ビゴーが遊んだ海、一村が歩いた野をたどる

遠藤健郎《夕日》昭和20~25年(1945~50)頃 『千葉市美術館』蔵。
遠藤健郎《夕日》昭和20~25年(1945~50)頃 『千葉市美術館』蔵。

1995年11月3日に開館した『千葉市美術館』の1万点を超えるコレクションの中で、「千葉市を中心とした房総ゆかりの作家」に着目。

ジョルジュ・ビゴーの滞在や『海気館』で知られる稲毛、黎明期の洋画家・堀江正章が指導を行った旧制千葉中学校、また画家・無縁寺心澄が描いた千葉市内各地、田中一村が四季折々を見つめた千葉寺町の周辺。そして昭和2年(1927)に川崎銀行千葉支店が建設され、建築家・大谷幸夫によりそれを包み込む形で設計された『千葉市美術館』などを「場」としてとらえる本展。

これらの「場」を各章に設定し、所蔵品を中心に関連する作家である柳敬助や石井林響(りんきょう)、板倉鼎(かなえ)、濱田清治、遠藤健郎、椿貞雄、田岡春径(しゅんけい)、深沢幸雄らとその絵画作品を取り上げ、明治期から現代に至るまでの千葉の美術地図の作成を試みる。

描かれた地図をもとに、現地を訪れたくなる構成になっている。

田中一村《仁戸名蒼天》昭和36年(1960)頃か 個人蔵(千葉市美術館寄託)(C)2025 Hiroshi Niiyama。
田中一村《仁戸名蒼天》昭和36年(1960)頃か 個人蔵(千葉市美術館寄託)(C)2025 Hiroshi Niiyama。

千葉ゆかりの作家とその絵画作品で美術地図を描き出す

堀江正章《室内草花図》明治45年(1912) 東京藝術大学蔵。
堀江正章《室内草花図》明治45年(1912) 東京藝術大学蔵。

本展では、千葉寺町で地域の支援者と交流しながら画風を模索した田中一村(1908-77)や、千葉市内の風景を多く水彩画に残した無縁寺心澄(1905-45)などの作品・資料約300点を通して、千葉市域のあゆみと展示を織り交ぜる。

また『千葉市美術館』の建築を設計した大谷幸夫(1924-2013)にも注目。日本のモダニズム建築を代表する建築家である大谷は、かつて川崎銀行千葉支店として使われていた建物を新しい建築で包み込むように保存する方法を提案し、現在美術館の1階にある『さや堂ホール』が誕生した。大谷の仕事や美術館建設当時の資料も併せて紹介し、土地と『千葉市美術館』についても改めて考える。

柳敬介《堀江正章像》大正5年(1916)頃 『千葉県立千葉高等学校美術館』蔵。
柳敬介《堀江正章像》大正5年(1916)頃 『千葉県立千葉高等学校美術館』蔵。

関連イベントも開催

記念講演会「大谷幸夫という建築家」

11月8日(土)14時~、建築史家で建築家の藤森照信氏を講師に招き、講演会が『千葉市美術館』11階講堂にて開催される。定員は先着80名(当日12時より1階多目的室にて整理券配布)、聴講無料(要チケット半券または招待券)。

てくてく千葉美術散歩

各回定員15名。申し込みは公式HPのフォームより。

ご近所編:11月22日(土)13時30分~15時30分
千葉県庁、『千葉県立図書館』、千葉県立千葉中学・高等学校、亥鼻公園などを巡る。申し込み締め切り11月12日(水)。

郊外編:11月30日(土)13時30分~15時30分
千葉大学医学部、千葉寺、『青葉の森』(旧畜産試験場)などを巡る。申し込み締め切り11月19日(水)。

稲毛編:12月7日(日)13時30分~15時30分
『千葉市民ギャラリー・いなげ』(旧神谷傳兵衛稲毛別荘)、浅間神社、松林、千葉市ゆかりの家・いなげなどを巡る。申し込み締め切り11月27日(木)。

須田悦弘 公開制作

12月14日(日)10~17時、現代美術家・須田悦弘氏が丸1日かけて《雑草》を『千葉美術館』5階ワークショップルームにて公開制作する。作家の精密な木彫り技術を間近で見ることができる貴重な機会だ。観覧無料。

開催概要

開館30周年・千葉開府900年記念「千葉美術散歩」

開催期間:2025年11月1日(土)~2026年1月8日(木)
開催時間:10:00~18:00(金・土は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(祝の場合は開館、翌平日休)・12月28日(日)~2026年1月3日(土)
会場:千葉市美術館(千葉県千葉市中央区中央3-10-8)
アクセス:JR千葉駅から徒歩15分、千葉都市モノレール葭川公園駅から徒歩5分
入場料:一般1200円、大学生700円、高校生・中学生・小学生無料
※市内在住65歳以上960円。
※身体障害者手帳などの手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)無料。

【問い合わせ先】
千葉市美術館☏043-221-2311
公式HP  https://www.ccma-net.jp/exhibitions/special/25-11-1-26-1-8/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=千葉市美術館