建築家たちが目指した機能的な住宅が今に残したものとは

藤井厚二 聴竹居 1928年 撮影=古川泰造。
藤井厚二 聴竹居 1928年 撮影=古川泰造。

1920年代以降、その時代に誕生した新たな技術を用いて、機能的で快適な住まいを探求したル・コルビュジエ(1887–1965年)やルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(1886–1969年)といった多くの建築家たち。その実験的なビジョンと革新的なアイデアは、やがて日常へと波及し、人々の暮らしを大きく変えていくこととなる。

本展では、当代の暮らしを根本から問い直し、快適性や機能性、さらに芸術性の向上を目指した建築家たちが設計した戸建ての住宅が紹介される。

衛生、素材、窓、キッチン、調度、メディア、ランドスケープといったモダン・ハウスを特徴づける7つの観点に着目し、今から100年ほど前に実験的な試みとして始まった住まいのモダニティは、人々の日常へと浸透し、今もかたちを変えて息づいていることが提示される。

今日の暮らしを見つめ直す、絶好の機会となりそうだ。

リナ・ボ・バルディ ガラスの家 1951年。
リナ・ボ・バルディ ガラスの家 1951年。

100年前のモダン・ハウスから今も愛される名作が登場

マルセル・ブロイヤー 《サイドチェア B32》 1928年 ミサワホーム株式会社 撮影=立木圭之介。
マルセル・ブロイヤー 《サイドチェア B32》 1928年 ミサワホーム株式会社 撮影=立木圭之介。

取り上げられている住宅のデザインや、また多くの建築家が住まいにあわせて手がけた椅子や机、照明器具には、今見ても「モダン」なものが少なくない。本展では家具や器具の多くは、今なお生産され、使い続けられている名作が展示されているコーナーも登場する。日ごろ何気なく目にしている名作のルーツには、建築家やデザイナーたちの機能と造形に対する時代を越えた普遍的な問いがあったことに気づかされる。

 

無料エリアに建築家ミースの未完プロジェクト「ロー・ハウス」の世界初原寸大展示が登場

「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」『国立新美術館』2025年 展示風景 撮影=福永一夫。
「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」『国立新美術館』2025年 展示風景 撮影=福永一夫。

2階の天井高8mの会場には、近代建築の巨匠ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(1886-1969年)の未完のプロジェクト「ロー・ハウス」の原寸大の展示が出現。幅16.4m×奥行16.4mに及ぶスケール感で、原寸大としては世界初の挑戦となる。参考となる写真や映像のない中で、残された図面や資料をもとに模型を作り、原寸大で実現したという本展示。「ロー・ハウス」に関する多くの計画案を残しているローエ氏の建物として、貴重な“実在する”ものとなる。

また、この展示のための資金は『国立新美術館』で初となるクラウドファンディングで募った資金が充てられており、誰でも無料で観覧できるのもうれしい。

「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」『国立新美術館』 2025年 展示風景 撮影=福永一夫。
「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」『国立新美術館』 2025年 展示風景 撮影=福永一夫。

開催概要

「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」

開催期間:2025年3月19日(水)~6月30日(月)
開催時間:10:00~18:00(金・土は~20:00。入場は閉館30分前まで)
休館日:火(ただし4月29日・5月6日は開館)、5月7日(水)
会場:国立新美術館 企画展示室1E/2E(東京都港区六本木7-22-2)
アクセス: 地下鉄千代田線乃木坂駅直結、地下鉄日比谷線・大江戸線六本木駅から徒歩5分
入場料:一般1800円、大学生1000円、高校生500円、中学生以下無料
※障がい者手帳をお持ちの方と付添の方1名は無料

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP  https://living-modernity.jp/

 

取材・文=前田真紀 ※画像は主催者提供