窓や扉など「境界」を示すモティーフを通してその魅力に迫る
アメリカ美術の中でも位置づけるのが難しい、独自の絵画世界を作りあげてきた画家アンドリュー・ワイエス。同時代の前衛的な芸術動向から距離を置き、生まれ故郷のペンシルヴェニア州と夏の家のあるメイン州という、2つの地域の身近な人々と風景を描き続けた。その作品には、窓やドアなど、ある種の境界を示すモティーフが数多く描かれている。西洋絵画史のなかで古くから取り上げられてきた「境界」というテーマは、ワイエスにとってより私的な世界とのつながり、あるいは境目として機能しているという。本展は、その境界の表現に着目し、ワイエスが描いた世界を見ていこうというもの。
普遍的なものを感じさせるひとつひとつの作品が、観る者に自分と向き合うきっかけを与えてくれそうだ。
日本初公開となる作品も多数展示
「境界」というモティーフには自身の死生観も表れていると言われるワイエスの作品。そんな彼が生と死を強く意識したきっかけは、1945年に踏切事故で父と幼い甥のふたりを亡くしたことだった。その5年後には、肺疾患の手術中に一時的に心臓が止まるという経験をし、死をより身近なものとして意識するようになったという。しかし、ワイエスは生と死を対立したものではなく、つながっているものと捉え、その根底には、「世の無常」という日本人にはなじみのある哲学が流れている。日本でも多くの人の心を捉える理由が、改めて見えてきそうだ。
さらに、本展では『ホイットニー美術館』所蔵の《冬の野》(1942年)、『フィラデルフィア美術館』の《冷却小屋》(1953年)、『フィルブルック美術館』の《乗船の一行》(1984年)など、10点以上の作品が日本初公開となるのも注目だ。
開催概要
「東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展」
開催期間:2026年4月28日(火)~7月5日(日)
開室時間:9:30~17:30(金は~20:00。入室は閉室30分前まで)
休室日:月(ただし6月29日は開室)
会場:東京都美術館(東京都台東区上野公園8-36)
アクセス:JR上野駅から徒歩7分、地下鉄銀座線・日比谷線上野駅から徒歩10分、京成電鉄本線京成上野駅から徒歩10分
入場料:一般2300円、65歳以上1600円、学生1300円、18歳以下・高校生以下無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料。
※学生、65歳以上、各種手帳をお持ちの人は、証明できるものを提示。
【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://wyeth2026.jp/
取材・文=前田真紀 画像提供=東京都美術館






