利用の予定だったが、存続希望の声が多かったため、期限を延長して運営中。

BONUS TRACK

中庭広場が心地いい商店街

昨年開業した商店街には、シェアオフィス&キッチンや書店、ショップなど14軒が連なる。商店に囲まれた中庭広場があり、テントシートの下、テーブルと椅子が並んでフードコートのような気軽さ。遊び心満載のアートイベントも不定期で開催している。

世田谷代田エリア

駅前広場を備えた西口と、雑木林のある東口で風情を変えた暮らしのエリア。地域住民が利用しやすい場にと、割烹・茶寮を備えた温泉旅館や、オープンテラスを設けた商店街が建ち、イベントや朝市も催されている。

由縁別邸 代田

温泉+茶寮のプチ湯治が贅沢

露天風呂に満ちるのは箱根『山のホテル』から運ぶ単純泉。日帰り湯は茶寮や割烹とのセットプランで利用可能。夏季限定のかき氷プラン4050円(入湯税込み)は、ショコラティエ+和食料理人+茶師の技を集結。芳醇かつなめらかな口どけが湯上がりにうってつけだ。

●客室なしの日帰りプランは9:00~12:30入場(土・日・祝は~ 13:30)または16:00~21:30入場(要予約)。☎03-5431-3101 https://www.uds-hotels.com/yuenbettei/daita/

世田谷代田キャンパス

農大キャンパスのうれしい取り組み

一般向けの講座などを行うオープンカレッジ。1階には『農大アンテナショップ「農」の蔵』が入り、農大開発のバラ酵母を用いた酒や卒業生が手がけた商品が目白押し。
また、隣のカフェ、青森農家直送の農産物店と共同で、第2・4土の7:00~11:00に朝市を開催。日本酒の試飲のほか、ワンコイン朝ごはん、八ケ岳野菜、花酵母のパンを目指して集まる地元客でにぎわう。

●10:00~18:00、水・祝休。☎03-6450-9156

取材・文=佐藤さゆり(teamまめ) 撮影=逢坂 聡
『散歩の達人』2021年9月号より