日常を変え、世界を変えた創造行為に迫る

フランシス・ピカビア 《黄あげは》1926年 『大阪中之島美術館』蔵。
フランシス・ピカビア 《黄あげは》1926年 『大阪中之島美術館』蔵。

1924年に詩人のアンドレ・ブルトンによって定義づけられ、無意識や夢に着目したフロイトの精神分析学に影響を受けた文学運動として発生したシュルレアリスム(超現実主義)。

どこか違和感がある風景や夢の中のような幻想的な雰囲気など、表現に一定の傾向を見出すこともできるが、シュルレアリスムとは表現の様式を指すものではなく、世界の変革をめざすことを共通の精神としたあらゆる創造行為のことを指す。

そして、「日常を変える」ことと「世界を変える」ことをひと続きに捉えていたシュルレアリスムは、芸術の内部にとどまることなく、雑誌や広告、ファッション、室内デザインといった日常に密接した場面にも広がり、やがて社会全体に影響をもたらした。

国内に所蔵されている収蔵品のみで構成されているとは思えないほど、多様なジャンルの優品が一堂に集められる本展。改めて提示される新しいシュルレアリスム像と出合えるはずだ。

ヴォルス 《美しい肉片》 1939年 個人蔵。
ヴォルス 《美しい肉片》 1939年 個人蔵。

芸術に留まらない幅広いジャンルへの影響をたどる

中でも注目は、サルバドール・ダリ、マックス・エルンスト、ルネ・マグリットをはじめとするシュルレアリスムを代表する作家たちの名品。特に、ルネ・マグリットの代表的なモチーフである山高帽の男が描かれた《王様の美術館》(『横浜美術館』所蔵)と《レディ・メイドの花束》(『大阪中之島美術館』所蔵)。ふたりの山高帽の男が展示会場で放つ存在感は大きな見どころだ。

ルネ・マグリット《王様の美術館》 1966年 『横浜美術館』蔵。
ルネ・マグリット《王様の美術館》 1966年 『横浜美術館』蔵。
ルネ・マグリット 《レディ・メイドの花束》 1957年 『大阪中之島美術館』蔵。
ルネ・マグリット 《レディ・メイドの花束》 1957年 『大阪中之島美術館』蔵。

また、シュルレアリストたちと交流が深かったデザイナー、エルザ・スキャパレッリ作品も数多く展示。ショッキング・ピンクのドレス(イヴニング・ドレス「サーカス・コレクション」、『島根県立石見美術館』所蔵)をはじめ、独自のデザインが施された香水瓶やジュエリーなど、多岐にわたるスキャパレッリ作品が並ぶ。また、ダリが手掛けたポスターや雑誌広告、映画監督ルイス・ブニュエルとタッグを組んだ映像作品『アンダルシアの犬』が上映されるのも見逃せない。

現代にまで続くシュルレアリスムの絶大なる影響を、肌身で感じられる構成になっている。

エルザ・スキャパレッリ、ルシアン・ヌケルマン(制作)クリップ “サーカスの馬” モチーフc.1938年 個人蔵。
エルザ・スキャパレッリ、ルシアン・ヌケルマン(制作)クリップ “サーカスの馬” モチーフc.1938年 個人蔵。

開催概要

「拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」

開催期間:2026年4月16日(木)~6月24日(水)
開催時間:11:00~19:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし5月4日は開館)・5月7日(木)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(ギャラリー1・2)(東京都新宿区西新宿3-20-2)
アクセス:京王電鉄京王新線初台駅から徒歩5分
入場料:一般1800円、大学・高校生1100円、中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの人と、その介護者1名は無料。

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://www.operacity.jp/ag/exh297/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=東京オペラシティ アートギャラリー