「那須八湯」とは?
「那須八湯」は茶臼岳の南麓に点在する温泉地の総称だ。
どこを八湯に含めるかは時代で変遷するが、温泉郷最古の共同浴場『鹿の湯』がある那須湯本に始まり、板室、三斗小屋(さんどごや)、大丸(おおまる)、北、弁天、高雄、八幡(やはた)の、明治時代までに発見された温泉をまとめて「那須八湯」と呼ぶようになった。
廃業し入れなくなった源泉もあるが、歴史が続く老舗宿も多い。また、高雄温泉のように令和に復活して入れるようになった源泉もある。
『風、薫る』の主人公のモチーフの一人になった大関和は、明治40年(1907)、那須湯本温泉にリウマチの療養で訪れている。おそらく『鹿の湯』に浸かったのだろう。明治から使う木造りの浴室が鄙びた風情を漂わせる。湯を約200回頭にかぶる「かぶり湯」や、高温の湯船に短時間浸かる短熱浴が受け継がれている。
地理的に離れるため、いまは「那須八湯」からはずれている板室温泉。ここにも「綱の湯」という珍しい入浴法が残る。
「綱につかまって立ったまま深い湯船に入ることで、体にほどよく水圧がかかり、末端の毛細血管まで血流がよくなるんです」と『幸乃湯(さちのゆ)温泉』の主人・萩原正寿さんが教えてくれた。泉質が少しずつ異なる源泉と受け継がれる入浴法を体験し、心身をリフレッシュさせよう。
綱のある深い立ち湯とトロトロの美肌温泉『奥那須・大正村 幸乃湯(さちのゆ)温泉』【板室温泉】
自家源泉の湯量がとにかく豊富で、泉質はph9.1の高アルカリ泉。伝統の入浴法を復興した「綱の湯」、高さ4mからドバドバと打たせ湯が注ぐ「大滝の湯」など、湯船の種類が異なる2つの大浴場が男女日替わりで楽しめる。
『奥那須・大正村 幸乃湯温泉』詳細
温泉ファンに人気の高い歴史ある秘湯が復活! 『ほったらかしの宿 ゆうふり那須高雄温泉ロッジ』【高雄温泉】
高雄温泉は江戸時代末期に発見された歴史ある白濁の硫黄泉。しばらく幻となっていたが、2025年10月に宿がオープンし、再び入れるようになった。湯浴み着や水着を着て混浴で入る天空露天プールは標高1000mからの見晴らしが最高で、源泉かけ流しのぬる湯にゆったり浸かれる。
『ほったらかしの宿 ゆうふり那須高雄温泉ロッジ』詳細
登山の疲れが吹き飛ぶ 雲上の野天風呂『煙草屋(たばこや)旅館』【三斗小屋温泉】
徒歩でしか辿り着けない温泉。名物の野天風呂のほか、男女入れ替え制の共同浴場と岩風呂の「あかゆ」があり、それぞれ源泉が異なる。野天風呂は夕焼けや星空を見ながらの入浴が格別だ。宿の営業は4月下旬~11月下旬。
『煙草屋旅館』詳細
天狗が見守る、時が止まった秘湯『北温泉旅館』【北温泉】
駐車場から山道を5分ほど歩いた、谷あい深くに立つ一軒宿。江戸、明治、昭和と増築された古い木造3階建ての建物が情緒たっぷり。湯量豊富でプールのような「泳ぎ湯」、ドバドバと滝のように湯があふれる「天狗の湯」などがある。
『北温泉旅館』詳細
自然と一体化する川の湯の醍醐味『大丸温泉旅館』【大丸温泉】
車で行ける那須温泉郷のなかでは最高所。山のあちこちから自噴する源泉の湯量が豊富で、一部は那須御用邸にも引かれている。敷地内を流れる白戸川に自噴の湯が流れ込んだ名物「川の湯」は、いつまでも入っていられる心地よさ。
『大丸温泉旅館』詳細
最高温度48 度! 短熱浴で気分もすっきり『鹿の湯』【那須湯本温泉】
開湯1300年の歴史をもつ共同浴場。目の前の湯川で湧く白濁の硫黄泉がかけ流しにされていて、男湯は41~48度、女湯は41~46度の温度別に湯船が分かれている。濃厚ながら肌を包むようなやさしさがあり、連日多くの客でにぎわう。
『鹿の湯』詳細
取材(板室温泉)・文=野水綾乃 撮影(板室温泉)=平石順一
『旅の手帖』2026年5月号より






